---

『おれの名前はフォート。トマートのクラスメートである。
ん？なんで名前がカタカナかって？ふふ、それはだな……』


プルルルルル！！！

「ったくなんだぁ！！ようやくイメージが
湧いてきたところだというのにィィィ！！」

突如鳴り響く電話の着信音。
三十分かけてようやく数行の文を書き終えたフォートにとって、
その音は邪魔もの以外の何物でもなかった。
重い腰を上げ、しぶしぶ受話器を手に取ると「もしもし」とだるさMAXの声を出した。

「お、お、おおおおおおいフォート！！
朝刊のチラシ見たかよ！！！？」

刺激臭ならぬ刺激音。
あまりのうるささにフォートは受話器を落としかけた。

「わーーっ！うるさいうざいやかましい！！まず名乗れ！
ってかチラシ見たとか主婦かお前は！！」

どうやら相手は同級生のライドのようだ。
この異常な声の大きさは彼ぐらいにしか出せないであろう。

「ち、違う違う！スーパーの大安売りのなんかじゃない！！
ひときわ目立つ青色のチラシだ！とにかく探してみろよ！！」

がっくりと肩を落とす。全く、そんなことをしている暇なんてないのに…！

しかしきっぱりと無視するというのもなんだか　アレ　である。
運良く近くの机に置いてあった何枚かのちらしをめくってみると、フォートは目を疑った。

「なっ…なんじゃこりゃあぁぁぁっ！！！」
彼の目に映った文字。それは…

――――――――――――――――――――――――

【Orcas　Boxing！！！】

人間VS人喰いシャチのドリームマッチ！！
〜貴方は歴史的瞬間を目撃することとなるだろう〜

・午後２時より、●●海岸にて…開始！


※総合責任者…トマート
――――――――――――――――――――――――

「あ、あの大ボケのトマートが…ついに狂ったのか……」

へなへなと地面に座り込むフォート。
しかし彼の右手にはしっかりと青いチラシが握られていた…




〜〜〜〜


「…何考えてんだあいつは…受験シーズン真っ盛りだっていうのに」

「あぁ…俺も始めてあのチラシを見た時は思わず飛び跳ねっちまったよ……」

電話での通話を終えた後、二人はポケモンらしく自転車に乗り、
例の開催地　●●海へと向かっていた。
そして目的地に近付くや否や、司会者と思われる声がしっかりと聞きとれた。

「さぁみなさん！人間鯱の登場です！！」

---