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君と見た空 − 旧・小説投稿所A

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君と見た空

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カン…!! カン…!!

釘を打ち付ける音が、星空の眩しい海辺へと響く。
船の修理に取りかかったロンギヌスに、カイオーガは息を止めて近づいた。


「あ…ロンギヌスさん…ちょっといいかな?」

「俺に敬称つけてくれとは嬉しいねぇ…なに?」

カイオーガはぐっと歩み寄り、ロンギヌスの肩に
背後から抱きつく。金づちをボロッと取り落として、ロン
ギヌスは困惑した顔を浮かべた。


「な、なにを…」

「お願いだ…僕を…僕を連れていって…」

肩を凄まじい腕力で抱え込み、カイオーガは呟く。微かに
震えるその声に、ロンギヌスは何も言えなかった。



「自分の弱さ…やっと分かったんだ…。強くなりたい…から…」

「……じ、充分だろ…」

「ううん…? メモリの力借りてなかったら…今頃…」

カイオーガは首を掻き切られる仕草をした。
そしてロンギヌスと密かに手を繋ぎ、エターナルメモリを返す。

「お願い……」

「ま、待てって…!! この島を出るんなら…ギラティナとも…」

「…別れるよ。もう……会えなくっても…」

何故そこまで「強さ」を求めるのか、ロンギヌスには理解
できなかった。ただ目を潤ませているカイオーガの背中を、慰めるようにさする。



「分かった…明日一緒に行こう。ギラティナには…」

「僕が話すよ……最後ぐらい…言いたい事もあるしさ…」

決意を固めたのか、カイオーガは腕を離した。
彼が内心死ぬほど苦しい悩みに追われているのは、ロンギヌスは明白だと思えた。

踵を返し、カイオーガは最後の友との対談へ踏み出す。









「……ギラティナ…」

「よう…何だ? 暗い顔して。お前らしくないぞ…?」

「隣に寝て…いい?」

「フフ…好きにしろ。」

カイオーガとは正反対に、心からの笑みを漏らして隣を空ける
ギラティナ。両方の翼に重い傷を抱えていても、胸の中は
いつも通り、優しかった。


カイオーガは枯れた笑顔を見せ、のそのそと寝転ぶ。ふと
隣に視線を向けると、雲一つない大空に没頭するギラティナの横顔が見えた。



「やはり飽きないな…この島の空は…」

天空の華のように、数え切れない星達が広がっていた。
昨日と同じ…変わらない輝きが、二匹の瞳に光を踊らせる。



「ギラ…」

「ああそうだ…まだ助けてもらった礼をしてなかったな。」

別れを告白しようとした言葉を遮られ、カイオ
ーガは口を閉じた。ギラティナの鮮血のように赤くも温かい瞳に見つめられ、
途端に黙り込むしかなかったのだ。

「何がいい…? バンギラスでも狩ってくるか…お前の好物だろう?」

「あ、いや…今はいいよ…」

「そうか? なら…」

「ギ…ギラティナ!!」


次々に降ってくる感謝の言葉に耐えられず、カイオーガは
喉の奥から叫んだ。ギラティナは殴られたように驚いていたが、
すぐに元の表情に戻る。

「なんだ? 大声出さなくても聞こえ…」

「僕明日…ここ出ていく……から…」









…………


時間が止まった。
鳴こうとしていたヨルノズクが、唐突に動きを止めた。
時間空間の両方を支えるべきギラティナが、衝撃でその仕事を
やめてしまったのだ。
周りが静止した時空の中で、カイオーガは滑る舌で早口に言い放つ。


「べ、別にギラティナが嫌いなんじゃない! ただ訳があって…」

「どんな?」

「今の僕じゃ世界を知らない…
世界中にはもっと強いポケモン達がたくさんいるんだ!! だから…」

「なぜ強くなりたいんだ…?」

お互い弾けるように飛び起きた。
カイオーガは、ギラティナの喋り方が、恐ろしく陽気になっている事
に気づく。思考が止まる程の悲しみのせいで、口元はヒクヒクと痙攣していた。


「理由はないよ……ただそれが…今の僕の夢なんだ。」

最後に冷たく突き放すように言った事を、カイオーガはすぐに後悔した。
 ギラティナは現実を拒むかのように首を振り、現実という悪夢にうなされる。


「頼む…やめてくれ…」

「……ギラティナ…」

「もう独りに……しないでくれ…!!!!」

ひとり冥界で暮らしていた過去の自分…
それに再び友の消えた生活を重ね合わせると、ギラティナの
精神はガラガラと崩れるしかなかった。


<2011/05/15 16:18 ロンギヌス>消しゴム
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