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ぼくのなつやすみ − 旧・小説投稿所A

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ぼくのなつやすみ
− 情けなくて、ごめんなさい。 −
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ザシュゥゥッ!!!

「えっ…うあああッ!!!!」


ギラティナだった。暗闇の中でも問題なく翼を振りかざし、財竜を
肩から腰にかけてナナメに切り裂く。その弾みでダークネスメモ
リは財竜から強制的に排出され、パキィン!と甲高い悲鳴を上げて
砕けてしまった。



「カイオーガに触れるなら、私の許可を取ってもらおう」

「おっ…お前どうして….この闇の中で正確な攻撃を…」

「……幽界、反転世界、冥土。もっと絶望的な闇ならたくさん
見てきた。そんな私が、人工の闇を超えられなくてどうする」

「ゴ、ゴーストか….」


闇の中で自由に動けない幽霊など、探すのもバカバカしい。
ダークネスメモリの唯一の弱点は、ゴーストタイプだったのだ。
財竜は奥歯を悔しそうに噛み締め、肩からタスキのように掛かっ
ている血の跡を拭った。


「へェ….便利な仲間を持ってるね」

「…あ、やっぱりそう思います?」


財竜が新しい声に振り返ると、ラティオスが無数の隕石をバックに
待ち構えていた。高い瞬発力で避けようとするが、それを見越して
いたラティオスのテクニックには敵わなかった。ラティオスは財竜
が避けようとした方向へ、得意の「流星群」を霰のように撃ち込む。


「ぎゃあああああっ…!!!!!」


竜=ドラゴン
流星群=ドラゴンタイプ
つまり…..効果はバツグン。



「ウッ….く、くそ….」

「それじゃあ…お待たせ♪」


生傷まみれで横たわる財竜に跪き、カイオーガはニタァと
微笑んだ。そして過去に何人を潰したか分からないヒレを、
煌めく太陽にかざすように振り上げる。
殺人鬼として指名手配されているヤツだ、殺される…!
と財竜は目を瞑った。





「えいっ…!」

「ブッ…ブグゥゥゥっ!!!?」


ヒレは財竜のシアンのお腹に当てられ、グイッと心肺蘇生法
のように押し込んだのだ。不意を突かれたのと驚きとで、財
竜はたまらず口を押さえる。


「や、やべぼ….ぅうっ…!!」

「は〜い、それじゃあマスター吐き出そっか」


凄まじいパワーで腹を押さえつけられ、身の毛もよだつような
吐き気に見舞われる財竜。彼の体内では、胃袋がせっかく手
に入れた獲物を、仕方なく食道へ送り返すところだった。



「グフぅ…ウゲ….ェッ…!!!」


自分の意思で吐き出すならまだしも、他人に強制されるのは気持
ち悪いことこの上ない。しかしギュウギュウと腹を圧迫され続け
た結果、財竜の口から胃粘液にまみれたロンギヌスが登場した。
一時間も体内にいなかったはずだが、顔は胃袋の湿気と粘液のせ
いで、デロンデロンにふやけていた。


「あひっ…も、もうちょい強めでお願いしまs…」

「マスター、起きんしゃい」


カイオーガは財竜の唾液で濡れるのも構わず、ロンギヌスの頬を
ペシペシと叩いた。しかし胃壁堪能モードに陥っているためか、
一向に目を覚ます様子はない。そこでカイオーガは仕方なく……




「お腹を空かせたリオレイアの群れがやってきたぞ〜♪」

「…な、なんだと…?」


虚ろだった表情が、まるで宝物を見つけた海賊のように変貌する。
ピシャッと直立不動の姿勢で起立して、ロンギヌスはカイオーガ
の肩をガシッと掴んだ。


「…どこ!?」

「嘘だよ〜ん♪」

「なるほど、嘘か」









・・・・・・






ーーーーー絶望するロンギヌスが回復して一分後。



「へぇ…ギラティナのお陰か」

「うんっ! やっぱり大好きだよギラティナぁ〜♪」


有無を言わせずギラティナの頭部に襲いかかり、ギュムッと愛
情100%の抱擁を贈るカイオーガ。ギラティナは気恥ずかしそう
だったが、満更でもなさそうだ。


「で…問題はこの財竜だけど….」


ロンギヌスは戯れあう二匹から視線を移し、仰向けに倒れてボーッ
としている財竜を見つめた。あの何気に豊満なお腹にさっきまで入
っていたと思うと、再び被食フェチとしての願望がせり上がって来る。


「(せっかくだからもう一回…)」

「マスター、本心丸見えですよ」

「な、なぜ分かった!!?」

「顔にデカデカと描いてあります」


非常に残念ながら、ロンギヌスの計画はガラガラと割れたガラス
のように崩れ落ちた。やむをえず財竜に覗き込むように近寄った。


「…ぅッ…..ボクは…ボクは…」

「お、おい泣くなよ。俺が泣かしたみたいじゃんか(実際そうだけど)」

「任務を…任務を完遂….エグッ、できなかった….!!!」

「………」


若々しい青年の顔立ちを伝う、悔しさあまりの涙。それを拭お
うともしない財竜を見兼ねて、ロンギヌスはハンカチをポケッ
トから取り出した。しかし彼の両手には迂闊には触れないため、
とりあえず胸の上にそれを放り投げる。


「……?」

「警察官でも…いや、警察官だから泣けるんだな。涙を抑えられ
ないぐらい、任務に命賭けてるってことだろ?」


意外にも清潔なハンカチを手に取り、自責の念が流れ落ち
る眼に押しつける財竜。数回しゃくりあげ、疲労の溜まっ
た目蓋を静かに閉じる。




「………zzz……」

「また会ったら、食ってくれよな」


そう言い残した後、ロンギヌスは勝利に湧いている仲間の元へと
戻った。そしてバビロンとレムリアが駆け抜けていった道を、
かなり遅れてスタートする。



====================



そのバビロンとレムリアは、既に署長室が設けられている階へと
辿り着いていた。だが最も奥にある署長室までの道のりはかなり
険しい。侵入者用のレーザーが、真っ赤な糸のように廊下を埋め
尽くしていたのだ。


「どうやた上層部は…私たちに気付いたようだな」

「でも回線がストップしてるから部下には連絡できない….レーザー
で時間を稼ごうという算段かしら?」

「フフ….お前も読みが深くなってきたな」

「ど、どうもありがとう….」


上層部の意図は分かったものの、この網目のように張り巡らされた
レーザーを突破するのは至難の技だ。だかしかしレムリアには、レ
ーザーより気がかりな事があった。



「(さっきからずっと…私、バビロンにおんぶに抱っこね…)」


一回でもいいから….役に立ってみたい。最後の最後までお姫様
扱いされるのは嫌だ。自分だって、力になる為に来たのだから。



「ね、ねぇバビロン…」

「あ?」

「じ、時間は掛かるかもしれないけど….レーザーを発射してる機械、
あれを一個一個壊していくのはどう?」


レムリアが指さす先にあったもの。それは壁やら床やら天井やら
に設置されている、レーザー発射用の穴だった。あそこを塞いだ
り壊したりすれば・・・・



「ど……どう、かな…?」

「……はぁ?」

「わ、悪かったわね馬鹿げた考えで! そりゃ貴方ならもっと有効な
作戦、いっぱい考えてるんでしょうけど…」

「……いや? 何も考えてなかった。いいんじゃないか? その案で」

「えっ…」


スーパーコンピュータの彼が、あっさりと承諾した。発案者の
レムリアは唖然としているが、バビロンはなかなか乗り気のよう
だ。そして時間が押しているため、早くもそれを行動に移す。


「お前….『まもる』みたいな技、使えるか?」

「え、ええ…一応…」

「じゃあそれ使ってろ。危ないからな」


レムリアは命令通りに、シャボン玉のようなドームで自分を包み込む。
一方バビロンは両手を床に向けてクロスさせ、カッと目を見開いて叫んだ。



『クリアランス・ネットワーク!!!』


バビロンの皮膚という皮膚から、ライトブルーの光線が無数に解
き放たれた。その光線は壁や床に触れると反射し、レーザー網の
中をカキンカキンと暴れ狂う。そしてバビロンの光線がレーザー
の発射装置に命中すると、装置はボンッと爆発した。


「す、すごい….」


赤いレーザーと青い光線が交差する廊下。
まるで空間に、蛍光ペンで落書きしたかのようだ。

そして五分も経過すると、レーザーの発射機は全てバビロンの
光線に焼き壊されていた。



「…終わりだ。良いアイデアだったな、ありがとう」

「(えっ、今なんて…)」


ーーーーありがとう。
造られた鋼のような肉体から、その言葉が発せられるとは思いも
寄らなかった。レムリアは何気ない感謝の言葉に、滑らかなクリ
ーム色の頬をピンクに染める。


「…道は開けたな、行くぞ…署長室へ」

「ええ…い、行きましょうか」

「フフッ….どうした? 急に赤くなって」

「……早く行きましょう!!?」


怒鳴るようにそう言ったレムリア。
いつものせせら笑いを漏らすバビロン。
二匹は署長室にまっすぐ続いている廊下を、お互いの顔を見向き
もせずに突き進んでいった。





<2011/09/09 21:51 ロンギヌス>消しゴム
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