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− たびだち −
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プロローグ

争いごとを嫌い、国の領地拡大を怠った国。
そこでは、父娘だけで営業している小さな病院があった。
小さいからと言って、繁盛していないわけでもなかったのだ。
仕事をしているのは父だけだが、その父は熱心に患者さんを元気にしようとしている。
時には、ココロのケアもするのだ。
娘のほうは仕事場には出ないが、時折町に出ては、子供達と遊んだり、忙しい父に代わって、病人の家に訪問したりしている。
そんなこんなで、その小さな病院は町の人に人気もあり、大きな病院にも負けないほどだ。

しかし・・・




















「お父さん、起きて!もう、営業開始の時間よ」

私は父を起こしに来た。
理由は勿論、営業を開始する時間間近だからだ。
いつもなら、私よりも先に起きているのだが・・・今日は、起きてこなかった。
だから、起こしに来たのだ。

「お父さん!・・・ちょっと、お父s・・・しっかりして!」

無理やり父の布団を剥ぐが、父はピクリとも動かない。
どうしたのかと思い、顔を覗くと・・・白目をむいているではないか。
これは、流石に異常なことだ。
一応、息はしているけど、仮死状態と言ってもおかしくない。
と、とにかく・・・どうにかしないと。

「・・・大きな病院に運ぶしかないわ」

無論、私の力では父を運ぶことは愚か、背負うこともできないのだ。
あまり、したくないけど・・・力を貸してもらうしかない。







「・・・あのぉ、すいません!力を貸してくださいませんか!」

「どうしたんだい、ニンキャスちゃん?」

「父の様子がおかしいんです!お願いですから、大きな病院に運んでくれませんか!」

「・・・分かった。でも、ニンキャスちゃんでは、どうにもできないのかい?」

「・・・はい・・・未熟な私では・・・何も」

私は一番近くの男の人の家に訪れていた。
その人はここらでも力持ちだと知られている。
少しでも早く、父を診てもらうには、これが一番なのだ。

「よし・・・君は、どうするんだい?」

「すいませんが、私は父の病院をどうにかしなくてはいけないので・・・お願いします」

男の人は病院と一緒になっている私と父の家に入ると、父を背負って一番近い大きな病院に連れて行った。
私は、父の代わりに患者さんの対応をしなくては・・・。
薬は、患者さんが覚えているだろうし、もしもの時には、自らの知識でどうにかするしかない。



















「神様・・・お願いします」


医者の娘の話です。
<2013/02/09 23:21 ヘリオス>
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