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君と見た空 − 旧・小説投稿所A

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君と見た空

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バキィン…パキン…!!

「なっ、な…なぜだ…!?」

マキシマムドライブを発動した途端に、アルセウスの7本のメモリ全てが砕けて地面に落ちた。粉々になった残骸を見下ろし、アルセウスは瞳孔を見開く。

「そんな…馬鹿な…」

ガイアの記憶という絶世の力を失ったためか、吹雪は逆にカイオーガに押し返された。ぐんぐん近づいてくる濁流に呑み込まれ、アルセウスは押し流された。

「カイオーガ…!!」

追い討ちをかけようと駆け出したカイオーガに、背後から叫ばれる大声。ロンギヌスが、真っ赤なメモリを持って走ってきた。

「とどめさそう…神様に…」

「……うん!」


森の木々をなぎ倒しながら吹き飛んだアルセウス。僅かに残った力で立ち上がり、まだ戦おうとしていた。

「我は神なり…誰にも…敗れは…」

相対するカイオーガ達は、その言葉を遮るようにメモリをスロットに差し込んだ。最後のメモリの響きが、森中に轟いた。


ガチャン…「BOMB__MAXIMUM DRIVE!!」

「ETERNAL__MAXIMUM DRIVE!!」


ロンギヌスの左手に灯火が浮かび、華麗な光を放つ。しかし彼がそれをアルセウスに放り投げると、地雷のように大爆発を起こした。

一方カイオーガは目の前に出現させた巨大な「E」の文字を、思いきってヒレで叩き割った。ガラスのような破片がアルセウスに次々に命中し、最後は神を塵へと還らせた。





「終わった…んだ…」



=========

アルセウスは遺体も残さずに消え去ったので、二人は急いで海岸へと飛び出した。そこにはギラティナが、白い包帯に身を包んだ姿で寝かされていた。


「ギ、ギラティナ…」

「重力のメモリでここまで運んだんだ。出血がやばいけど…大丈夫、ちゃんと生きてる。」

しかしロンギヌスの話など、カイオーガはろくに聞いてはいなかった。自分を乗せて飛んだ翼の無いギラティナに、無言で近づく。

「…はぁ…はぁ…っ…」

左右不恰好な両翼。今にも血が垂れそうなほど濡れた包帯。そして何より、悔しさに流した涙の跡が、カイオーガの心を槍のように貫いた。そっと頬に触れ、震えた手つきで撫でる。




「ごめんね…何もできなくて…」

ロンギヌスが帰る準備をしている間も、カイオーガはずっとギラティナの顔に手を当てていた。それが効果あったのか、日没間際にギラティナは目を開ける。


「あっ…ギラ…」

「無事か? カイオーガ」

言おうとした労いの言葉を先取りされ、カイオーガは口を噛んで涙をこらえる。本来ならここで「うん」と返事を返すはずはのに、今日は特別、それが出来なかった。


「ギラティナぁ…ご、ごめんなさい…!!」

「……」

出会って初めて頭を下げられ、ギラティナは黙って混乱する頭を整える。そして一息つくと、なだめるようにこう言った。

「気にするな翼ぐらい…お前が生きてて…良かったよ…」

もう限界だった。滝のように嬉し涙を流し、カイオーガはギラティナに飛びつく。手である翼を無くした以上抱きしめる事は出来なかったが、ギラティナに思いは十分に伝わったようだ。静かに瞳を閉じ、そっと傷だらけの顔同士をくっつける。




「あー…船壊れてるよ…どうやって帰れば…」

すっかり蚊帳の外のロンギヌスの目は、ボロボロになった船舶に向けられていた。あまりの状況に、流石に首を捻る。


「ねぇ泊まってよ…修理できるまでさ…」

「え…いいの?」

「私も歓迎しよう…命の恩人だ、お前は…」

二匹の快諾を受け取り、ロンギヌスは首を縦に振った。結局その日…手当てに走り回る羽目になるのだが…


<2011/05/15 16:18 ロンギヌス>消しゴム
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