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ICE AGE - 旧・小説投稿所A
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長官への慈悲は欠片も無く、華奢な体へ分厚い舌を押し付ける氷竜。唾液にまみれ、咳き込もうとするが口に入るのは口臭と舌肉のみ。
たかが人間の抵抗など、あろうと無かろうと同じだった。
「…ぅぶぅ…や…やめぶ……うぐぅ…」
「…不味いなお前……」
氷竜はいまいち不満だったらしく、ムッと顔をしかめる。しかしネトネト状態の長官にとって、それは微かな希望の光だった。
「(…もし上手くいけば………食われない!)」
人間だろうが竜だろうが、好物不好物はある。もし自分がこの竜が嫌がる味で…喰う気を失えば……
「そ、そうか……は…腹壊したら困るな…?」
「む?…ああ………」
長官はおののきながら、密かに話を曲げていく。全ては生き延びたいがため、それだけだった。
「そ、そういえば私…最近風呂に入ってなかった………ハハ…」
「…そうか。」
毎日欠かさず入る綺麗好きだが、TPOを考えなくてはならない。氷竜は不審そうに顔を歪めた。
「つまり私は……あまり食べない方がいいと…」
「……!!」
これは失言だった。長官は慌てて口を塞ぐが、出した言葉は帰る訳が無い。
……涎垂らした竜の前で、「食べる」と口走るなど、「食べて下さい」と頼むのと同義だ…………
「……要するに助けてと言いたい訳か…」
「ひ…いや、だから……その…」
氷竜は浅い罠に気づき、出しっぱなしの舌をしまう。
「不味いんなら味わわずに呑めばいい……そんな事も分からないか?」
氷竜はギクリと怯える長官の襟をひっつかむと、暴れる足を口にくわえ、アグアグと顎を動かす。
長官は何もできず、ただ自分の脚が湿っていくのを感じていた。胸までが口内へと押し込められ、非常に気持ち悪い……
「い、嫌だ!助けてくれっ…!!お願いだ…」
「……私を騙そうとして生きられるなど、浅はかすぎるな……大人しく我が胃へ行け。」
不味い体を舌が包み込み、肩から上も口へと引き込む。長官の視界にはテラテラした糸柱や奥へと続く洞窟が映され、その向こうには………
ゴプリ……ググ…ンギュム…
「ああ……そんな…」
濃厚な喉が足先にあり、間もなく落ちてくるであろうご馳走を、蠢きながら待ち構えていた。柔らかそうで…かつ屈強そうで……落ちたら一巻の終わりだろう。
「怖いだろうなあ…?へへ、もっと遊んでやってもいいんだが…」
「落ち……や、駄目だ……やめろ…」
「風呂入らないで不味い奴なんか、弄んでもつまらねえ…」
嘘は裏目に出て、無形の恐怖感となって長官を襲う。今更弁解を計っても勿論無意味……何もかも手遅れだった。
ズプニュ……ゴッ…グププ…
「し、死にたくな……!!!嫌だって…!う、うわああああっ!!」
足が蠢く喉へと埋まり、ゆっくり食道へと連れていかれる長官。かかってくる喉圧に叫びを上げるが、誰も助けは来ない……というか来ても助けられない。
ぶよぶよした喉肉によって圧縮されながら、体はほぼ強制して呑まれていく……ぐよぐよと抵抗を許さない力に逆らえず、そして…
「頼む………!!い、命だけは…あああっ!!」
…ゴキュン…♪
氷竜は薄らと微笑みながら、大きな音を立てて呑み下す。自分の肉管の中を意味無くもがきながら落ちていくのを見るのは、彼にとって至極の悦楽だった。
「安心して溶けるんだな……仲間もすぐに入れてやるよ。」
余りに残酷な顔は、滴った唾液の水溜まりに映り、氷竜本人にも見える。
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<2011/05/15 15:14 ロンギヌス>
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