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交錯する証 − 旧・小説投稿所A

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交錯する証

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「あ〜う〜、遅刻遅刻っ////」

慣された林道を駆け抜ける小柄な狼獣人。
小柄な体躯に合わせた白衣に緋袴を着用し、護符や
妖を祓う為に使用する破魔術の媒介となる呪符が携えられていた。
祈祷や祈願の傍ら、妖を祓うことも請け負う巫女ー
彼女は巫女見習いだった。
弓は持たせてもらえず、大型の術も許可されていない。
見習いでも所持が赦されているのは、自身の身を守る護符と呪符。
たったそれだけだった。
彼女がこうも急ぐ理由は一つ。
巫女神社の裏に上位の妖が現れたらしく
所属する巫女全員でその妖の討伐に向かう予定であったのだが
何をしていたのか、彼女だけが遅刻したようだ。
二尺程の体の上下に合わせ、純白の体毛を揺れ、大きな蒼い目が幼さを物語っていた。
名を、凛(りん)と言った。
長い林道を駆け抜け、道にはみ出る枝を躱し
やっとの思いで林道を抜け、裏に出る。

「……り、凛……逃げなさいっ……」

そこで凛が目の当たりにした光景。
凛と同様の装備を施した巫女達の無惨な姿。
見習いから巫女長まで、余す事無く地面に伏していた。
体に奔る一条の切創。
皮膚、筋肉、骨、内蔵。
その全てを無慈悲に一刀両断。
凛に退避を促す巫女もすぐに事切れた。
無数の死体に囲まれる様に中央で座す妖虎。
稲妻のような黄に黒縞の走った毛皮に身を包み
その前肢の鋭爪はちょうどヒト一人と同様。
研ぎ澄まされた刀の様に黒光る爪には返り血に濡れていた。
雲にまで届きそうな二丈の体躯はそれだけで強烈な気を放っていた。

「う、うわぁぁぁっ!」

視界に広がる地獄絵図にパニックに陥った凛。
何を思案したのか、次の瞬間には妖虎に向け初級の破魔術を放っていた。
鬼火ような光弾が飛翔し、妖虎に命中する。

「ん……」

しかし、大妖にそのような玩具が効果を示す筈もない。
ダメージは無く、寧ろ存在を示しているようなものだった。
妖虎は凛に翻り、激しく喉を唸らせた。

「わ〜ん;; 御免なさい御免なさいっ!」

正気に戻った凛が目を涙で潤わせ、謝罪の言葉を囈言の様に口走る。
凛のよくある行動であった。
好奇心旺盛が故に妖に手を出しては、何度も謝罪する事が多かった。
丸く収まる事もあれば、上位巫女の手を煩わせる事も。
大妖である彼にとって巫女に攻撃されるのは鬱陶しいものがあるだろう。



「私が……恐いか?」



凛の頭に優しく妖虎の前肢が添えられていた。


<2012/05/08 23:33 セイル>消しゴム
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