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『まもなく一番乗り場に１１時２８分発、大阪環状線内回りが八両で参ります。危ないですから黄色い線より下がってお待ちください。一番乗り場に電車が参りますお下がりください。』

「お、来た来たって・・・混んでるな・・・」

「乗れる〜？」

　トイレで唾液をふき取り、１番線までやってきたのはいいのだが、乗る予定の列車がひどく混んでいる。この混雑ではセルモスの巨体は邪魔になりかねない。
一本後の列車にしようかと考えていると２つ隣のドアから呼び声がした。

「お〜い、長谷川〜！！こっちだ、こっち！」

「おう、大平か」

　発車放送が流れ始めたのでセルモスをせっつきつつ移動すると、大平が車椅子スペースを確保してくれていた。セルモスをそこに押し込み、自分も乗り込むとタイミングよくドアが閉まる。

「ふ〜。ありがと。」

「いや〜。こうなるとは思ってたからな。確保しといてよかった。って寝るの早いな。セルモス。」

　見れば、セルモスがまだ最後尾に近い車両に乗っているとはいえ、ホームも抜けていないうちにＣ寝台を満喫しだしていた。幸い混んではいるものの、車椅子スペースのそばは人が少ないのだが・・・迷惑である。

「よって、蹴飛ばしの刑に処す。」

「痛っ！痛たた！も〜。いいじゃん！ちょっとぐらい！」

　本日二度目の叩き起こしに本人はいたって不満そうだが公共の場で寝るほうが悪い。

「はぁ、相変わらずだなお前ら。兎に角、例のモノは持ってきたか？」

「「勿論！！」」

　例のモノ。それはＰ○ＰとＭＨ○３ｒｄである。今回の主目的はＵ○Ｊで開催されているモンハンフェスタ。特にリオレウスを筆頭としたリアルな等身大大型モンスター達と実寸で作られた装備の数々（いくつかは試着しての記念撮影も可能）。リアル集会所などだ。イベント中限定配信のクエストもあるらしく、期待はかなり大きかった。

「んじゃ、乗り換えも間違えないようにしなきゃな。忘れんなよ。西九条でゆめ咲線に乗換えだからな。」

「それぐらい分かってるって。てか、なんで大阪駅で既に電車乗ってたんだよ。」

「そりゃあ・・・尼崎から東西線にのって京橋に出てそっから内回りに乗ったからだな。」

「切符は大阪経由じゃん。キセルかよ。」

「大平君って意外とワルなんだね〜♪」

「違うってば。大回り乗車つって、電車特定区間内なら目的地までの経路が複数ある場合、同じ駅を通らない限り経路に係わらず最短経路で運賃が計算されるんだよ。俺の場合はそれを利用しただけでキセルでは断じてない！」

「分かったからそんなに熱くなるなって・・・周り引いてるぞ」

　すると、一寸周りを見渡して漸く理解したらしく、『もっと熱くなれよ！！』なんていってさらに引かれていた。ああ、他人のフリをしたい・・・セルモス、真似しなくていいから。ドサクサにまぎれて大平を食おうとしなくていいから。てか、列車の車内で暴れんな。

『本日も、ＪＲ西日本をご利用いただきましてありがとうございます。まもなく、西九条。西九条です。お出口は右側です。お乗換えのご案内をいたします。１１時４２分発、ＪＲゆめ咲線桜島行きは降りましたホーム向かい側三番乗り場から発車いたします。まもなく西九条です。お降りの際はお忘れ物の無いようお気をつけください。なお、交通科学博物館へは次の弁天町駅をご利用ください。』

　アナウンスが流れ終わるとともに列車が揺れた。多分、ポイントを渡ったんだろう。ふと、日が陰ったので見上げると、倒れてくるセルモスの背中が見えた。

『西九条、西九条です。お出口は右側「ぐえっ」の際はお忘れ物の無いようご注意ください。本日「大丈夫か！？」利用いただきま・・・・』

　さすがは竜。体格も良ければ、体重も重い。そんなセルモスに図らずも勢いをつけて倒れ掛かられた俺は、アナウンスを最後まで聴くこともなく電車がブレーキを掛けた音をＢＧＭに俺の意識は暗くなっていった。

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