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【保】迷い人 − 旧・小説投稿所A

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【保】迷い人

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僕が出かけてから巨木の入り口では数人の獣人が心配していた…

『あの少年…無謀すぎるぞ…』
『帰ってこないわね…一人で挑むなんて自殺行為だわ…』

そんな暗い雰囲気をぶち壊すように壁をすり抜けて帰ってくると…それと同時に驚くような目線で見られていた…

『…?どうしたんですか?』
『え…?帰ってきた…?』
『しかも種をあんなに…?!』

あまりの驚きように僕は不思議と頭に?を浮かべるが…それほどすごいことをしたのか…そしてさっき道を塞いだ狐族の獣人が現れた…

『孤人君だっけ…あなたあの魔喰らいの精霊に出会わなかったの…?』
『出会ったが…なんとか倒した…』

そう呟いた瞬間歓声が上がり始めた…

『とにかく…その種をもらえるかしら?』
『そのために持ってきた…』

ポケットに詰まっていたマナの種を全て渡した…相手が持ってきた袋が一杯になると安心したような表情を浮かべている…

『すごく助かったわ…それにしても魔法なしで魔喰らいの精霊に勝てるなんて…あなた何者?』
『…運がよかっただけだ…』

そして疲れた表情を浮かべて居住区に向かって向かおうとするが…誰かに声をかけられた…

『坊主!お前そんなボロ刀であの魔喰らいの精霊を倒したのか!』

振り返るとどこかなにやら大きなハンマーを抱えた大柄な狼のような獣人が立っていた…

『あなたは…?』
『わしはここで武器を作ってるガルズ様じゃ!お前みたいな若造がそんな剣であの化け物を倒すとは驚きじゃな!』

どこか軽そうに話しかけてくるが…武器を作ってるという話に反応した…

『あなたはここで武器を…?』
『そうじゃな…剣や槍なんかならすぐできるぞ!若造!お前ならタダでいい物を作ってやるぞ!』

多少興味を持ったが…すぐに首を横に振った…

『なんじゃ…?そんなボロ刀でいいのか?』
『これはシィナのお兄さんの刀でね…お兄さんを見つけるまでは手放せない…せっかく声をかけてくれたのにすいません…』

そう言い頭を下げて立ち去ろうとするが…何かにつかまれ引きずられる…

『そう固いこと言わないでも見ていくだけ見ていけ!』

大きな手で服をつかまれて引きずられていく…その様子を呆然と周りの獣人達が見ているが…種を渡した狐族の獣人はいない…

『ガハハ!ようこそわしの鍛冶屋へ!』
『…どうも』

半分強制的に連れてこられご機嫌斜め気味だが…様々な武器に興味を持った…

『どうだ!わしの作った武器は!』
『色々あるんですね…』

壁に立てかけられた斧や大剣…刀もあれば槍もある…弓もある…まさに武器屋だ

『この中で好きな物があればもっていけ!代金はいらん!』
『…』

しかし僕は何か物足りなさそうに腕を組んでいる…

『どうした…わしの武器じゃ満足できんか?』
『いえ…ちょっとある武器がなくて…流石に無理があるか…』
『なんじゃ…?わしなら何でも作れるぞ!』

その自信満々な顔を見せられ近くにあった紙きれに絵を書き始める…

『なんじゃ…?この変わった絵は』
『これは銃という武器で…弾丸という弓でいえば矢のような物を撃ちだす武器です…』

僕が書いた絵を見て不思議そうに見ながら興味深そうな目で見ていた…

『作り方はわかるのか?わしなら部品は作れそうだが…』
『…では少し待っててください…』

僕は近くにあった椅子に座り…ふかく思い出す…

『…これで行こう…木材はありますか?それと削る物を…』
『おう…こいつを使え…その銃って奴を作るのか?』
『いえ…部品の見本を作ってその見本と同じ通りに作ってもらえますか…?』
『かまわんが…坊主にそんな腕があるのか?』

立ち上がり机の上に用意された板切れとヤスリと思われる鉄の棒を使って削り始める…

『……』

無言のまま板切れから切られた木片を削り始めて…25cmくらいの細長くて丸い木の部品ができあがりその部品を珍しそうにガルズさんが見ている…

『ずいぶん丁寧に作るんだな?』
『これをもう一本作ります…』

そして同じような形の木をもう一本丁寧に削っていく…無言で木を削る音だけが響きながら…

『まずこれはバレルといいます…次にこの2本を支える部分を作ります…』

作ったバレルを乗せる部分を少し大きめの木で削り始める…時々作った部品を乗せたりして調整をしながら…

『次は…この中央部分から中折れ式にして弾を入れる部分を作ります…』

黙々と部品を作っては調整し…そしてその部品を組み立てていく…気がつけば外は暗黒の夜…

『……』

気がつくと目の前には精密に作られた見本の銃があった…銃口が二つありやたらと細い銃の見本が出来上がっていた…

『坊主…お前何者だ…?いくら俺様でもこんな細かい物は作れないぞ…?』
『…ガタンッ』

出来上がりその銃をしばらく見ていたら…急に眠気が襲い掛かりそのまま倒れてしまった…

『おい?!寝てるか…無理しすぎたんだな…』

寝息を立てながら眠る僕をガルズさんは肩に担いで自分の寝室らしい場所に連れて行き少し大きめのベッドに寝かされた…

『この坊主が…わしを本気にさせてくれるとはな…!』

大きく笑いながら鍛冶屋へと戻っていきそして金属を叩く音と金属を加工するような音が聞こえてくる…しかしその音にまったく気にせずに僕はベッドで寝息を立てながら眠っていた…

『チュンチュン…』
『んぅ…?僕寝てたのか…?』

ガルズさんのベッドで眠っていた僕は大きく両手を上げて起床する…そして目を擦りながらテーブルにもたれるように眠るガルズさんが目に映る…

『グォォ…グガァァ…』
『…』

僕は起こさないようにガルズさんのベッドから毛布を取りに行きそしてガルズさんに被せてあげた…

『…ん?』

テーブルに置かれた僕が作った見本の銃の横に見本通りに作られた部品が置かれていた…

『…ガルズさんありがとう…』

置かれていた部品のひとつひとつを組み立てていき少し合わない部分をヤスリで削り…そして出来上がった銃の動作を確かめる…

『ガシャン…カチャッ…ガシャン』

銃弾の装填の動作から…クルリとまわして撃つ構えをしている…

『これは…いいな…ん?』

満足そうに構えていると後ろの気配に出来上がった銃を向けてしまう…

『坊主…その銃とやらの武器を作ったわしに向ける気か?』
『すいません…』

銃をおろして頭を下げ後ひとつ残った問題を言おうとした…

『次は弾を作れば…後は完璧ですね…』
『わしに任せろ!その弾とやらはどうすれば作れるのじゃ?』

『火薬と呼ばれる爆発性の粉を作ります…ガルズさんはこのくらいの細かい金属の弾をたくさん作ってくれますか…?』
『おう!任せろ!』

小指で5mmほどの大きさを表現するとガルズさんはすぐに金属を叩き始める…

『火薬の原料…古い時代からの黒色火薬でいけるが…木炭と硫黄と硝酸カリウムをどうやって手に入れるか…』

木炭はシィナの部屋の台所で…手に入るな…硝酸カリウムは…あまり気が進まないが厩肥、漆喰か木灰、藁を混ぜた物に尿をかけて発酵させて入手するしかないな…硫黄は…手に入るのだろうか…

『……ガルズさん…この辺りに火山地帯とかはありますか?』
『火山…?ここからかなり遠いが…火の山という火山なら知ってる…あんなところに何の用があるんだ?あそこには空の守護鳥がいるぞ…?』
『火薬を作るには…硫黄と木炭と硝酸カリウムという素材がいります…硫黄以外はここで精製できますけど…硫黄は火山地帯でしか取れません…』
『前に火の山に行ったときに黄色い石のかけらを拾ったが…これのことか?』

ガルズさんが取り出した木箱から少量ながら硫黄らしいかけらが見えた…

『これなら…少量ながら火薬が作れますね…しかし硫黄がないので…作れるだけ弾を作って火の山に向かいますか…』
『わかった…止めはせんが…気をつけろよ?』

材料となる木炭を探しに一度鍛冶屋から出てシィナの部屋に向かって走り出す…シィナの家のドアを開けると…

『孤〜人〜さ〜ん…!』
『うわぁ?!』

天井で待ち構えていたシィナに飛び掛られバランスを崩して転倒…

『むぅ…孤人さん遅すぎるよ?どこで道草してたのかしら?』
『いたた…髪は引っ張らないでくれ…』

お仕置きとばかりにシィナは僕の背中で僕の短い髪を引っ張る…?!

『やめてくれ…痛いっ痛いっ?!』
『今日はお仕置きよ〜!』

そのまましばらくシィナのお仕置きを受けることになってしまった…

to be continued



<2011/11/24 00:07 狐人>消しゴム
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