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ぼくのなつやすみ − 旧・小説投稿所A

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ぼくのなつやすみ
− 臭き舌の向こうに −
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潤いに包まれている、海龍の胃袋。
その胃壁は「海龍」という名前の通り、海を固体化させたように柔らかく、
そして心地よい涼しさが漂っていた。
むにっと指で突こうもの
なら、胃酸の代わりにシロップのような清水が染み出してくる。まさに水の楽園だ。


「うはっ….いい…ちょっと…気持ち…いいかも…」


署長が悶えると、それに合わせて胃壁もとぷん…ッと揺れる。
まるで透明な蒟蒻ゼリーの中に、無理やり押し込まれたような
状況だ。そんな柔らかさの極みである胃壁に、署長は次第に身
を任せるようになっていった。


ちゅぱッ….ぬちゅッ…ムギュッ…!

「ハァ…ハァゥ….ハァ…ハァハァ…!!!」


疲労が原因だったはずの荒呼吸が、いつの間にか「興奮」「快感」を
意味するものに変わっていた。海龍のトロッとしたエキスを呑まされ、ますます喘ぎ声が上達してしまう署長。

「水」に溺れるのは苦しみしかない。しかし「水」に弄ばれる快楽を知
ってしまった署長の顔には、力の抜けた笑顔が漂っていた。



むにゅ…ぷにゅ…ヌメッ….

「そ、そこ….もうちょっと、強めでお願いしま…」

「な〜に寝ぼけてんの」


顔を隙間なく覆う透きとおった胃壁の向こうに、部屋の壁より
も青い色が見えた。カイオーガだ。自分が創りだした海龍の腹
を、すぐ近くで眺めているらしい。


「楽しそうだね〜、もう時間切れだけど」

「ど…どういう……んゥッ!?」


穏やかで健康的(?)だった胃壁のマッサージが、突如締めつける
ように強くなった。胃壁に鼻の穴をむっちり塞がれ、署長はたま
らず空気を求めて足をバタつかせる。しかし海龍の豊満すぎる胃は、彼の蹴りを優しく受け止めるだけ……水は銃でもナイフでも、
傷一つ付けられないのだから。


「無駄だよぉー? ちょっと眠ろうかw」

「う….ぁ…ぁあッ….」


肺は酸素を欲しているが、鼻口が封鎖されていてはどうしようも無い。手柔らかに愛撫していた胃壁は、今やヒトでは太刀打ちできない圧力を署長の顔にぶつけていた。



酸欠で目の前はチカチカし、意識は混沌とした闇に呑み込まれていく・・・











===========





「………ハッ!」


三度目となる目覚め。目を開けた瞬間、スポットライトのような光
が眩しい。咄嗟に目を覆い隠そうとしたが、なぜか腕は言うことを
聞かない。

よく辺りを見回してみれば、まるで実験室のような光景。そして自分が寝かせられているのは、不気味な鋼鉄のテーブルの上。両腕両足はそこに取り付けられた手錠に、ガッチリ捕まっていた。


「こ、今度は一体…!!」

「……お目覚めか。ようこそ、私のバラック小屋へ」


閉塞感のあるラボに響き渡る、他人を皮肉ったような声。その主は揚げたてのポテトを口に咥え、不敵な笑みを浮かべたバビロンだった。


「….処罰の連続で息が上がってるようだが….フフ、私には無関係なのでね。たっぷりシゴかせて貰うぞ…」


バビロンは拳の関節をコキコキと鳴らし、実験台に身を乗り出した。
胃袋の異臭を彼に届けるように、はぁっと息を吐きかける。


「ぅ…や、やめろ臭い….」

「このまま今夜の夕食にできたら本望なのだが….マスターとの
約束もある。お前にやってもらいたい事は……二つだ。まず….」


猛々しい腕が、署長の胸ポケットへと伸びる。しかし本来ボールペン
のような小物入れであるはずのそこには、警視庁の命とも言える品が
入っていたのだ。


「フフ….これこれ」


バビロンはMDディスクを抜き取ると、手近なパソコンの読み
取り装置にそれを差し込んだ。たったそれだけで、署長の顔が
恐怖に蒼ざめる。

ーーーパソコンのディスプレイには、こう表示されていた。



Police Network Operating System
Ver1.0

(c)2009
パスワードを入力せよ:|



「…これは警視庁の管轄システム、OSのマスターコピーだな。
これを人質として頂いておくとしよう。もし今後我々に危害を
加えるような事があれば…」




「警視庁の全データを…ネット上に公開させてもらう」

「でも、き…起動用パスワードは極秘事項のはず…」

「フフ….私がなぜ、ロック付きの最上階に侵入できたと思う?
パスを解読したからだ」

「ま、まさか……やめてくれ、そんな事されては…!!」

「…なら大人しく泥棒猫でも追いかけてるんだな。
リーグ
との関連は最低限、いや….ほとんど無しにしてもらおう」


もう二度と私たちに関わるな、という事らしい。本来なら脅迫、
暴行、捕食の罪に問いたいところだが、こんな弱味を握られてい
てはどうしようも無い。署長は悔しさを噛みしめながら、小声で
「分かった」と呟いた。




「さて…お前のもう一つの仕事だが….」


バビロンは両手を腰に当て、 妙に嬉しそうに溜め息をついた。





「新型のメモリを開発したのだが….まだ動物実験の段階でね。
その名誉ある最初の被験者に….君になって貰いたいのだ」


釘やネジが散乱した机の上から、独自で造りだしたメモリを
持ってくる。それは漆黒の彼の手の中で、淡いライトブルー
に輝いていた。端にはしっかりと、「MADE BY BABYLO
N」の文字が。


「まあ見て頂こうか….ほれ」


バビロンは署長が横たわっている台の下から、一匹のネズミを摘み上げた。
そしてその実験用のネズミの背中に、ブスッと新品のメモリを差し込む。



ギギッ….ギ、グギュァァァアアアアッ!!!!!!!!!

「ヒッ….!?」


メモリが触れた箇所から、メコメコと巨大な肉の塊が湧き出て
くる。小さな眼は飛び出し、皮膚は裂け、触手がニュルニュ
ルと生え茂っていく。


「ああ….たまに不具合が起こるんだw(1/3の確率で)」

「こ、こんな危険なメモリの被験……で、できる訳がぁ…!!」

「ほう….お断りか?」


その答えを待っていたように、バビロンの口が満を時して開く。
酷い悪臭を放っている唾液が、ポタポタと署長の額にこぼれ落ちた。


「くっs…い、無茶苦茶だ…そんなの…」

「フフ….そういう苦情は、私の胃の中で喚けばいいだろう?」


バビロンは拘束具にカギを差し込み、カチャリと署長を解放した。
しかし反論する時間すら与えない。巨大な舌が暗躍している口の中
に、足先から詰め込む。


「あッ….ひ….ぁ…」


今更ながら、自分の靴も靴下も脱がされているのに気づいた。素足
の裏をレロレロと舐められた瞬間、署長の背中を悪寒が駆け抜ける。


「ヒァッ…!!」

「餓鬼みたいな声を上げるんじゃない….ま、無理だろうがな」

膝から下を包み込む、バビロンの体温。それはジワジワと這い
上がり、遂には腰さえも丸呑みにしてしまった。牙の門を通り
抜けると、例外なく唾液の洗礼を受けることとなる。へその
辺りが呑み込まれたと同時に、署長は足首が喉肉に挟まれたの
を感じた。


ぶにゅぶにゅ….アガッ…ぐちゅぅ…





<2011/09/19 19:09 ロンギヌス>消しゴム
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