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【保】AM2:17 − 旧・小説投稿所A

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【保】AM2:17

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AM2:17-------------------------------------------

「只今ー・・・」
ある日、家に帰った。
誰も居ないのに只今と言う。寂しいからだ。
コツン。
(ん?)
何かが爪先に当たった。
(何だコレ?)
そこには、段ボール箱が置いてあった。何やら怪しい雰囲気がする。
変だ。何ていうか・・・まるでずっと其処にあった様な感じが。
(何か通販で買ったっけ・・・?)
・・・ん・・・・・・・
箱を見回すが何も書かれていない。
その時であった。
ゴトッ
「ぅわ・・・・・・・っ・・・・・・!?」
何か箱から音がした。
思わず覗き込んで座り込んでいた状態から飛び退く。
(何なんだ・・・コレ!?)
(開け・・・・ようか・・・・・?)
一瞬、どうしようかと迷った。
ゴトッ
「っ!?」
今度は揺れる程度に動いた。
私はどっちかというと小心者だ。
(っ・・・これ以上ビビっていても何も変わらん・・・・っ!)
ガッ
思い切って段ボール箱に手をかけた。
(ん・・・あ、素手で開く訳無いのにっ)
ゴト。
「!・・・」
更に飛び退く。臆病過ぎるぞと私でも思う。
(あ。何か切るもの、あったっけ・・・・?)
サッと立つと、小走りで私の部屋に向かう。
――――ズ――ガチャ・・カチ・・・ャ・・・
引き出しを探る。
(カッター、カッター・・・・・・・)
「ん〜〜〜〜」
(無いなぁ・・・・・・・3年ぐらい前はあった様な記憶が有るんだけど・・・・・・・)
「ぉ!」
切るもの、まあ少し危ないがイイか。
(コレでいいか。)
手に取ったのは1つの果物ナイフ。
タッタッ・・・――――――ゴト・・・・
「うぉ」
まだ箱は動いている。いい加減慣れろよもう。
(――――――よし・・・・・開ける・・・・か・・・・)
もうビビりたくないので、私は箱に手をかけ、
シューーー
ナイフで箱を止めてあるガムテープを切った。

・・・・・・・・・・え?は?・・・ちちちちょと待ていやいい意味分かんないっって!!!

―――――私は、果物ナイフを使って箱を開けたことに後悔した。
―――――傷は、深い。

* * * * * *

何年前の事だっただろう。

それがまあ奴と出会ったキッカケだと言おう。

私と奴は、一緒に生活する様になった。

* * * * * *

そう、奴と生活する様になってから何年も経ったある日。
その日は、何だかだるくて、疲れていた。
普段は奴と一緒に布団に入ると直ぐ眠るのだが、今日は眠れなかった。
「・・・・・・・・」
疲れているのに、目は閉じているのに、何故か眠れない。

寝返りを打とうとした時。

ゴソッ・・・・
(・・・・・・・・・・・・・?)
暗いので分かりづらいが奴が起き上がったのだろう、という音がした。
・・・・・・・・ッ・・・・ッ・・・・・ッ・・・・
奴はそのまま部屋を出、玄関で
―――――カ・・・チャ・・・・・・・・・・・・・・・パタンッ
ドアを開け外に出た。
奴がドアを開ける前くらいから奴を覗いていたので外の光が一瞬見えた。
腕時計のライトを付けて考える。
(何だろう・・・・・・まだ午前2時なのに・・・・・・)
ちょっと見てみようか、と最も南にある部屋の奥の窓の所へ行き、カーテンを開ける。
ーサァーーー
この部屋からは家の正面の道路が見える。
少し明るすぎるくらいの街灯が黄色い光を投げかけていた。
(あ)
奴が見えた。
何やら探すように歩いている。
(・・・・一体何をしているんだ?)
と、奴は何か見つけた様で傍にあった大きな木の影に隠れた。
向こうの方に目を凝らすと、誰か歩いて来るのが見えた。
(・・・??)
タッ・・・・・タッ・・・・・
人が奴には気付かないで通り過ぎようとした時だった。

その瞬間見えたのは、倒された人と、奴の腕だった。
(は!?な、何を!?)
人は何やら叫んでいる様だがよく聞こえない。
「・・・・!・・・ろ!・・・・せ!・・・・な・・・・・・・・だ!・・・・」
(!?)
奴が手でその人の両腕を押さえた。
それから奴は、その人の顔を
――いきなり舐め上げた。
その人が服を着ているのも構わず他の部位も舐める。


・・・・・チャ・・・・ジュル・・・・・・・

・・・・・・・・・ヌ・・・・・・チ・・ャ・・・・・・・

・・ぺ・・・・・チュ・・・・・・・・ッ・・・・・・



何分間舐めただろうか。
人は早く逃げなければという本能が働いているのか、
必死に暴れていた。
奴は、今度はその人を立たせて、・・・両手で
掴んだ。
(・・・・ぇ・・・・?)
ア・・・・・・グ・・ッ・・・・・
奴は口を開くと、
その人を下から咥えた。
ズルッ・・・・グ・・・・・・・・ズ・・・・ッ・・・・
「・・・・・・ぁ・・・・・ぁ・・・!!・・・・!・・・」
その人は声にならない様な声で必死に暴れる。
ズ・・・ル・・・ッ・・・・・
だが暴れても何の意味も無い。
人は奴に呑み込まれて行く。

グ・・・ッ・・・・・・・・・ズ・・・・アグ・・・・・ッ・・・・
人は遂に、手だけ見える状態となった。
その手もまだ本能が働き、奴の下顎を必死に叩いている。
・・・・・第三者から見ていると悲しいほどに必死だ。
グチュ・・・・ズルッ・・・・・・・・・・
奴の柔らかい舌によって引き込まれ・・・

――遂にその手まで見えなくなった。

奴は徐に上を向くと。

――・・・ゴ・・・・クン・・・

ゆっくりと人を呑み下した。
喉をゆっくりと膨らみが降りていくのが見えた。



(・・・え・・・・)
窓に張り付いたまま私は唖然として居た。
さっきまで何事も無かった目の前の道路。

今は・・・・・

何も無いようで、でも、よく見ると・・・紺色のカバンが、裏向きに落ちている。

ただそれを呆然と見ていた。


(・・・・)

カ・・・・チャ・・・・
(・・・!)
見るとドアが開き、一筋の光が入った。
(ぁ・・・やばいっ・・・!)
急いで窓を閉めカーテンを閉め元の部屋へ駆け込んで布団を被る。
トクン、トクン、トクン、トクン・・・
今走ったので心拍数が相当上がっている。
(落ち着かないと・・・・・・っ・・)
・・ス・・・・ッ・・・・・ザサ・・・ッ・・・・・
奴はゆっくりと翼を伸ばすと、その翼で私を覆う様にして・・・直ぐに寝息を立て始めた。
眠った様だ。
私は、初めてその自分の目の前にある奴の顔、そして少しはみでて居る牙がものすごく怖いモノに見えた。
こう思った程だ。

(今すぐ・・・・逃げてしまいたい・・・・)

なんだか嫌になってしまった。
自分も殺されるかもしれない。
少し恐怖を感じながらも、疲れていたのか、私はいつの間にか眠りへと堕ちていた。


―――翌日。
(眠い・・・)
(何故眠いんだろう・・・)
(・・・アレは夢だったのだろうか・・・・?)
奴は布団の中に居ない。何処かへ行った様だ。
布団の中で寝返りを打つ。
(・・・・・・)
何も考える気がしない。
(・・・・はぁ・・・・)
溜息を付いたのは覚えている。
(・・・・ん・・・・・っ・・・・・・・・ぅーーー・・・・・・・・)

(・・ぁ・・・なん・・・・で・・・だろ・・う・・・凄く・・・眠・・・い・・・)

起きたばかりなのに、また私は寝てしまった。

――――――――――――

(・・・ん)
(ぉ?)
ふと気が付くと自分に翼が被さっていた。
腕時計を見る。
(AM1:40って・・・・・どんだけ寝てたんだ・・・・・・・・)
(奴は・・・・・)

奴は、寝ている「様で」あった。

(また昨日みたいな事を繰り返されると・・・・大変な事になるだろうな・・・よし・・・・)
奴の翼を、奴が気付かないようにそっ・・・と横に避け、布団を剥がすとゆっくり起き上がった。

サ・・・・
箪笥から服を出して着替える。
(コレで・・・・いいか・・・・)


カ・・・・・・・・・チャ、パタンッ・・・・・
家のドアをそっっと閉める。

(待ち伏せするとしたら・・・電柱とかないかな・・・・・・・・ぁ、そこら辺暗くていいか・・)

(ん・・・・・・と・・・・)
近くにあったコンクリのゴミ捨て場の影にしゃがみ込み、身を縮める。
えっと、腕時計。
(AM1:55か・・・、昨日は・・・・・はぁ・・・確か・・・AM2:00だったな・・・・じゃぁ後5分程待ってればいいか・・・・)

ちょっと姿勢を変えてみる。
(ん・・・・・・っ・・・・・・)

(・・・・・)

(・・・・・・・・・・・・・ぅ)

――(ぅ・・・・・・ぁれ・・・・ま・・・だ・・・眠・・・ぃ・・・・?)

(・・・・・・・・・ぐ・・・・・)

物凄く・・・・眠い・・・・・・何故?

(ぁ・・・・・・・・・・)

――――――――――――

(――っはっ!?)
突然気が付いた。
(あれ、何で・・・・・・あぁ、奴を・・・・・待ってたのか・・・。)

(え、眠って、た・・・今は・・・・)
腕時計のライトを照らす。
(AM1:59・・・・・・)

辺りを見回す。
昨日のカバンは誰かによって持ち去られた様だ。
・・・・何も無い。

(AM2:00に来るんだとすれば・・・奴はあと1分で来るな・・・・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

物音一つしない。
(・・・・来ないのか・・・・・?)
(・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・AM2:00だ・・・・・)
周りを見る。誰も居ない。

(・・・・・・・・・・・・・・・・もう少し待とう・・・・10分位・・・・)


・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・


何回腕時計と周りを交互に見ただろう。
(AM2:09・・・・・・・・来ない・・・・・あと一分経ったら帰ろ・・・・・・・・眠・・・・)
腕時計。
(AM2:09:40・・・・・・41・・・・42・・・・43・・・・44・・・・45・・・・・・あぁ20秒って長いな・・・・・48・・・・49・・・・)
(・・・50・・・・・51・・・・・52・・・53・・・・54・・・・・55・・・・56・・・)
(・・・・・・57・・・・・58・・・・・59・・・・・・)

(10分・・・・・・帰るか・・・・・)

周りを一応見回す。奴は居ない。

(んっ・・・・・・・・・はぁ・・・・・)
立ち上がって、歩き出そうとした。

ガサッ・・。
「ぇ・・・・?」


気が付くと、後ろに奴が居た。


――――――――――――え、何で、其処に、居るの――――――――――――


「ぇ・・・な、なんで・・・さっきは見えなかったのに・・・」

「・・・・見たんだろ・・・・・・昨日の・・・・・・?」

奴はゆっくりと迫ってくる

家の外の壁に体が当たる

ズッ・・・・・・

前から奴に押さえ付けられる

グ・・・・ッ・・・・・・

「なぁ・・・・・・・?」

ぺチャ・・・

「ぅあっ!?」

気が付くと自分の顔が奴の唾液で濡れていた

「ちょ・・・・・昨日の・・・・見たのは・・・・ただ見ただけ・・・・」

ぺチャリ・・・・ヌチャ・・・・・

「ちょ・・・・・・ご、ごめん・・・・・ぁ・・・・くっ・・・・止・・・め・・!」

幾度も顔を舐められる 口に入ってくる唾液で呼吸がしづらくなる

「・・・・・・・はぁっ!・・・・ゴホッ・・・・・ク・・・・クホッ・・・・」

ヌチャ・・・・ぺチャ・・・・・チ・・・ャッ・・・

「ごはっ・・・・・止・・・・・め・・・・・・ケホッ・・・・・・く・・・・・・ぁ・・・」

息が出来なくなっても 尚 奴の舌は顔を舐める

「はぁ・・・・っ・・・・・は・・・・ぁ・・・っ・・・・け・・・ほっ・・・・」

壁に後頭部を置いて肺が正常に戻るのを待つ

奴は無言で 澄んだ眼でこちらをやや高い位置から見下ろしている

其の眼は 決して 私からは離れていない

「く・・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・・・・・・・ごめん・・・・・わざとじゃな・・・いか・・・ら」

ヌ・・・チャ・・・

「・・・へ?」

気が付くと 体が 浮いていた

体に 奴の 舌が 巻きついている

「!!!・・・止め・・・・て・・・・・・・・・ぐ・・・・離・・・・し・・て・・・・・・・!」

其の眼は 決して

ズルッ

(!!!!!)

気が付くと 舌が 解かれ 奴の口に 咥えられて

「・・・・・・!!!・・・ちょ・・・・嫌だ・・・離して・・・・・嫌・・・・!!」

ズ・・・ヌチャ・・・・・

「ぁ・・・・・・!!!」

足先から 暗い 喉の 奥へと 引きずり込まれて 行く

ズルッ・・・・・・

脚が

ズ・・・・ニチュ・・・・・・

腹が

ただ 喉の 奥へと

「!!・・・・・ぁ・・・・・・・・・お・・願・・・・・い・・・助け・・・・て」

下を 向くと 其処には 闇

ただ 近くで 蠢く 舌と 奥の 喉の 暗い 闇

生物的に 感じた 危機感

「・・・・・・・・・嫌・・・・・・だ・・・!!!・・・・う・・・・・・ぁ・・・」

抵抗が 出来ない

グチュ・・・・ムニュ・・・・・・

ニチュ・・・・・

必死に 舌に しがみ 付く

ズル・・・・・ズ・・・・ルッ・・・・・

(・・・・ぁ・・・・お願・・・・・い・・・!)

ズ・・・ヌルッ・・・・・・ズル・・・・・

(あ・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・)

スル・・・ッ

「っ!!」

遂に 腕が 離れ

伸ばした 手も 影しか 見えず

ただ 最期に見た 奴の 口から 見る 外



ズル・・・・ズ・・・・・ヌチャ・・・・ズル・・・・ッ

噴門 を 越え

ドチャッ・・・

「っ・・・・・・はぁ・・・・はぁっ・・・・、!!」

確かなものと 変わった 恐怖

「出し・・・て・・・・・・!出して・・・・・・・!!」

狭い 暗い

酸性の 臭い

ポタッ・・・・ポタッ・・・・・

ただ 締め付けられる 体 

ただ 分泌され続ける 胃液

(・・・・出してっ・・・・・・!!!)

もう 疲れて 声が 上がらない

「っはぁ・・・・・はぁ・・・・!」

息切れして 胃壁に もたれかかった

その時 奴から 声が 降って来た

「見られたんなら・・・・仕方が無かった・・・・・」

(・・・)

「お前にだけは・・・・・・見せたくなかった・・・・」

(・・・)

「俺は・・・・」

「お前の事が・・・・・・好きだ・・・・・」

(ぇ・・・・・?)

「お前と一緒に居ると・・・・・」

(・・・・・・・・・?)

「喰ってしまいたい・・・・て・・・位・・・・な・・・。」

(・・・!)

「だから・・・、これで・・・・・・・ずっと」

「一緒だから・・・な・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

しばらく 何も 感じられなかった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・・・」

「・・・・そうか・・・・・・私も・・・・オマエの事、好きだ・・・ぞ・・・・・」

「・・・・・」

ヌ・・・・・チャ・・・・・・・ッ・・・・

自分はどんな表情をしていたのだろう。
いや、表情なんてどうでも良い。
今はただ、奴の中に居る事が・・・・幸せに・・・なった。

お休み。



<2011/06/18 23:00 Wyvern-D>消しゴム
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