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ぼくはとある寂れた村で生まれ育った。
父と母は僕が生まれてすぐに死んでしまった。僕は叔父に預けられたが、叔父は酒癖が悪く、機嫌が悪いとすぐに僕にあたってきた。
こんな生活をしながらもなんとか生き抜き、明日で僕は7歳になる。
でも、最近村に怪しい人が出入りして村長さんと話しているのを見かける。
一回盗み聞きしてみたけど、「ざいせい」とか「しゃっきん」とか難しい言葉ばかり言っていてよく分からなかった。

…なんか嫌なことが起きそうだなぁ。


そう思った次の日、予想は的中することになる。

今日もまたあの怪しい人が村を訪ねてきた。後ろに何か変わった動物を連れている。鋭い爪、堅そうな鱗に覆われた皮膚、大きな体。前に絵本で読んだドラゴンっていうのによく似ている。

それに…今日は村のみんなが広場に集まっている。みんなこわい顔をしてあの人のことを見ている。

「それでは本題に入りましょうかね。我々の要件はただひとつ。この村が我々の会社から借りたお金を返してもらいに来ました。」
「も…もう少しだけ待ってもらえませんかね…?」

村長の額からたくさんの汗が吹き出してきた。

「また、それですか。いい加減にしてください。今回我々はそんな言葉を聞きに来たのではありません。それに、今回は我が社員のレルゴ君にも来ていただきました。これは武力行使でも構わないということです。レルゴ君がその気になれば、あなた方を全員昼食にすることだって出来ますよ?」

「ナーサさん、僕そんなには食べれませんよ。せいぜい半分です。」
「それは失礼しました。…でどうしますか、村長さん。」
どうやらあの怪しい人はナーサというらしい。で、ドラゴンのほうがレルゴ。

「…そんなこと言われても私どもには本当にお金がないのです。ナーサ殿。今回だけはどうかお許しくださいませんか?」
「別に私達は高い利子などをつけて返せとなど言ってないのですよ?…仕方ありませんね。今回までですよ?」
「ほ、本当ですか!?」
「ただし、条件があります。…子供を2人ほど渡して貰いましょうかね。さもなくば…。」
「…わかりました。少々お待ちください。」


****
「……どうですか?みなさん。ここは公平にくじ引きで…」
村長が切り出した。

「…そうだな。でも、子供の1人は決まっているも同然だろ?ハルでいいだろ。」
急に僕の名前が呼ばれたのでビックリした。しかも、僕の名前を出したのは叔父だ。

「あいつがいると俺の酒代が減るんだよ。貰い手がいるなら持ってってくれ。」
「え?叔父さん?嘘だよね?」
僕は叔父さんの言ったことが信じられなかった。

「さっさといなくなれよ。」
叔父が放った冷たい一言。でも、何故だかそこまで悲しくはなかった。


少し経つと子供がいる家庭の代表者が集まってくじ引きを始めた。
一人ずつ木の枝を引いていき、色がついていないのを確認するとほっとした様子で子供の下へ帰っていった。

だが、1人だけ赤い色のついた枝を引いてしまった者がいた。その人の子供は、思わず泣き始める。その子供の名前は、「タクト」。僕ともよく話してくれる11歳の少年であった。

「決まったようですね。」
ナーサが言った。
僕らは手足を縛られ、つき出された。

「…はい!確かに子供2人ですね!ご返済を先送りにしましょう。行きますよ、レルゴ君。」
「…人間の子供のオス…。旨そう…じゅるる。」
「あ!だめですよ!レルゴ君。この子達は大事なわが社の商品になるのだから。」
「はぁい…。」

そういうとレルゴは僕たちを鷲掴みし、ナーサを背中に乗せ、飛びたった。

「……これから僕たちはどうなるんですか?」
聞いてしまった。だいたい想像はついているのに…。思い過ごしであってほしい。

「あ〜。そっか。ボクぐらいの年齢じゃまだわからないか…。私達はね、奴隷商人なんだ。時々お金を貸したりもしてるけどね。奴隷といっても、顧客はほとんど人間じゃないんだ。……だいたいは大好物である人間を買いにくるドラゴンさんとかかな?」
「え…?つまり僕達はエサってことですか?」
タクトが震えてる声で訪ねた。
「まぁ平たく言えばそうだね〜。まぁお客さんによるけどね〜。…っと着いたよ〜、レルゴ君ご苦労様。」

とうとう着いてしまった。話は難しくてよく分かんなかったけど、とりあえず僕達は地獄への一歩を踏み出したらしい。




<2012/12/08 17:55 ピヨ助>消しゴム
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