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後ろの正面だあれ − 旧・小説投稿所A

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後ろの正面だあれ

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女性キャスターが呑み込まれた頃…


〜カイオーガ〜舌袋内〜

凍っていた二人…坂本と山本が薄く目を開ける。全身の氷は跡形もなく消え、軽い凍傷程度で済んだようだ。しかし…

「なんだよ…ここ…」

「わ、分からない…」

当然、今自分たちがいる空間が、「普通」ではない事は分かっている。地面はぶよぶよした怪しい色の大蛇で埋め尽くされており、それらは鈍く光る液体に浸されていた。

いざ立ち上げると気づいたのは、同じ場所にずっと立ち続けるのは無理だということだ。自然に脚はズブズブと沈んでいく。


「あっ…もしかして…」

突然何かを思いついたように、山本がバシャバシャと走りだす。地面が不気味なのに恐怖を抱きながらも、坂本は跡を追った。

「やっぱり…」

「ど、どうしたんだ?」

「ここ…何かの体内だと思う。ほら…」

空間の端…そこで二人が見たのは、てらてらした柔らかそうな壁だった。一定の間隔で「ドクン…ドクン…」と脈打っており、軽く触ると、手には辺りに満たされている液体と同じようなものが付着していた。

「うそ…だろう…?」

「本当だよ…くそ…」

坂本は肩を突き出してある程度下がると、渾身のタックルを繰り出そうとした。しかし山本がそれを体で引き止める。

「なにするんだよ…!!」

「それでこの壁破れるとでも思ってる?」

「うるさい…やってみなくちゃ分かんねえだろう!!」

再び間合いをとり、がっちりした肩を突き出す坂本。絶対に脱出してやるという信念が、目にメラメラと映っていた。

「うおおおおおおおおおおおっ…!!!!」







ぐにゅぅ………ぼよん…!

「ぬああっ…!!!」

体は深く壁に沈みこんだものの、凄まじい弾力によって坂本は空間の中央辺りまで押し飛ばされた。

その瞬間、カイオーカが胸に違和感を感じたのは言うまでもない。



「く…くそぅ…」

「諦めろって…無理なもんは無理だ。」

「いや……これを使えばいい。」

坂本は腰につけたミニポーチから、小さなナイフを取り出した。刃渡りは5cm程だ。

「お前…なんでそんなものを…」

「非常用だ…備えあれば憂いなしって言うだろう?」

「で…そ、それでなにを?」

「決まってんだろ…あの壁切るんだよ。」

坂本は足場に注意しながら、ナイフを光らせて再び壁へと向かう。しかし…


「お前…それはまずい!こいつが怒るに決まってる…」

「怒ったらどうだってんだよ…俺はやるぞ。」

冷静に考えれば5歳でも分かるというのに、坂本は注意を全く受け付けない。出るための執念が、彼の冷静さを失わせてしまったようだ。

そして…刃をぷるっとした壁へと突き立てる。



〜外〜




「ぎゃあああああっ…!?」

「ど、どうしたのよカイオーガ…いきなり…」

「痛い……あいつ…ら…」



してはならないことを、してしまった。


<2011/05/15 15:46 ロンギヌス>消しゴム
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