鬼道は、クルスの頬を思い切り引っ叩いた。
「ッ・・・・・・・!!」
「この馬鹿がっ!!!人間に危害を加えるなとあれ程言っただろう!!!」
「ぅ・・・く、ぐっ・・・・・」
「なぜだ?なぜこんな事をしたんだ!!」
「あなたを・・・・あなたの幸せを・・・・守りたかった・・・・・」
「・・・・・・!・・・・お前・・・・・」
「もしあなたとあいつが結ばれたら!!私もあなたも死んでしまうから!! ・・・だから・・・!」
輝は知らない。
クルスは、祟りと呪いを与える力を持っている事を。
輝は知らないのだ。
彼らが互いに呪いを掛け合っている事を。
互いが裏切ったりしないように、彼らは愛の呪いを掛け合った。
どちらかが別の者と愛し合ってしまったら、二人とも死に陥る。
彼らはそれ程の覚悟を持って、主人と飼い犬という関係になったのだ。
それは、彼らにとって恋人以上の関係だった。
「言っただろう・・・俺の気持ちは・・・揺らぐ事はないと・・・」
「ごめんなさい・・・不安だったの・・・・・・怖かった・・・・あいつに取られたくなかった・・・・・」
「・・・・だが輝が悪という訳ではない。お前のした事は許されない事だ。」
「わかって・・・・分かってる・・・・。」
「甦らせる事はできるな。早く生き返らせてやれ」
「はい・・・・」
修行の末に手に入れた能力は、境界を弄る程度の能力。
どこぞの幻想郷のスキマ妖怪のように自由には扱えないものの、存在と消失、生と死の境界を扱うくらいは容易な事だ。
みるみるうちに輝の体は再構築され、傷ひとつない元の体に戻った。
輝はクルスの腕に抱かれ、スゥスゥと寝息を立てて眠っている。
「ごめん・・・ごめんね・・・・輝君・・・・・」
クルスは泣きながら、輝に謝った。
輝は、ただ静かに、無防備に、眠っていた。
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