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【保】旅は道連れ − 旧・小説投稿所A

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【保】旅は道連れ

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心地よい風が流れる草原の木陰に
すやすやと寝息をたてて眠る一匹のワニノコ・・・

「ねぇキミ、ちょっと起きて・・」

ワニノコの耳に入る 優しそうな声・・
ゆっくりと目を開いてみる・・・

「ん・・・・・・・わっ!!?」

ワニノコは 声の主を見るなり あわてて後ずさった

目をこすって もう一度よく見る・・
ワニノコの目に映った 声の主は・・・

固そうな翼、太い割に柔らかそうな尾、ぽってりと突き出た腹・・、
そして 綺麗な桃色の体・・・
一言でいえば・・・ピ、ピンク色の・・・カイリュー・・?

「ごめんごめん、驚かせちゃった?
 コホン、では気を取り直して・・そこのワニノコ君!」

「な、なんだよ・・・」

いきなり呼ばれ、警戒しつつも 返事をする・・

「君には これからの旅の仲間 第一匹目となってもらいま〜す♪」

「・・はぁ・・・? 旅? なにそれ・・・?」

「実はだね・・、話すとほんのちょっと長くなるけど・・・

 僕も数日前までは 普通の色のカイリューだったんだけどね、
 この前 遊び半分で キュウコンの尻尾を触っちゃってね・・」

「キュウコンの尻尾? なんで?」

「ほら、キュウコンの尻尾を触ったものには たたりが降り注ぐって言い伝えがあるでしょ?
 それを確かめようとしてね・・・
 そんで キュウコンのヤツが たたりだ何だとか言って 僕の体を こんな色にしてったってわけ」

「ふぅん・・それで今は そのキュウコンを見つけるために旅してるってことか・・・」

「そゆこと♪」

「それにしてもそれ、たたりって割には 軽すぎやしないか・・・?」

「僕はこれでも 十分嫌なんだけど・・」

「・・あ そう・・
 で、なんでまた オレがお前の仲間になんなきゃいけないんだよ・・」

「だって 独りじゃ 寂しいし・・
 それに 旅は道連れって言うでしょ?
 仲間がいたほうが楽しいと思ってさ、
 それで 探してたら ちょうど君がここにいたってわけなんだ♪」

「い、嫌だよ・・・」

「・・・え?」

「嫌に決まってんだろ・・
 なんでオレがそんなこと・・・」

「あ、そう、じゃあ・・・」

急にカイリューの表情が変わった・・
同時に辺りの空気が冷たくなったように感じる・・
なんだろう この静けさ・・
さっきまで長閑だった雰囲気が 一変した・・・

「仲間になってくれないんなら 君には用がないな・・」

その言葉と同時に カイリューの腕が ワニノコを ガシリと掴み、持ち上げた・・

「な、なにをする気だ・・」

「言っただろ? もう君には用がない・・
 僕の昼食にでもなってもらおうかな・・・」

「・・え・・それって・・まさか・・」

カイリューが 口を大きく開いた・・
ワニノコの目には 鋭く尖った歯と 暗い喉の奥が映った
自分が今からどうなるのか ワニノコには十分すぎるほど予測できた

「ま、待て!! 待ってくれ!!
 わ、わかった・・! 一緒に行きゃいいんだろ?
 わかったからやめてくれ!!」

「うん、それでいいんだ♪」

カイリューは また笑顔に戻り、ゆっくりとワニノコを降ろした・・・



<2011/12/22 22:20 闇銀>消しゴム
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