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ギルド − 旧・小説投稿所A

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ギルド

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このギルドの一員になって、約3ヶ月程の時が過ぎ、思い返せば月日なんてすぐに過ぎるものだと痛感した。喰われると言う悪夢から既に3ヶ月も経過しているのだから。



「ログ、これが今日町中から集められた依頼書よ。あなたはブロンズの窓口をお願いね。」
そう僕に指示を与えているポケモンは、3ヶ月前に僕を呑み込んだ張本人、ジェローダだった。張本人?いや、張本ポケか……いらない略はやはりやめよう。あの日以降、ジェローダからは呑まれてはいないが、突然体を舐め回されたり、ツルで締め付けられたりする事はよくある。本人は冗談でやっているらしいが、やめて欲しい。
「ああ、はい。わかりました。」
受け取った依頼書を確認すると、木の実の配達、整備、手伝いなど、誰でも簡単に出来そうな仕事の内容である、僕の請け負うブロンズの窓口は、駆け出しのポケモンたちが受ける階級だ。
小型のポケモン達がほとんどを占めている。
シルバーやゴールドになると、盗賊からの護衛だとか、危険な場所での目的を果たすなど、命を失う危険性が高まる。
依頼成功で得た20%のお金を払う事でギルドで寝食が保証される。僕が3ヶ月の間に知ったのはこの位だ。
「……そうそう。マスターが仕事が終わったら自分のところへ来るように言ってたわよ。」
「僕に一体何の用でしょうかね?」
ジェローダは怪訝そうな顔を見せ、
「私が知るわけないでしょ。」
と言った。当たり前の反応だ。
まあ、仕事を終わらせて、さっさと行くことにしよう。





「ねえ、ログ君。名前は気に入ってくれた?」
そう問いかけて来るのは、愛くるしい姿をしたピカチュウだった。他のピカチュウと違うのは、首にギルドのバンダナをつけているぐらいか?
「ええ、気に入っていますよ。」
これは嘘だ。名前がついて人間と言われなくはなったが、別に気に入っているわけではない。しかし、僕は僕自身の名前を思い出せなかった。他にも、今まで何をしていたのかさえも全て。
覚えているのは、暗闇の森の中、僕を合わせ、3人の人間と行動していた事だけだった。2人と何故あそこにいて、何をしようとしていたか、それもわからない。
「今日ログくんを呼んだのはね、頼みたい事があったからなんだ。」
マスターであるピカチュウは笑顔でそう言った。
「頼みたい事とは?」
「昨日ブロンズランクのポケモン達3匹が帰って来なかったのは知ってるよね?」
脳裏に3匹のポケモンが浮かび上がった。
「ええ、かえっていません。依頼内容は木の実の森で木の実を収集する事でした。」
「それで、そのいなくなった3匹を探しに木の実の森に行って欲しいんだよね。調査チームを編成しようにも、出来ないんだよね。」
「はあ、そうなんですか。では、僕の仕事は?」
「ジェローダに任せるよ。もともと一匹で仕事していた訳だしね」
「何故ジェローダさんは一匹であの仕事をしているんですか?ほかのポケモンに手伝わせれば良かったのでは。」
「だってねぇ、パートナーとして行かせても、いつの間にかジェローダだけになってるもん」
体全体にイヤななにかが走り抜けていった。そうだったんだ、ジェローダがパートナーを食べるから、彼女一人で仕事していたんだ。いずれ僕も
「その心配はないよ。どうやらジェローダはログくんの事を気に入っているらしい。舐め回したりとかはあるだろうけど、食べられることは無いんじゃない?」
心を読まれた?……いや、推測されたのか。いずれにせよ、こいつがマスターの座にいれるのもなにかあるんだろう。
「何故心が読めたんだって言ってるね。心なんか僕には読めないよ。君の顔にそう書いてあるだけだよ。」
僕はハッっと表情を手で隠し、ピカチュウを見る
「話がそれちゃったね。もう一つ君ログくんに調査をお願いした理由があるんだよね」
「それは一体なんですか?」
マスターは、少し面白そうに
「フタチマルが君を見つけた森だったからだよ」
と言った。僕の心のなかで、ドロドロした何かがずっと渦巻いていた。


<2012/10/01 03:29 ケイイチ>消しゴム
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