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『運命』の記憶 − 旧・小説投稿所A

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『運命』の記憶
− Water ART −
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「げえっ…! バビロンの奴、用心棒まで連れてきてやがる…」

広々とした調理場に、小さく設けられた小窓。ロンギヌスはそこから、
外の様子を双眼鏡でのぞき見ていた。リーグ全体が少しずつ、バイオ
リック社員の手によって支配されつつあった。


「ですがマスター…何でキッチンに瞬間移動したんです?
地下室とかもっとバレにくい場所もあるのに…」

「そーだそーだ…すぐ見つかっちゃうよー…」

職員が避難したあとのキッチンには、切りかけの刺身や、カゴに乗った
新鮮フルーツなど、山のように置いてあった。真新しい缶詰めも、テー
ブルの上に散乱している。


「いやー…地下室に逃げるつもりだったんだけど
意識が混乱してね。何故かここに…」

「…まさか小腹が空いたとかじゃ無いでしょうね?」

軽蔑と疑いの目を向けられ、慌てふためくロンギヌスをよそに、カイオ
ーガはパイナップルを丸ごと頬張っていた。果肉が砕かれる爽やかな音
と匂いに、思わずラティオスも食欲が生まれる。

「そういや私…朝食らしい朝食食べてませんでした…」

「…とか言いつつ自分も食いたいんだろ?」

「はい。それが何か?」

ラティオスは皮肉をバシッと跳ね返し、手近なリンゴを短い爪で切り
裂く。嫌味にもロンギヌスにその皮を放り投げ、レムリアには色も
艶も完璧にカットできたのを渡した。

「あら…ありがとう。」

「いえいえ、日頃のほんのお礼です。」

暗い顔ばかり浮かべていたレムリアの顔に、何とか喜びの表情が現れた。種族は違えどなかなかお似合いな二匹である。
一方ロンギヌスは、「これで首を締めて死にたい」ような顔で、
リンゴの皮をブラブラさせていた。


「マスターそんな顔しないでよー…ほら、あげる♪」

「……え…?」

カイオーガは果物パワーで気を取り直したようで、疲れ果てた顔は
いつもの童顔に回復していた。そんな彼から今、綺麗に切り分け
られた桃が手渡される…はずだったのに…






「いたぞ!!! 殺せ!!」

ドギュガガガガガ…!!!
カィン!! キュイン!! ドン…ドン!!!

「でぇぃ! 結局食えないのかよー!!!!!!!」

キッチンの入口から飛んで来る、弾丸の雨あられ。ロンギヌスは悔しさに
叫び声を上げながら、横っ飛びに調理台の陰に隠れた。被弾したマンゴー
やオレンジが、果汁を吹いて飛び散る。

「ったく…あ、あいつらは…?」

ロンギヌスはラティオスとレムリアが、自分と同じく調理台に身を潜めて
いるのを見た。カイオーガは早くも応戦しており、硬い鉄のフライパンで
攻撃を防いでいた。入口には、今見えるだけでも三人は銃を構えている。


「4対4か…でもメモリケースは台の上だしな…」

なんと悲しいことに、主力武器のメモリケースは、調理台の上に置きっ
ぱなし。急いで取ろうして顔を出せば、すぐさまハチの巣だろう。穴だ
らけになったまな板が、目の前にガタンと落ちた。



ドンドン…!!ドギュゥンドギュゥン…!!!
カァィン!! ジジッ…バキュゥン!!!!

「降伏しろ!! 今出れば命は保証してやる!!」

「保証かぁ…バビロンに貰わないと意味ないよね。」

意を決したカイオーガは、一瞬だけ調理台の陰から顔を出す。そのわず
かな時間に冷凍ビームを撃ち放ち、戦闘員の一人に命中させた。ついで
にメモリケースも、エスパーで自分の元へ引き寄せる。


「おいカイオーガ!! 何する気…」

「水芸だよ。面白いでしょ?」

カイオーガはそう言うと、ハイドロポンプを天井に向かって吐き出す。
エスパーで意思を持たせたそれは、透明感のある水の龍へと変身した。
戦闘員達がしめたと言わんばかりに銃を乱射するが、弾丸は龍を突き
抜け、反対側の壁に当たるだけだった。


「…シードラグーン…オーシャン!!」

カイオーガが戦闘員にヒレを向けると、海龍はゼリーのような身体を
くねらせ、指示通りキッチンの入口へと飛んだ。水を撒き散らしな
がら直進してくる龍に向かって、戦闘員は銃撃を止めない。


ドギュゥン…ガチャッ…!!

「し、しまっ…!!」

海龍の巨口を見る前に、その蛇のように長い身体に抱きつかれる戦闘員達。
抱きつくと言っても、もちろん愛の抱擁なはずがない。


ぎりぎりぎりっ…ギュゥゥ…!!!

「ぐぇぇ…この野郎…」
「離せっ…!! く、苦しいぃ…」

カイオーガの創り上げたウォーターアート。その水にしか過ぎない龍に
締め上げられ、戦闘員は呻きと悲鳴を漏らしていた。水圧に押し潰され
そうになり、息をする事すら許されない。


「さぁーてと…いただきます、だね♪」

捕食の許可を下ろされ、海龍は戦闘員に巻きついたまま大口を開けた。
まずは一人に頭から喰らい付き、水という柔らかい舌で舐めしだく。戦
闘員は狭い口の中で窒息の恐怖を味わいながら、粘性のない唾液の
餌食になっていた。



ゴクリ…

「$@?!/@:'d;83$;95&/@,":)-),'f!!!」

海龍はヒトの味を気に入らなかったらしい。口に閉じ込めてから10秒も
経たないのに、あっさり呑み込んでしまった。いや…あくまで水な
ので、「飲み込んだ」の方が正しいかもしれない。戦闘員が半透明の
喉を滑り落ちていく様子は、外からも丸見えだった。

海龍はもう一人も遠慮なしに飲み下し、主人であるカイオーガの元へ戻っ
ていった。滑らかな身体を少し膨らませたまま、スリスリと頬をすり付ける。


「えへへ…くすぐったいよ…でもありがとね♪」

グギャゥ…

役目を終えた海龍は本来の水へと姿を戻し、カイオーガの口に吸い込まれ
ていった。チュルッと体内に戻し終わると、カイオーガはロンギヌスの元へと向かった。



<2011/06/12 10:59 ロンギヌス>消しゴム
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