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【保】竜と絆の章1 清らかな森の湖にて − 旧・小説投稿所A
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【保】竜と絆の章1 清らかな森の湖にて

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アイゼンとリヴェーヌの仲直りが済んでから
数ヶ月が過ぎた……

すっかり元に戻った湖に……
すでに毎朝の日課になっているアイゼンが湖にやって来ていた。

「ふふふ……今日もいい眺め…これもリヴェーヌの御陰ね。」

湖を綺麗に保つために一生懸命働いているリヴェーヌの姿を想い浮かべると
アイゼンの頬が自然と緩んできて微笑みを浮かべてしまう。

そのアイゼンの後ろからこっそりと近づく影……

アイゼンはその事にまったく気が付かず。
いつもはすぐに姿を見せるはずのリヴェーヌの姿を待っていた。

「遅いな〜どうしたんだろ?
 折角お弁当……一緒に食べようと作ったのに……」

退屈そうに下を見下ろすと、
手に持っている弁当箱を入れた大きめのバスケットが揺れている。
それを聞いた影の主はピクッと体を震わせて動きを止めたが、
まだ、アイゼンは気が付かない……

「うん! たまには呼んでみるのもいいわね♪
 おはよう〜! リヴェーヌ〜今日も来たわよ!!」

リヴェーヌの名前を呼ぶとアイゼンの後ろから影の主が……

「呼んだかしら〜♪ ア イ ゼ ン〜♪」

竜人姿のリヴェーヌが待ってたよ〜と言わんばかりに
不意をついてガバッと後ろから抱きついた。

「キャッ!」

突然の抱擁にアイゼンは可愛い悲鳴をあげて
トサッ!とバスケットを落とした。

「うふっ……呼ばれたから出てきたのに、
 そんなに驚いてくれて……脅かしてみて正解だったわね♪」
 
落ちたバスケットを横目にリヴェーヌは、嬉しそうにアイゼンの体を抱き上げる。

「リ、リヴェーヌ、あなた狙ってたわね!
 もう……いきなり何するの!」
「ふふふ……いつ気が付くかしらって思ってたけど……
 最後まで気が付かないから、ちょっと可笑しかったわ〜♪」

抱き上げられて足が地面に届いていないアイゼンは、
ジタバタと暴れながらリヴェーヌの腕の中でもがいている…が、
そんなことでは竜の抱擁はびくともしなかった。

それどころか……

「ふふ……そう言えば聞いたわよ♪
 そのバスケットの中身って、お弁当なのよね……」
「そうよ! リヴェーヌと一緒に朝ご飯食べようと、
 早起きして作って、私……まだ何もたべてないだから!」
「ふふふ……ありがとう。お弁当食べたいわ♪」

そっぽを向き、少し恥ずかしそうに赤くなりながら答えるアイゼン。

リヴェーヌは嬉しそうに笑い……
いきなり光に包まれ竜型に変身していく。
その過程で、アイゼンは高々とリヴェーヌの胸の辺りまで持ち上げられていった。

「えっ? リヴェーヌ、ちょっと下ろしなさい!」

一気に遠くなった地面にアイゼンは惚けたような声を出して、
すぐ正気に戻り慌てたようにはリヴェーヌに文句を言うが……

「ふふふ……ダメー♪
 あのね…アイゼン……私もお腹がすいてるのよ。」

意地悪そうに断った後……
リヴェーヌは片方の手で自分のお腹をさすりながら、
遠回しにご飯を食べたいなと催促する。

「えっ…ええ。 ならさっそく一緒に朝ご飯食べよう……ひゃっ!」

喋っている途中でアイゼンの首筋をリヴェーヌの柔らかな舌が
スーッと舐めていきヒヤリとした感触が襲いかかり思わず喘ぐ声をあげて、

「うにゃっ! な、何をするんですか!」

突然の事に狼狽えて変な奇声をあげながらアイゼンはリヴェーヌを問いつめる。
その問いにリヴェーヌは笑いながら……

「ふふふ……私のお弁当はアイゼンよ♪
 お腹がすいたから、また気を分けてちょうだい♪」

アイゼンを見つめて、さっそく食べようと
唾液の糸を引きながら口を開いて近づけていく。

「ふぇっ! 待ってリヴェーヌ!
 何で私なの? いきなりはダメー!」

しかし、リヴェーヌはアイゼンの必死の抗議を無視して……

「ふふふ……アイゼンさんの気。
 ……久々で楽しみだわ。 それじゃ、頂きま〜す♪」


ハクっ! ん〜…… ゴクリっ!


そのままアイゼンを咥え込み、少し口の中で転がした後、
小気味のいい音を立ててあっさりと飲み下してしまった。

そして、呑み込まれたアイゼンはジュルジュルと長い喉を下っていき……

「覚えておきなさいよ! リヴェーーヌ!」

捨て台詞を吐いてそのまま胃袋の中へと滑り落ちたのだった。
その声を聞くとリヴェーヌは少し冷や汗をかき……
誤魔化すように……

「う〜ん。ふふふ……聞こえない、聞こえない♪」

笑いながら歌うように呟き、さっそく膨れたお腹をモミモミと揉みだす。
その刺激で胃袋の中はあっという間に透明な胃液に満たされていく。

「うぶっ……リヴェーヌ……やめ……んやぁっ……あぁっ!
 はぁ、はぁ…ち、力が入らない……」

その中で、胃壁に揉まれ胃液を全身にすり込まれ、
アイゼンは激しく喘ぎながら、徐々にリヴェーヌに気を吸い取られていった。

「うふふ…もういいよ、ご馳走様〜♪
 アイゼンの気の力、とても美味しかったわよ♪」

チョコチョコっと気を吸い取って、
リヴェーヌは十分に満たされ満足そうに再びお腹を揉んだ。

そして、そのまま湖の方に歩いていき、
ちょっとイタズラっぽい笑みを浮かべると……

「ん……ウグッ……グパァッ!」

アイゼンさんを湖の中に吐き出した。


バッシャーーン!!


もちろんアイゼンさんは湖に落ちて大きな水柱をあげて湖の中に沈んでいき……

「ふ・ふ・ふ……リヴェ〜ヌ〜……」

湖の底からザバーっと水をかき分け浮き上がり、
不気味な笑い声と共に全身から大量に水を滴らせて湖からあがってきた。

その幽鬼のようなアイゼンの姿は……
さらに冷や汗を垂れ流して見ているリヴェーヌを後ずさりさせるほどだった。

「あ、アイゼン…ちょっと顔が怖いわよ。」

軽口を叩きながら平静を繕うがその声は震えながら、
さらに一歩後ずさりをしていつでも逃げ出せるように腰を落とす。

「ふ・ふ・ふ……覚悟はできてるでしょうね……?」

アイゼンはその様子を慌てずに、
ゆっくりとリヴェーヌに向かって歩を進めていく。
それが…その姿がリヴェーヌにはとても恐ろしくて、完全に腰が引けていた。

だから……

「え、ええ〜と……出来てないわ!
 ご免なさい、アイゼン〜許して〜!」

迫り来る恐怖の固まりから脱兎のごとく逃げ出してしまった。
猛スピードで逃げていくリヴェーヌの姿をアイゼンは目で追っていき……

「フフフ……コラー!! 
 リヴェーヌ、逃げるなんて潔くないわよ!!」

手を振り上げて怒声をあげながらリヴェーヌの後を追いかけて行く。

そして……
しばらく追い駆けっこが湖の周囲に繰り広げられたのだった。


十数分後……
結果は当然のようにリヴェーヌに軍配が上がりそうになっていた。
そもそも体力を半分以上、吸われているアイゼンにそれほど力が残っているわけもなく。

怒りで繋いでいた気力も段々と尽きていき……

「はぁ、はぁ……待ちっ…なさいっ! うぅ…もう…ダメ……」

最後にそう呻くと砂浜に力尽きてバッタリと倒れてしまった。

「……ん? アイゼンが追いかけてこない?」

いつの間にかアイゼンの姿の見えない事に気が付き、
足を止めて後ろを見渡しながら姿を探していくと……

「……っ! アイゼン、大丈夫なの!? 今すぐそっちに行くわ!」

倒れているアイゼンに気が付いて、
逃げていた時よりさらに早くアイゼンに駆け寄って行く!


「アイゼン、来たわよ! 
 ……ご免なさい、私が悪ふざけをしたばかりに……」

あっという間にたどり着き、頭を下げてアイゼンさんの様子を見ている。
倒れたその姿を見ているだけでリヴェーヌの心には後悔がよぎり。

そして、


バッ!  


「えっ!?」


ゴスッ!!


「フグッ! アイゼン……痛い……」 

涙目になり非難の声をあげるリヴェーヌの目の前に、
いきなり起きあがり、リヴェーヌの額に拳骨を振り下ろしたアイゼンが立っていた。

「うぅ……アイゼン酷い……私を……騙したわね。」
「自業自得よ! まったく……」

目に涙を浮かべるリヴェーヌ。
それをムスーっと見上げているびしょ濡れのアイゼン。

その内どちらからかは分からないけど……

「ふふふ……あははは!」

笑いだして……

「「あははっ……うふふ……はははっ!」」

それが楽しそうな笑い声が湖に響き渡った。



そして、二人がちょっと遅めの『本当の朝ご飯』を
食べ終わった頃には、時間はすでにお昼を回っていた。

「うふっ……ご馳走様でした。 
 とても美味しかったわ……アイゼン……さっきはごめんね。」

リヴェーヌの力で服もすっかり乾き、
食べ終わり空の弁当箱を片付けているアイゼンに
竜人の姿に戻ったリヴェーヌはお礼を言うと、次に頭を下げて謝った。

それにアイゼンもさっき殴ったことを謝ろうとして振り向くと……

「もういいわよ…それにさっきは力一杯殴っちゃってごめんね。
 まだちょっと腫れて……ぷっ…あはは…!」

額をまだ少し腫らしたリヴェーヌの顔が飛び込んできて……
思いっきり吹き出しお腹を抱えて笑い出した。

「やだ〜さっきのリヴェーヌの変な顔…思い出してお腹…
 くくくっ…笑いすぎて苦しい…ふふ、あはは!」
「うぅ…自分でやっておいて…酷い……」

先とは逆に今度はリヴェーヌが頬を膨らましムスーっとむくれてしまう。
そのリヴェーヌにアイゼンはまだ少し笑いながら……

「ふふ……ごめん。」
「もう…うふっ…楽しかったからいいわ♪
 アイゼン…今日も、そろそろ…行っちゃうの…?」

リヴェーヌは少し寂しそうにしながら、
笑っているアイゼンの顔を見つめて問いかけた。

「うん。 そろそろ……行かなくちゃいけないの。」
「そう……また次の朝まで寂しくなるわね。」

いつも昼を少し回るとアイゼンは何処かに出かけてしまって……
リヴェーヌはアイゼンが普段何をしているのか何処に行っているのかを興味をもっていた。
でも、中々聞きづらくて……
今もこうしてアイゼンが何処かへ行ってしまうのを見ているだけしか、

「……寂しいなら……リヴェーヌも今度行ってみる? 中々楽しい所よ♪」
「えっ…私が…? でも、私みたいな竜が行ってもいいのかな?」

突然のアイゼンの申し出にリヴェーヌは驚いて、
いつも自分を見てくれているその心を嬉しく思い……

そして、いきなり不安になってしまった。
その表情をアイゼンは笑みを浮かべながら見つめて…

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。
 あそこの人たちはリヴェーヌがいきなり訪れても、
 驚きはするかも知れないけど……
 絶対に怖がったりはしないと思うから、安心して行ってきたらいいよ。」

そう言ってアイゼンはリヴェーヌに簡単な地図を書いて渡した。
その地図をリヴェーヌは両手にそっと持ち……

「えっ…ええ……分かったわ。 
 今度…時間があったら行ってみる。」
「うん♪ リヴェーヌ向こうで会うの楽しみにしてるよ。」

本当に楽しそうなアイゼンの微笑み……
それを見てリヴェーヌは興味本位ではなく、心からその場所へ行ってみたいなと思い……

『どんな場所なんだろう?』と思いをはせる。

「……それじゃ、もう行くね。
 リヴェーヌ…また、明日会おうね♪」
「ふふふ…行ってらっしゃい。
 それから……アイゼン、また来てね、待ってるから。」

今日の別れの挨拶をしてアイゼンは帰って行った。
そして、湖にポツーンと一人のこったリヴェーヌは再び地図に目を落として……

数日後……

リヴェーヌはその場所に訪れていた。
始めてくる場所にやはり少し戸惑い辺りを見渡しながら歩いていると……

リヴェーヌも見たことのない生き物が……
真っ白な姿をしていてリヴェーヌよりも少し小さいぐらいの巨体の持ち主が、
笑いながらお辞儀をしたあと、丁寧な言葉使いで話しかけてきた。

「お早う御座います。 あなたはどちら様なのでしょうか?」

その生き物の笑顔につられてリヴェーヌも笑顔を浮かべて挨拶をする。

「あら、おはようございます……
 アイゼンさんに勧められて来たのですけど……」



そして、新しい場所で……
ここでも彼女は新しい友達を作る。


The End


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