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BEAST EYES − 旧・小説投稿所A

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BEAST EYES

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夜風が冷たいとある日の真夜中。

不気味なほどに静かな森の中で、一人の若者が焚き火に寄り添うようにしてあぐらをかいていた。

見れば、寒さのあまり手はかじかんでしまっており、体はぶるぶると震えている。

彼の周りには高い木々が立ち並び、そこから狼やらが出てきてもおかしくないようだった。
今にも遠吠えが聞こえてきそうである。

「ははっ、なんてな……」

そう独り言を呟いた瞬間、ガサッと近くの草が揺れる音が響く。
その音で、男の顔から笑みが消えた。

「な、何だ?」

音がした方を向いて耳を澄ましても、聞こえてくるのは火が燃え上がる音だけ。
ぱちぱちという火花が散る音がしばらく続き、しばらくして男は息を漏らした。

「はぁ……気のせいか」

がしがしと頭を掻きながら、後ろに捻っていた体を正面に戻す。

「グルルルッ」

束の間、彼は天と地の区別がつかなくなった。
訳も分からないまま、何かに押さえ付けられる。

「うぐっ! なっ」

先程唸っていた者の正体は、あろうことか恐れていた狼だった。
闇夜に溶け込むような真っ黒な体毛。
唯一目だけが、赤くギラギラと光っていた。

「ガアアァッ!」

その狼は、男の喉笛を噛み切ろうと凄まじく尖った牙をちらつかせて顔を突っ込んでくる。

(短剣、短剣は……)

狼からの攻撃を必死に押さえ込みながら、それを探す。
だが彼は、それを懐に入れてないことに気づいた。

まさに、絶体絶命である。為す術なく獣の力に圧され、その牙がまさに男の喉元に突き刺さるかと思われたその瞬間。

「シャドウ! 何してるの!」

その声が森の中に響いた。すると不思議なことに狼の動きがぴたりと止まる。
獣は、ただ一点だけを見て、じっとしていた。

男は、狼が向けている視線の先を辿る。
するとそこには、歳が十八程の若い女性がいた。

「クゥーン……」

さっきまで、恐ろしい獣にしか見えなかった狼が嘘のように甘えた声をたてている。

どうやら飼い犬のようだ。

「ごめんなさい、シャドウが驚かせてしまって」

見た目どおりの甘い声に、生唾をごくりと飲み込む。

「い、いえ。気にしていません」

片腕をついて体を起こす。

彼女の風貌からは、何故か異様な雰囲気が滲み出ているような気がした。
髪は銀色、しかも左右で目の色が違う。
見たことのない目のせいで、不思議な雰囲気を感じるのかもしれない。

「それにしても、たくましい犬ですね。一瞬、狼かと思いましたよ」

はにかみながらそう言うと、微笑んでいた彼女の顔が瞬時凍りついた。

「犬……だと?」

ざわざわと草々が揺れる音が響く。
いや、草ではない。彼女の髪が風とは別になびいている。

「そなた、今シャドウを『犬』と申したか?」

「えっ」

声色が明らかに少女のものではないものに変わっていく。

「……覚悟はしているのだろうな」

その凄まじい殺気に、足がすくみ、体が凍ってしまったかのように動かなくなる。

おかしい。
今更そんなことを思った。

こんな人里離れた森の中で、犬を連れた少女に出会うことなど普通ならありえない。

そして今、目の前で起きていることは普通ではなかった。

「う、うわああああぁぁあ!」

静かな夜の森に、悲痛な男の叫び声が鳴り響いた。








『お嬢、やりすぎです』

シャドウのまるで執事のような言葉で、彼女は我に返った。
はっとして自分の体を見れば、人間ではないそれ。
真っ黒な鱗に覆われ、腹部だけ白い鱗の生え揃ったその体になっていた。

『いけない、またこれになっちゃって……』

『あまり感情的にならない方が身のためですよ?』

光を放ち、彼女は人間の姿に戻る。

「だってこの人間があなたのことを犬だなんて言うから――」

『分かりましたからこれを着てください。目のやり場に困ります』

シャドウは、落ちていた衣服をくわえて彼女に手渡す。
彼女は素っ裸だった。

「う…………うぅ……」

「あら、まだ生きていたのね」

地面に横たわる血にまみれた男を嘲笑うかのように、目を向けた。

「ま……さか、あなたが……ま――」

『グルルッ、その名を口に出すな……』

シャドウが唸り声をあげて威嚇している。
その格好は、いつでも殺せるといったような姿勢だった。

「私は魔女じゃないわ。ただ特別な力があるだけ。それに私には、カレンというちゃんとした名前があるんだから」

薄く砂ぼこりのついた緑色のマントを羽織ながら、彼女はそう言った。

「シャドウ、後はあなたに任せるわ」

『了解、お嬢』

カレンはそれだけを言い残して、森の奥へと消えていった。

再び訪れた静寂。
ただ男の息遣いだけが聞こえる。

お嬢も酷な方だ、とシャドウは思った。
何しろ、男の至るところにある傷は全て急所であり、尚且つそれぞれそんなに深くはないのだ。

どのみち放っとけば、まず助からないだろう。
出血多量で死ぬか、もしくは血の匂いに魅せられた獣に喰われるか。

どちらにしても、苦し紛れの死しか待っていないのだから。

「頼む……助け……」

『お前を助ける理由が、我にはない』

そう言い放った時の彼の絶望的な顔。
少しお嬢の気持ちが分かるような気がした。

『まぁしかし、我もお嬢より酷ではないからな。何なら楽にしてやってもいい』

ゆっくりと男に近づきながら、シャドウは牙をちらつかせて言った。

『噛み砕かれるのが良いか、そのままが良いか』

「へっ?」

次の瞬間、シャドウはその大きく裂かれた口で男を包み込んだ。

鋭く尖った牙が、彼の体に突き刺さる。

「ぎっ! やぁぁっ!」

あまりの痛さだったのか、男はバタバタと暴れ始めた。

『あまり暴れるなら、噛み砕くが……いいのか?』

噛み砕く。その言葉に、彼の体はすくみあがった。

『ククク、いい子だ』

抵抗の少なくなった獲物を、徐々に喉の奥へと滑らせていく。
シャドウが口を動かす度に品のない涎と血がぼたぼたと垂れ落ちる。

「いや、まだ……死にたく……」

『もう遅い』

口からはみ出していた男の足を最後に一気に吸い込み、そして、生々しい音をならして飲み込んでしまった。

「〜〜っ! ーー!!」

飲み込まれて男の声が、シャドウの膨らんだ喉からくぐもって聞こえてくる。
月が怪しく赤く光る、ある日の夜のことだった。












『お嬢、ただいま帰りました』

すっかり重くなった腹をして、シャドウは森の奥にある小さな小屋の中に入っていった。

「もう、待ちくたびれたわ早く夕食にしましょう?」

『い、いやお嬢、たった今済ませてきたとこ――」

そう言おうとしたが、シャドウはカレンの鋭い視線に言葉を失った。

「……私の手料理が食べられないとでも?」

『いえ……滅相もありません……』

「なら早く準備して。今日はご馳走よ!」

さっきまでの凄まじい目力が嘘のように、目をキラキラとさせて、カレンはキッチンへと入っていった。

『…………ハァ……』

「ほらシャドウ! 手伝って!」

キッチンから聞こえてくる魔女の声を聞いて、シャドウは急いで向かった。

腹が、さっきまでより重くなったように感じたのだった。


というわけで、読んでくれてありがとうございました♪
なんかこの二人すごい気に入ったので、またこの子達で一作品作るかもです。
そういう意味でも、ぐりちゃんリクありがとうございました(●^o^●)

さて、リクエストもだいぶ消化してきました。
あと少しですw

次回作もよろしくお願いします(#^.^#)
ではヽ(^o^)ノシ
<2012/09/17 10:34 ミカ>
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