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硝子玉 − 旧・小説投稿所A

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硝子玉
− かくれんぼ −
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「えー、ここで母音がa,i,u,u,e,e,となるので五段活用となるよ〜。」

月曜日...一週間で一番テンションが下がる日だ。

今は五時間目...国語の時間...用言の活用...国語の中で一番苦手な文法の授業。

(ヤ..ヤバい...眠い....)
流石に五時間目で苦手が来ると眠くはなる。
瞼が自然と降りてくる。
そのまま僕は奇跡的に鉛筆すら落とすことなく夢に落ちた...


― 一年前 ―

僕は松田家の一員としてふつうの日々を送っていた。

「兄ちゃーん!!いるー?」
大きな声が家に響く。

「あぁ!部屋にいるよー!」
こちらも負けず大声で返す。

「遊ぼーよー」
これから友達と遊ぶというのに準備運動なのか。

「あーい、いまいくよー」
ほぼ提出に間に合わない美術制作を中断し、弟のところに向かった。

弟の名前は松田 哲(まつだ さとる)5歳も差があり無邪気な子だ。

「なにするか?」

「うーんとね、かくれんぼ!」

「わかった、じゃあ10秒数えるからかくれておいで」

「わ〜兄ちゃんが鬼だ〜」
ドタドタと走りながら隠れるところをさがしにいった。

「いーち!、にぃー!、さぁーん!、しぃー!...」
まてよ、僕が弟に準備運動させられてるじゃないか。
「きゅうー!、じゅう!」
なんの変哲もないただ普通のかくれんぼが始まった...

かくれられる場所は大体風呂場とあと子供部屋とえぇっとそれから...
普通の家にしてはこの家は広く、かくれる場所も多い(片づけていないのもあるけど...)。

まず風呂場に行って見る。
「うわ、全然乾いてねーじゃん...」
まだ床は全然乾燥しておらず、靴下のまま入ってしまったから一歩踏み入れるだけでぐっしょりになってしまった。
水が入っていると知りながら一応浴槽を確認する。
前にかくれんぼをする番組で浴槽に仕切りを作って片方にお湯を入れて、お湯の入ってないほうにかくれるという荒業をしていたからだ。

そろりそろりと蓋をあけたが...
「...やっぱりね...」
やはりそこには冷めた水しかなかった。

ちょっと落胆し、濡れた靴下を脱ぎ捨て風呂場を出た。
後は大体僕の部屋か哲の部屋だろう...階段を上がって狭い廊下を直進して突き当たったところに右に弟の、左に僕の部屋がある。

まず弟の部屋に入る。
その時、
「痛っ!」
開きかけていたドアが止まり額をぶつける。

ヒリヒリする額をさすりながら今度は部屋に入った。
三日ぶりに弟の部屋に入っていたが、三日でここまで汚くなるのだろうか?
〈まぁ、そこまで人のことを言えないけどね。〉
自嘲ぎみに心の中でつぶやく。
きちんと積み重なっていた段ボール箱があちらこちらに大移動をしている。後で断捨離をすることになりそうな予感がする。

「まさか段ボールの中じゃないだろうな...」
棚の上の段ボールに引きつけられたように近づいていく。ゆっくりとその段ボール箱を持ち上げる。
ずっしりして弟の体重と同じくらい。
下に下ろして中を見ると段ボールの1/3をビー玉だけが占めていた。
「へぇ、集めてたビー玉こんなに集まったのか(笑」
飲み物を買おうとしたとき哲にむりやりラムネを買わされてまでビー玉を集めてたことを思い出す。

「ん...なんだこれ...」

見つけたのは黒い半透明なビー玉だった。

「あ、そうだ、かくれんぼだった(笑」
20秒ほど眺めポイッとその黒いビー玉を元の段ボールの中に入れ弟をさがしだす。

そっと哲の部屋を出て僕の部屋に入る。
「ん?ちょっと重い...」
とりあえず部屋に入る。目の前に広がるのは特になんの変哲もないちょっと汚い(?)僕の部屋。
はぁ...じゃあどこにいるんだよ...と部屋を出ようとしたとき、あけっぱのドアの下に赤い靴下が見えた。

「みーっけた」

― キーンコーンカーンコーン

たまに鳴らないチャイムが鳴り目が覚めた。

「ふぁ〜...ねむ」

「ねむいって寝てたろ」
後ろから笑いながらのツッコミが入る。

「次は英語かよ...比較級とかだる...」
今日も一日長そうだ。


サブがそのまんっま(笑
<2013/01/28 00:09 Mth>
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