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魔女にかかれば − 旧・小説投稿所A

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魔女にかかれば

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「えっ…え……」

魔女ではなくなった
つまり、それはカレンの魔力が失われたという事だ

受け止めたくない現実
頭の中が真っ白になり、譫言のような言葉を漏らし続けるカレン
その様子にシャドウがクーンと鳴いた

「折角話が合う相手を見つけたと思ったのにな…」

そう言うとトレゾアは、ベッドの近くにある椅子に腰掛けた
残念そうに溜め息まで吐いている

「魔力は…もう戻らないの…?」

上半身を起こし、震える声でそう訊ねた
平常心を保っているつもりだが、全く不安を隠せていない
よく見れば、その手はシーツを力強く握っていた

「それは分からない
 魔力切れなんて初めて聞いたからな」

唯一の救いとも言える彼女もお手上げの状態だった
魔導書らしき本を持ち、頁を捲っているがカレンの望む答えは帰って来ない

「まぁ良いではないか…」

「っ!?」

込み上げてくる絶望に表情が曇るカレン
そんな彼女の顎にトレゾアが手を添え、クイッと引っ張る
唐突過ぎて彼女は言葉を失う
その様子を見据えながら、トレゾアは妖しく笑った

「もう魔女と呼ばれる事がなくなる
 それに…人間の女の肉も中々美味……」

「ガウッ!!」

シャドウの声が彼女の言葉を遮った
何かしたら許さないと言った目で彼女を睨んでいる
それでもトレゾアは微笑んだまま、今のが冗談だと返す
本気に見えた…とカレンは密かに戦慄を覚えていた

同時に自分に力が無くなった事を改めて痛感した
シャドウを守るつもりで使った魔法
彼を救う事は成功したが、また振り出しに戻ってしまった

彼女にとって魔力を失うだけなら、まだ良かった
もっと大事なものがあったからだ

何度も交わした会話
お嬢と呼ぶあの声
それが、静かに消えていく……

「うぅ…っ…」

気づけばカレンの目から涙が零れていた

もっと早く気持ちを伝えとければ良かった
あの時騎士団の存在に気づいていれば…
と、激しい後悔が彼女を襲う

それらは全て涙となり、シーツに小さな染みを作っていく

「紅茶でも淹れてやろうか…
 それまで、二人で何かしておけ」

そう言うとトレゾアは、先程カレンと話していたあの部屋へと向かった
寝室にいるのは、シャドウとカレンだけ…

まだ泣き続ける彼女の頬を、シャドウが優しく舐める
カレンは無言のまま、そして微笑むと彼の頭を撫でた

「ごめんね…」

泣きながら紡ぎ出された言葉は謝罪の言葉
もっと言いたい言葉があるはずなのに、今の彼女はそれしか言えなかった
気にしないで下さい、とシャドウがまた吠える

ベッドに前肢を乗せ、カレンの顔を覗き込むような体勢になるシャドウ
犬のように、笑顔を浮かべる彼に彼女の気持ちは落ち着いていった

そして、カレンはシャドウを抱き締めた

「シャドウ…私…」

彼の柔らかい体毛に半分顔を埋めながら、話し始める
もう手遅れかもしれないが、どうしても彼女はこの言葉が言いたかった


「好き…」


また涙が溢れてくる
それを堪えながら、また強く彼を抱き締めた

「私…貴方の事が大好きなの!
 誰よりもずっと…だから…だから…」

シャドウはそれを大人しく聞いていた
自分が仕える、大切なお嬢様の言葉を

それに答えるように、彼はまたクーンと鳴いた




「無駄に高そうな紅茶、淹れてやったぞ」

それから少ししてトレゾアが戻って来た
お盆は無く、カップは宙に浮いている
それが、カレンの所まで届けられた

既に落ち着きを取り戻した彼女は、それを受け取り一口口に含む
甘く、温かいそれは彼女の喉を潤した
不思議と心も潤うような感覚まで彼女は感じた

「何時かまた遊びに来てやろうか
 それまで、殺られるんじゃないぞ?」

「ふふ、貴女こそ」

互いにクスッと笑う
トレゾアは長いローブを整え、その場を後にした

「散々な一日だったわね…」

「でも、良かった事もあったのでは?」

「そうね……!?」

「お嬢、今日の夕飯は何でしょうか?♪」






「全く…どうでもいいものに魔法を使ってしまった」

一人帰り道を歩くトレゾア
何やら独り言を呟いているが、その表情は何処か満足げな笑みを浮かべていた

本物の魔女に魔法を使わせる程の力をもつ少女
魔女カレン

その名を心に刻みながら、トレゾアは森の奥深くへと消えた


〜完〜


書いてる途中で三回ぐらい泣いたw
とりあえず、本編的なのはここで終了です♪

次回は後日談w

読んでいただきありがとうございます♪ヽ(´▽`)/
<2012/12/01 18:16 ミカ×どんぐり>
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