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まだ見ぬ世界 - 旧・小説投稿所A
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まだ見ぬ世界
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この世には、理解しがたいことが山ほど転がっている。
今、自分の目の前で起きていることもそのうちの一つなのだと言えば、きっとそうなのだろう。
「はぅ! ぐぇ……」
悲痛なその小さな声は、無惨にもその当事者の咀嚼音によってかき消された。
見慣れた友人の姿が、みるみるうちに闇に吸い込まれていく。
どうすればいいのか、頭では分かっている。でも体はいうことをきいてくれない。
足がすくむ。
歯がカチカチと音をならす。
空気が冷たい。
焦りと不安が入り交じる。
もはや何も分からない。
その場に棒立ちしたまま、自分は友人の最後を見届けた。
“ゴキュッ!”
半ば強引に飲み込んだのであろう、雑な嚥下の音をたてて怪物は笑みをこぼした。
ぺろりと口周りについた唾液を舐め取り、『次はお前だ』と言わんばかりの視線をむけて、のそりと自分に近づいてきた。
もうなんでもいい。
殺すなら、いっそのこと楽に死なせてくれ。
それが自分が必死になって考えついたことだった。
『ほれ、ぬしよ。さっさとせぬか』
頭の中に直接流れ込んでくるその声に、彼――ライル――はびくりと体をすくませた。
自分自身、まだ生きていることが不思議でならない。
本当ならあの日、自分も友人のあとを追って今頃この狼の血肉となっていただろうに。
せっせと巨大な鎌のような爪を磨きながら、ライルはそんなことを考えていた。
『それが済んだら次は我にまとわりつく、小賢しいダニの駆除を頼もうかの』
「勘弁してください」と言わんばかりの表情を浮かべると、狼はニヤリと笑い、ライルの頬をぺろりと舐めた。
『まだ死にたくはなかろう?』
「う……わかりました」
『くふ、いい子じゃ』
わさわさと尻尾を揺らし、楽しげにグルグルと唸るその姿は、まるで犬のようだ。
しかし本当は犬などという可愛らしい表現が似合わない、恐ろしいほど巨大な狼である。
ライルは顔を曇らせることでさえままならない。
もちろんため息などもってのほか。
ぴょんと見事なほどに艶やかな体毛から跳び跳ねたノミを見つけると、ライルは一思いに潰したのだった。
『ところでぬしよ。ひとつ質問があるんじゃが』
「な、何ですか?」
『うむ』
薄い吐息の後に、その狼は言った。
『我が人に化けられると言ったら、どう思う』
<2012/11/06 19:31 X>
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