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【保】神々の戯れ〜初めて出会った日〜 − 旧・小説投稿所A

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【保】神々の戯れ〜初めて出会った日〜

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九州のとある山の中の獣道。
そこを一匹の兎が駆けていた。
といってもただの兎ではない。
賢明な読者の皆様方には大方予想はついているであろう、あの月夜兎である。
いつもよりも立派な白い狩衣を身に纏っているところ以外はいつもと変わらなかった。
月夜兎は水神が住まう岩山に到着すると、ピョンピョンと軽快に跳躍していく。
そして入り口に着いた月夜兎は扉代わりの大きな岩に向かって叫んだ。

「おーい、水神いるかー?」

すると数秒もしないうちに巨大な岩が動き、中から水神が顔を見せた。

「あけましておめでとう〜。うわっ、寒ッ!早く中に入りなよ」

水神はそう言うなり月夜兎を鷲掴みにし、そのまま中へと引きずり込んだ。

「しかしこの冬は雪が多くてまいるな」

「そうだねぇ。関東地方を除く地域の水を司る神様はみんな頭を抱えてるみたいだよ。まあ私もそのうちの一人だし」

洞窟内でも広くなっている場所、居間に着いたので水神は月夜兎を降ろした。

「ここに来るまでに体が冷えきっちまった」

「雪が降ってたもんね。そうだ、今ちょうどお湯を沸かそうと火にかけたところだったんだけど、今ならまだお風呂ぐらいの温度かも。入ってみる?」

「そりゃいいな。入るよ」

水神はお湯を小さな鍋(あくまでも水神サイズでの話であって、月夜兎からすれば特大サイズの釜である)に移す。
月夜兎は服を脱いで、その中にザブンと入った。

「湯加減はどう?」

「ちょっと熱いかな。まあでも大丈夫だ、問題ない」

月夜兎はゆっくりと息を吐き、辺りを見回す。

「今更言うのもなんだけどさ、何か前よりもここ広くなってない?」

「うん、広くなってるよ。ほら、少し前に岩山ごと私が壊しちゃったじゃん。あの時修復するついでにちょっとリフォームしたんだ。おかげでもう体を中途半端に縮めなくてすむようになったよ」

なるほど、と月夜兎は小さく呟く。

「ねえねえ」

今度は水神が月夜兎に話し掛けた。

「何だ?」

「そういえば私たちが初めて会った日も、今ぐらいの時期のこんな感じに雪が降る日だったよね?」

「初めて会った日、か。言われてみると確かにこんな感じの日だったなぁ」

二人はその日の記憶を頭の中に呼び出した。



<2011/12/05 23:07 とんこつ>消しゴム
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