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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− いざ、戦場へと −
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「ルギア…….ゼクロム………ジュカイン…!!」


カイオーガのこんな表情は初めて見た。ギラティナに出逢ったときも歓喜していたが、どうやらこのジュカインは特別な存在らしい。

ただ再開を喜んでいる彼の顔には、明らかな「後悔」が影を落としていた。第三者の目から見ても一目瞭然だ。頬から落ちている涙も、嬉しさと悲しみという二つの意味。



カイオ「…ごめんね……..僕が君を…あのとき君を……」

ジュカ「いや…もう気にしてないしw だいたいお前は、俺の望みを叶えただけだろ?

カイオ「そうでも…..馬鹿だったんだ…僕が……」

ジュカ「……いいからほら、顔を見せろって!」


カイオーガは飛び起きたように顔を上げ、目の前の死んだはずの旧友を見つめた。全力で涙を堪えているのが丸見えだ。そして・・・・





「…….おかえり…!!」

「また会ったな!」



==========



ルギア「カイオーガもギラティナも…元気そうで何よりだ」
ゼク「おお。特にギラティナ、なんか性格変わったよな」







ルギア「それで….君がカイオーガのトレーナーなのか?」

ロンギ「え? うん。あっ……」


ロンギヌスは、何の躊躇いもなくそう言ったことを激しく後悔した。カイオーガならいざ知らず、初対面の伝説のルギアにタメ口。おまけに軽蔑的な細い目で見られたので、ますます血が青くなったような気がした。




ルギア「フフ….なかなか肝が据わってるようだ。私はルギアだ….宜しく」

ロンギ「あッ…!」


まさかと期待はしたが、それは現実のものとなった。
ルギアが重いのか軽いのか分からない翼を広げ、抱き締めてくれたのだ。水色のお腹に顔どころか前半身ごと押しつけられる。

……ちょっとというか…….異常に気持ちいいのはなぜだろう….


ルギア「それで君が・・・」

ロンギ「(ち、終わりか)」


海の守護神に抱かれたのに文句を言う、自分が一瞬憎らしく思えた。ルギアはラティオスやギラティナと世間話をした後、ようやくまたこちらに向き直った。


ルギア「まあ挨拶はこのぐらいで止めておこう。五年振りの現世を楽しめるような状況では……なさそうだな」

ロンギ「じ、実はそうなんでs」
カイオ「えっとねー・・・?」


事態を説明する係りを、あからさまにカイオーガに奪われた。ルギアさんの話し相手は俺だっつの。


しかし数分後、カイオーガの説明に区切りがつくと・・・・



ルギア「つまりここからはロンギヌス殿の指示で動けということだな?」

ロンギ「(え?)」
カイオ「そうゆーこと♪」


意外にも、カイオーガがリーダー権を返してくれた。ここは微かながらも威厳を見せなければと、演出感ありありの咳ばらいをする。それを遠くから見ていたギラティナに、クスッと笑われた。あの野郎・・・


ゼク「今聞いた話じゃ、敵は裏のカイオーガとアルセウス、ゲーチスだって? なんであいつが復活してるんだよ….」

ルギア「フフ…また私の血肉にされたいらしいな…」


ルギアの唾液が白い顎をつたって床に滴った。

『それは俺です!』と叫びたい衝動に駆られたが、恥を忍んで欲望を抑えこむ。ルギアの褒め称えたくなるほどのお腹に目を奪われつつも、時間もないので戦略を伝える。



==========

ペア:
ルギア&ロンギヌス

あとは適当に

==========


ラティ「なんですか、この欲望のままのチーム分けはッ!!!」

ロンギ「わ、分かった! 書き直す書き直す!!!」

ルギア「ハハ……(笑)」



=======

ペア:
ルギア&ギラティナ
カイオーガ&ジュカイン
ゼクロム&ラティオス
ロンギヌス&バビロン

=========



ロンギ「どうだ、文句はあるまい!」

ラティ「・・・・・まぁ、いいんじゃないですか」

カイオ「ジュカィーーン!!! 僕ら一緒だね!」

ジュカ「あ〜….嬉しいんだか悲しいんだか….」

カイオ「君の味が十年前と同じかどうか、確かめてみよっか?」

ジュカ「じょ…冗談冗談。嬉しいに決まってんだろ!」


ハイタッチで歓喜する二匹を横目に、思わず溜め息が出てしまう。ルギアさんと組みたかったのに……

ふと腕時計に目をやると、すでに彼らの復活から十五分も経過していた。慌てて大声を張り上げ、そろそろここを出るよう促す。



ロンギ「さっ、挨拶はこれぐらいしとこう……流石にそろそろ出発しないとな」


包帯に巻かれたバビロンの元へと歩き、そっと腰を折って話し掛ける。今見ても、まるで傷の中に体があるようだ。こんな状態のまま無理やり戦闘に参加させるなど、出来るはずもない。


ロンギ「なぁ……バビロン。お前、闘うか? ここで休んでるか?」

「・・・・・」

「…おい……」

「….この闘いの引き金は私なんでね。その張本人が寝込んでますっていう訳にはいかないだろう」

「でもそんな身体じゃ….万が一….」


敵がどこに隠れているか、見当すらつかないのが現状だ。正直なところ、誰と闘うことになるかも分からない。戦力は一応揃ったにしろ、これではまるで大海原で敵国の船を探すようなもの・・・



「正味、自信が無いんだろう」

「えっ….?」


肘を額の上に置きながらも、赤い眼がしっかりこちらを睨んで笑っている。超能力者のような「すべてお見通しだぞ」といった曖昧さではない。心さえも計算で把握しきったような……



「フフ….私のペアは誰かと思えば、なんとマスターじゃないか。自信が無いんだろう? 私を守る自信がないから心配を寄せてやがる」

「な、何をそんな…!! お前の身ぐらい簡単に…」

「……やっぱり甘い。高校生が一朝一夕で倒せるほど、ここは脆い会社じゃない」
















「お前だって….俺を怖がらせて帰らせるつもりだろ?」

「ああ……バレてたのか(笑)」


カッコつけて片手でのバビロンを起き上がらせようとしたが、物理的に不可能なのを思い知らされる。ミシミシと痛む腕を押さえ、バビロンが自力で立つのを待った。



ロンギ「おぉ〜い、お待たせ。手分けして行くぞ」

全員「「「了解」」」


ドアに最も近いラティオスがノブを捻り、廊下の冷めた空気が流れこんでくる。身長の高いルギアを部屋から出すのに苦労した後は、誰もいないのを確認してギラティナがしんがりを務めた。




ロンギ「…ここからは全員、気持ち切り替えろよ。そう、まるでスイッチのように」

ラティ「マスターが一番切り替わってませんね」


ペアは四つに分けたものの、廊下の選択肢はふたつ、右か左しかない。じゃんけんの結果、ルギア組とカイオーガ組が右へ、俺らはゼクロム組と左へ進むことになった。ますますルギアさんと離れてしまうので、多少気が滅入ってしまう。

しかしトボトボと一歩目を踏み出した瞬間、自分の肩に手が置かれたのを感じる。いざ振り向いてみると、カイオーガだった。ジュカインを背に乗せて笑っているが、眼は真剣そのものだった。






「マスター………死なないでよ」



「….当たり前だ」


お互いに拳を突き出して、ポンと指の背をぶつけ合う。
ここから一歩でも踵を返せば、そこからは別の戦場。

死ぬ気など毛ほどもないが、カイオーガに背中を見せた直後、不安がチラリと脳裏を掠めた。




ーーーー今回、深傷を負ったバビロンの助けは期待できない。いやむしろ、自分がバビロンの安全を保障する覚悟でいなければ。

そう考えると、これは初めての経験。
自分が主戦力の、修羅場になるかもしれない。胸が震えた。






<2011/11/06 22:52 ロンギヌス>消しゴム
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