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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 反抗期 −
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「マスタぁ、面白い顔して〜?」

「えッ!? こ、こうか!?」

「そうそうw 写メ撮っちゃお」

「バ、バカやろ…ってかそれ俺の携帯!! カ、カムバァーーック!!」


買い換えたばかりの大型液晶テレビの前で、携帯を奪い合うロンギ
ヌスとカイオーガ。当然のようにカイオーガが栄光の勝利を掴み、
敗者は彼のお腹の下敷きになっていた。


「お、降りろォ…し、死ぬぅ……ギャッ!(グキッ」

「…あはは、このケェチ♪」


カイオーガは悪さをした猫でも摘み上げるように、ロンギヌスを
自分の背中の上に放り投げた。つるりとした青い肌に不時着し、
ロンギヌスは万歳の格好で寝そべる(強制)。


「…うおお…今更だけど、お前ウォーターベッドみたいだな」

「いやぁ…これでも水ポケモンですから(笑)」

「な、なにをしてるの? あなた達….」


昼食を終えて入って来たレムリアが、不思議な戯れ合いをしている
彼らを見て固まった。それだけならば良かったのだが、問題は彼女
が隣にギラティナを連れていたという事だ。仲睦まじい二人の姿を
見た瞬間、彼は石像のようにカチンと硬直する。


「…..お忙しい中申し訳ないがマスター、それ以上カイオーガと肌を
密着させた場合は…...スライスするぞ」

「まあまあギラティナ、寛容な精神を持とうじゃないかw(お互いに」

「………まぁ、いいか…」


カイオーガを溺愛するギラティナが、マスターに何のお咎めも無し
というのも珍しい。もしこれが見知らぬ男だった場合は、スライス
どころか細切れミンチ肉にされた後、ジューサーに掛けられて下水
道に流されるだろう。






「あれ、よく考えれば今日バビロン見てないな」

「あ、そういえば…...」

「また新作のメモリでも造ってるんじゃない? よく創作意欲が尽き
ないわね」

「好奇心だけは小学生並みだからな、あいつ」


鬼の居ぬ間にと、口々にバビロンが話題に上げられる。
しかしその会話中の空気を変えたのは、新幹線のような勢いで飛び
込んできたラティオスだった。ハァハァと息を切らし、赤い左眼を
ギラギラさせながら喋ろうとしている。


「お、落ち着け、落ち着くんだラティオス。はい深呼吸〜….」

「…ッテ….はぁ…はぁ…ビ….けて….」

「何だって?」

「テレビ! テレビ点けて下さい!!! 早く!」


そう指示されるがままに、リモコンに最も近いレムリアが『電源』の
ボタンを押した。大画面に映しだされたのは、どこかの会社の記者会
見だった。しかし大勢の記者に囲まれている社員の制服は、ロンギヌ
スにも見覚えがあった。視線が、画面の左上のタイトルへと移動する。



ーー バイオリック社 突然の記者会見 『LIVE』 ーー



「バ、バ、バイオリック社だとぅぅぅ!!!!?」

「シッ、黙って!」


絶叫するロンギヌスを胸に抱き寄せ、ムグッと口を塞ぐレムリア。
そこから先はおよそ五分間、全員が社員のセリフに耳を傾けていた。



ーーーーーーーー


社員「えー先ほど申し上げました通り、我が社はこれより一定期間、
一時的に閉鎖することに決定致しました。詳細は後日、改めて記者会
見を開く所存であります。」

記者「イッシュテレビの山崎です。世界を股に掛けるバイオリック社
が一時的とはいえ、閉鎖するとなれば多大な影響が出るのでは?」

社員「質問には一切、お答えできません。ただ一つ申し上げられるの
は…..今我が社が、大変重大な問題を抱えている、という事だけです。
詳しくは後日」


ーーーーーーーー



・・・・・・・


LIVE中継が消えてアナウンサーが再び顔を出すまで、誰一人として
鼻息すら荒げなかった。ただその場にいた全員が意識したのはただ一
つ、今朝から顔を見せないバビロンだった。




「…あいつ…...まさか……」


たいして成績が言い訳でもないロンギヌス。しかしその分、直感は
人一倍の鋭さを持っている。彼の脳裏を走り抜けた、とある疑念……
その疑念が確信へと変わるとき、ロンギヌスは椅子を蹴倒した事
にも気づかず、突風にようにリビングを後にした。





ー 別階 バビロン専用ラボ ー


「バビロン!!?」


ノックもせずに扉をこじ開けると、中は誰の気配もなくただ
静まり返っていた。シーーンという音さえ聞こえてきそうだ。
ロンギヌスは足の踏み場もないほど散乱している工具を乗り越
えると、昨晩彼と話したパソコンの前に辿り着いた。待機ラ
ンプすら点いていないため、電源は落とされているようだ。


「(電源ボタン電源ボタン……あっ、ここか)」


流石は人工竜が愛用しているPCだけあって、起動も非常に速い。
メニュー画面が表示されると、ロンギヌスは早速メールの送信履
歴を開いた。パスワードが設定されていなかったのは、幸いだった
と言えるだろう。


「メール送信….昨日の夜が最後か…..…….ん?」


メル友を作るような性格ではないため、送信箱には十件ほどしか履歴
が残されていなかった。しかしその最後に送信されたメールにはクリ
ップのマーク。すなわち……添付ファイルがあった。


「あいつがわざわざ添付? いったい何を……」


送信先を示すスペースには、なんと「バイオリック社」と表示されている。
その上本文の欄には、たった一つの句読点すら打ち込まれていない。
添付ファイル…..ただそれだけのメールだ。





ーーGo to,let us go down, and there confound ther language,that they may not understand one another's speech.


「えっ…!!?」


脅迫文のような文面が、ファイルを開いた瞬間、パソコンの画面一杯
に映し出された。その内容を読み終える間もなく、事態は一変した。



UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA
UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA
UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA UTOPIA


「うわっ…!!」


血のような赤文字の羅列が、突然のアラームとともに画面を埋め尽く
した。ロンギヌスが操作しているパソコンだけではない、この部屋に
存在する全てのモニターに、「UTOPIA」の文字が大量に浮かび上が
っている。


「…ま、まさか….ウィルスが…?」


異様な光景は、それだけでは終わらない。なんとウィルスに汚染
されたパソコンのディスプレイから、赤い液体がポタポタと染み出
しているのだ。高い位置にあるパソコンから滴った液体が、彼のオ
リジナルメモリの上にピチャッと落ちた。


…ギギッ…ウィイィゥン…!!

「嘘だろ……」


メモリが使用者の手を借りる訳でもなく、勝手に起動したのだ。
独壇場でダンスを踊るように、テーブルの上をのたうち回るメモリ。


「こ、これは……」

「マスター!!」


襟を背後から思いきり引っ張られ、ロンギヌスは首が飛んでいくかと
思った。その強い力に持っていかれ、ラボから強引に連れ出されてし
まう。



ーーー


「ゲホッ…ゲホッ….ラ、ラティオス? 何すんだ!」

「マスター、貴方の目は節穴ですか?あの赤い液体、コンピュー
タウィルスなんですよ? バビロンさんが作成した」

「バビロン…が…?」

「そう、そしてその悪質なウィルスが隠れていたのは、バイオリッ
ク社に宛てたメールの中。これがどういう事か、分かりますよね」

「…じゃあまさか……バイオリック社が活動停止した理由って…」

「…バビロンさんにそのウィルスを送り付けられたからですよ。
きっと記者会見の裏側では、大混乱になってるでしょうね」


それが真実なのか、まだまだ信じ難い点もある。しかしこれを越える
仮説は、もはや立てられそうになかった。



「とにかく、リーグを完全閉鎖した方がいいな。クォークまで乗っ
取られちゃ溜まったもんじゃない」

「…意味があれば、ですけどね」

「ど…どういう意味だよ….」


ラティオスは廊下にクシャクシャになって転がっている、薄汚れ
た画用紙を指さした。ロンギヌスは額にしわを寄せ、そっとそ
れを手に取る。うっかり破らないように注意深く、丸まったそれ
を広げた。


「こ、これって…!!」

「コンピュータ史上初でしょうね。生物にまで影響するウィルスなんて」


バビロンの手で描かれたものに違いない。バクテリアのような図、
そして細かい字でびっしり書き記された文章や計算式。どう見ても
明らかに、例のウィルスの設計図だ。


「せ、生物にまで影響って…どういう意味……」

「それに書いてありますよ。このウィルスに汚染された生物は、
腸を焼くような痛みに苛まれる。そして自殺しようとするタイ
プ、相手を捕食しようとするタイプもあるようですが…」

「そ、そんな……」

「早い話、狂ってしまうんですよ。このウィルスに感染されたものは」


そんな危険極まりないウィルスを送られた、バイオリック社の現状。
想像するだけで、吐き気を催す程だった。社員同士で殺し合い、仲間
の喉にかぶり付き、屋上から身を投げる者さえいるに違いない。


「おまけに感染力は、独自のメモリで強化したそうです。一度
でもウィルスに接触したコンピュータや生物は、例外なく感染
してしまう……そして…」







ーーーこのウィルスを、UTOPIAと名付ける バビロン



「…ユートピア….理想郷ですか….」

「そりゃこんなウィルスに侵されたら天国にだって行けるだろうよ」


冗談を抜かしている場合ではない。目の前のこのドアの向こう
は、悪魔的なウィルスの巣窟、地獄なのだ。このリーグを、
その地獄に飲み込まれる訳にはいかない。ロンギヌスは心が動
くより先に、中央制御室へと疾走していった。





ーーーラボに残された秘密を、ロンギヌス達が解き明かした頃・・・

とある高級マンションの一角で、震えている男がいた。彼の目の前
に立ちはだかっているのは、この大騒動の引き金となった張本人。
話すまでもなく、バビロンだった。


「ひ…ぅぅ……」

「なかなか良い住まいじゃないか….大家族だしな」


彼が通ってきた廊下には、五人のSPが糸を失くしたマリオネッ
トのように倒れていた。塵一つ落ちていない部屋の隅に追い詰め
られ、ヒィヒィと喘ぎながら命を乞う男。その彼の目の前で、バ
ビロンは満面の薄ら笑いを湛え、ぽっこりと腹を膨らませていた。


「現バイオリック社社長、レヴァ=マスカレイド。本社が大変
な騒ぎだというのに、自分は自宅でコーヒー? いい御身分じゃ
ないか….羨ましいよ」

「お、お前か….我が社の名を騙る…裏切り者とは…!!」

「フフッ…….騙りたくもないが」

「あ…ひっ…ヤメテ……ご、ごめんなだい…!!!」


バイオリック社のエンブレムが描かれた右腕で、レヴァを天井付近
まで持ち上げるバビロン。裕福暮らしで筋肉の失せた腕で暴れるも、彼の「たかいたかい」には抗えない。


「お前らは傲慢すぎた….世間に己の技術力を見せつけたいが為に、
ついに自我を持った竜まで造り出した。それを部下のように扱い、
無給で従わせ、いざ反抗する者には『親』として威張りくさる」

「ぐ…苦じい……降ろぜぇ…!!」


鋭く尖った牙の一本一本から、ねっとりした唾液が垂れている。
それを故意に見せつけるように、バビロンはグパァと口を開いた。
レヴァの足の下に、巨大な肉洞が姿を現す。


「た…食べるの…だけはぁ…!」

「…...『商品』を甘く見ない方がいい。お前が一番よく承知の上だ
ろうが、私は頭が良い。何しろ……」









「天才的な一流企業に造って頂いたからなァ….感謝しますぜ?」

「あ…ぁぁぁあああああああっ!!!?」


彼がレヴァを呑み込むのに、時間は十秒と要さなかった。頭か
ら羽毛布団のように肉厚な舌に丸め込まれ、腰は牙の門をあっと
いう間に通りすぎた。ぬくぬくとした部屋の空気から一転、蒸し
暑いほどの湿気に覆われた体内へ送り込まれる。


ゴクッ・・・


人間が咀嚼した食べ物を飲み込むときの「ゴクッ」とは大違い。竜
が人間を生きたまま呑み込むとなれば、隣の住人にまで聴こえそう
な「ゴクッ」だった。本日三回目となるその重低音に、バビロン自
身が酔いしれる。


「フフ……いよいよ反抗期かな? 私も」


幼児のように零してしまった涎を、ベロリと舌で舐め取った。元
の大きさに戻るはずだった腹部が、またボテッと膨らみ垂れてい
る。そこに耳を押しつければ胃壁が獲物を押しつぶす音が聴こえ
るだろうが、もうこの部屋に、それが出来る人間は一人もいない。



「….まだ暴れたりないのか?」

「・・・・・・・」

「…え? なんだって?」


ーーー自分の腹の中で、獲物が悶絶してくれているこの感覚。
バビロンにとっては、これが嚥下の瞬間と並んで大好きだった。
支配感に悦びながら、バビロンはゴロンとカーペットの上に寝転
がる。



ーーーーー



ぬぷッ…くちゅ….ぶよぉッ…

「あっ!! アアッ!! 出せ! うぅ…ああ……」


もこもこと揺れる肉壁に覆われた、バビロンの体臭が充満し
ている胃袋。レヴァは消化の恐怖に怯え、毛が逆立つような
臭いに悶絶しながら、立派な体操座りでその中に押し込めら
れていた。


「ぐぁッ….誰か….誰か、いないのか!!?」


先に呑み込まれたSPの姿は、もう骨すら見当たらない。自分が
喰われる際に、バビロンの腹が元の大きさに戻っていたのはその
せいだろう。


むにゅッ….ぬぷぁ….くちゅ、くちゅゥ…


「揉みしだき」というと妙にイヤラしいが、正にその通り。レヴァ
の毛穴とい毛穴を愛撫するように、胃壁の責めはとことんイヤラし
いものだった。豊満でぷにぷに、指で押せばぶよんと返してくるよ
うな肉壁に、悪臭と粘液をたっぷり擦り付けられる。

しかし広い世界には、「被食フェチ」と呼ばれる人種もいるらしい。
舌や胃壁など、捕食者の体内器官に触れることに快楽を見出し、ハァ
ハァと興奮の声を上げる。そんな異常な性質を持った人間たちが、チ
ラッとレヴァの脳裏をよぎった。




「出してくれ….あぅ…お願い…..」


レヴァは喘ぐような息を繰り返しながら、執拗に圧迫してくる胃壁
と格闘している。まるで世界で一番布団を被り、その上から他人に
のし掛かられ、くすぐられるような感覚だった。

大袈裟に言うなら息子の腹の中で、刻一刻と迫るトロトロタイムを
待っていた。そしてそれは、レヴァが想像するよりずっと早いタイ
ミングで訪れる。


タラ〜ッ…ぴちゃ….ぴちゃ…

「や…めろ….頼むぅぅ!!」


タンパク質を血肉へと変える胃壁から、ドッと黄色っぽい液体
がにじみ出てきた。それは艶のある肉の壁を自然に流れ落ち、底
からなみなみと満たそうとする。胃液の雨はあっという間に、腰
まで届くプールを作り上げてしまった。


「ま、まずい….ひぃぃ!!」


溶かされるのを恐れ、首を狂ったように振り回して逃げ道
を探す。そしてそれは、拍子抜けするほどあっさり、そ
れも自分のすぐ側に見つかった。胃壁と胃壁の間にできる、
肉同士が密着した深い谷間。手で無理やり押し広げれば、
何とか大人一人は入り込めそうだった。考えている余裕は
ない、辺りを満たす胃液プールの餌食になる前にと、レ
ヴァは躊躇うことなくそこに身を押し込んだ。


むちゅッ……ぶにゅん。







「ウッ….な、なんて臭いだ…」


こんな異臭に耐えろと言うのなら、まだ鼻を切り落とした方がマシ
に思える。本来の胃袋とは比べ物にならない窮屈さに、レヴァは窒
息死も恐れるようになった。この地味に柔らかい肉壁に挟まったま
ま、圧迫感に悶えながら死ぬ……そんな最後はお断りだった。

しかし文句は言えない。随分と深くまで潜り込んでしまったのか、
胃液がシュウシュウと唸る音はかなり遠くに聴こえた。つまり決心
出来ずにまだ胃袋にいたとしたら、自分のドロリッチフォルムを嫌
でも見る羽目になっていた筈だ。


「だがそれも….時間の問題か…」


胃袋から胃壁の隙間に逃れたとしても、バビロンの腹が膨らんで
いるのに変わりはない。何処に逃げ道を見つけようとも、結局は
彼の体内なのだ。さらに彼に命乞いが通用しないのは、火を見る
より明らかだった。


ぶぅちゅ…ググッ….

「あっ…な、何を…」


蕩けたはずの獲物がまだ生きているのを、胃袋が認識したらしい。
逃がしはしないと言わんばかりに、元より狭い空間はさらなる閉塞
感に包まれた。


むにゅ…むにゅむにゅッ…もにゅもにゅ…

「アッ…あぅ…き、気持ちいい…?」


なぜ疑問文なのかは、レヴァ本人にも分からない。
ただ一つはっきりしているのは、胃壁のマッサージが少し快感
に感じるほど、優しく温かくなったという事だ。今までの責め
が、まるで嘘のように。




・・・・・・・





「胃壁の谷間で、揉み殺される」
これがどんな死に様なのかは、皆さんの想像力にお任せしよう。





<2011/10/12 11:52 ロンギヌス>消しゴム
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