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出会い − 旧・小説投稿所A

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出会い

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「おい、そこのお前。」
「・・・・うぇ?」

後ろから声が射し込んできた。
振り向くと、そこには一体の黒竜がいた。

「俺は今、腹が減ってるのだが、お前の・・・・」
バタンッ・・・!

黒竜が話してる最中、そいつは急に倒れ出した。
見て見ると、そいつは白目をして気絶していた。

「・・・おい、大丈夫か?」
「・・・・。」
「・・・気を失くしたか・・・?味が悪くならないだろうなぁ・・・。」

すると、ヒョイっと気絶してるそいつを持ち上げアーンっと大口を開けた。
大きく開かれた口の上で、ぶらーんっと手足を垂らしてる状態でも、気が戻らない。

「んじゃ、頂きまーす。」
パクンっ・・・・!

一口で口の中に収まると、モグモグと口を動かしながら味わい最後はゴクンっと呑み込んだ。

「・・・こんだけじゃあ、腹の足しにもならねぇか・・・。」

食ってみたものの満足する程でもなく、少し落ち込んだりもしていた。

「・・・しょうがねぇ、他のを探しに行くか。」

渋々、重い翼を動かし空へと舞った。



「・・・う、うぅ・・・。ここは一体・・・?」

目が覚めると、目の前には太陽を後ろにし光を遮る木の下で寝ていた。
隣には、自分のバックなどが無造作に置いてあった。

「 ・・・寝てた?けど、知らない黒竜に話しかけられたような、ないような・・・。」

曖昧な記憶で、思い出すにも思い出せずにいた。
すると、ふと気づく。
なぜか、やけに自分の身体が濡れてるのだ。
衣類は湿気っており、髪の毛はボサボサ。
まるで、風呂にでも入ったかのように。

「服も全部濡れてる・・・。一体なにが・・?」

よいしょと起き上がり改めて辺りを見渡すと、散々と放たれている日の光を遮る木々が生い茂り、その隙間から光の線が引く。
なんとも幻想的とも言える風景に見とれていた自分に、後ろから唐突に声がかけられた。

「ようやく起きたか。」
「・・・えっ?」

振り向くとそこには、見覚えのある黒竜の顔だった。

「お前さぁ、話の最中に倒れるっておかし・・・・」
・・・・バタンっ!

またもや話の最中にそいつは気を失った。
流石の黒竜も、これには呆れた。

「・・・おい、お前さん・・・、死んだフリでもしてんのか?」

少し話しかけてみたが、全く返事がない。
つんつんと突っついても、反応が無い。

「・・・・。」

そこで、倒れているそいつに二発程のビンタを加えてみた。
無論、力は抜いてやった。

ベシっバシっ・・・!
「痛っ・・・!?」
「 起きたか?大体、話の最中に倒れるお前が悪いんだからなぁ、それぐらいどうってことはねぇよ。」

だが、そいつは頬をさすりなが涙目でこちらを見ていた。
一応、加減はしといたつもりだったが少しやり過ぎたのだろうかと、少し反省したりしなかったり。
ともかく、ようやく話せる状態になり、早速口が動く。

「まず最初に、お前の名前はなんだ?」
「・・・カーライト=アル・・・。」

泣きべそかきながら開いた口からは、小さな声で名前が発せられた。
その微かに聞こえる名前に不満を抱く黒竜。

「カーライ・・・なんだけっけなぁ?無駄に長い名前だ。・・・よし、今からカーライなんとかの呼び名は[チビ助]だ。」

命名の由来は、チビ助が単に小さいから。

「・・・グスン。僕、カーライト=アルって名前・・・。」
「 まぁ、そういうのは気にするな。・・・おっと、そういえばまだ俺の紹介がまだだったなぁ。俺の名は、ゼロンだ。よろしく♪」

チビ助の意見など全く受け入れず、どんどん話を進めていくゼロン。

「そういえばチビ助、なんで話の最中に倒れたりしたんだ?」
「そ、それは・・・、その・・・・。」

その話題を出した途端に、チビ助の様子が変わる。
目がキョロキョロと動揺が隠せず、ゼロンもその事に気づいた。

「なんか、言いたくない事でもあんのか?」
「・・・そ、その・・・。」

聞いてはいけないことでも聞いてしまったのか、罪悪感が内心の隅っこに抱いていた。
そんな中、チビ助は下に俯き口を閉じている。

「・・・まぁまぁ、俺が聞いてやらぁ・・・。ほら、言ってみ?」
「・・・・。」

ともかく、一番に思いついたのは優しい言葉をかけること。
結果は、見事に功を奏した。

「・・・実は、僕・・・、心臓の病があるんだ。」
「・・・・心臓がか?」
「うん・・・。周りから驚かされたり、激しく動いたりすると、心臓が一瞬だけ止まって、そのせいで気を失うんだ・・・。」
「・・・なるほどなぁ・・・って、俺の顔を見て気絶したってことは、それほど驚いたってことか?しかも二回もなぁ!?」

すると、さっきまで今にも泣きそうだったチビ助の顔が急に引きつった。

「・・・それは・・・初めてドラゴンを見て、それで・・・。」
「・・・まぁ、別に気にすんな。お前の気持ちも分からない訳ではないしなぁ・・・。」
「・・・・。」

ゼロンのその言葉の後は、沈黙が続いた。
木々の靡く音で周りが包まれた刹那、チビ助が口を割った。

「・・・あの、僕そろそろ行きます。」
「おいおい!そんな身体なのにまだ旅なんてするのか?」
「それは、大丈夫です・・・。じゃあ・・・・さよなら。」
「お、おい、待って・・・・」

ゼロンの言葉は通じず、呆気なく行ってしまった…。


<2012/10/14 17:04 きくズ>消しゴム
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