しばらく線路に沿って歩いて行くと、線路は徐々に島の北部に位置する平たい山の緩やかな斜面を登り始める。そんな山の斜面を線路に沿って登るにつれて、うっそうと茂っていた筈のジャングルの木々の姿も徐々に目立たなくなって行き、やがて線路は辺りにゴツゴツとした大きな岩が無数に転がる岩場へと差し掛かって行く。更に線路に沿って歩いて行くと、ボロボロになって打ち棄てられてあるトロッコの姿が線路の周りに段々と目立ち始める訳だが、これは自分が既に炭鉱の跡地に程近い場所を歩いている事を強く示すものだった。
そのまま歩いて行くと、やがて大きく開けた場所に行き着いた。そこで二本だった線路は更に複数の線路に分岐して行き、その分岐した先の線路の上には何台もの古びたトロッコが泥塗れのままで放置されてある。
線路の周りには、既に廃屋と化したバラック造りの建物が幾つも建ってある。今僕の右側に建ってある一際大きな建物は、トロッコ列車を格納しておくための倉庫であり、左手に少し行った所に密集して建っている大小様々のバラック小屋の群れは、この炭鉱で働いていた労働者の居住スペースとして使われていたそうだ。
どうして僕がこんな事を知っているかと言えば、前にこの炭鉱の跡地で村の子供達と肝試しをして遊んだ時に、白いワンピースの少女もとい、村長の孫娘が色々と僕にこの跡地に残る施設について教えてくれていたのだ。
だからこの場所に関しては、どのような建物がどのような場所にあって、内部がどのような雰囲気になっているかという事くらいは、ほぼ完全に頭に入ってある。……そう。だから、村の子供を襲ったそのグラエナが、この炭鉱の跡地のどの場所をねぐらとして利用しているかなどと言うことは、大体の察しが付いてしまうのだ。
坑道という坑道の入り口は分厚い鉄板で蓋をされているから、人間はおろか、僕達だって中に入って行く事は出来ないし、トロッコ列車の格納庫は天井が抜けて無くなっているも同然で、雨が降ればあっという間に中は水浸しになってしまう。おまけに村の子供達が遊び半分で格納庫の窓ガラスに石ころをぶつけまくって来たものだから、格納庫の床は鋭利なガラス片だらけで、靴やサンダルで足を保護している人間ならばとにかくとして、素足での生活が基本となる僕のような野生のポケモンならば、断固として足を踏み入れたくない場所だった。だから、こんな場所をねぐらに選ぶのは、足の裏をガラス片で血まみれにしても良いという覚悟があるポケモンだけだろう。もっとも、そんなポケモンがいれば、僕としては是非ともお目にかかりたいものなのだが。
結局の所、この場所で野性のポケモンがねぐらとして使えるような所は、居住区の跡地しかないのである。側面のバラックが部分的に剥がれ落ちている小屋が殆どで、中に侵入するのも簡単だし、格納庫とは違って天井も無事なので雨露も凌げる上、床に鋭利なガラス片が散らばっていることもない。おまけに、当時そこで生活していた人間達がバラックの中に色々なものを残して行っているから、必要であればそれらを使って色々とねぐらの環境を整える事も可能なのだ。そんなだから、居住区の跡地は野生のポケモンがねぐらを構えるのには持って来いの場所なのである。体躯の大きな僕にとっては廃屋が小さ過ぎて無理なのだが、思えばこの居住区の跡地はつい最近までかなり多くのポケモン達が住みかとして利用していた筈だった。つい最近になってからそんな彼らの姿をめっきり見なくなってしまったのは……もしや、そのグラエナが彼らを駆逐してしまったからなのだろうか?
とにかく、この居住区
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