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輝が、有人に恋愛感情を抱いている事は・・・既に私は知っている。
今まで何度もそういう素振りを見てきたし、悪いが友人に恋の相談をしているのを盗み聞いた事もある。
きっと輝は今後、私にとって厄介な恋敵へと変貌するだろう。
そして有人の心が少しでも動いたとき、私の存在価値はなくなるのだ。
どんな犠牲を払ってでも、有人の心を守らねばならない。
そう、どんな事をしようとも・・・・
大妖怪クルスの中で、大きな炎が燃え盛った。
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次の日の事である。
放課後、空が薄暗くなりだした頃。
輝は、早足でいつもの帰り道を歩いていた。
クルスは音をたてず、輝の背後へ現れる。
突如後ろに感じた気配に輝は驚いて振り返る。
「・・・! ・・・・・クルスさん・・・・」
「こんばんは、輝君。 あなたに聞きたいことがあるのだけれど、いいかな?」
「・・・・・な、なんですか・・・?」
輝は怪訝そうにクルスを見る。
「あなたは、昨日有人にチョコレートを渡した。あれはどういう意図?」
「・・・『バレンタイン』だから、です。鬼道監督の事が好きだからです。」
「それは人間が持つ『愛情』とか言う感情?」
「当然です!僕はあの人の事を愛しているんです!」
「へぇ、そんな覚悟を持っているとでも言うの?有人は私の物だというのに?」
「それでも僕は、諦めることはありません!!クルスさんにも譲れないんです!!」
強い瞳でクルスを睨み、輝は半ば叫ぶように言った。
その言葉は、クルスの逆鱗に触れる。
「なら、有人と私の幸せのために死ね!!」
黒棟クルスはすばやく狼の姿へと変化し、輝に襲い掛かった。
単なる脅しではなく、本気の妖怪らしい殺意を持って。
「・・・・・っ?!」
輝は走って逃げ出そうとするが、人間の速度などたかが知れている。
クルスは輝に飛び掛り、あっという間に押し倒してしまった。
「僕を・・・殺すんですか?」
「そうしてほしいか?」
「嫌だといっても無駄ですよね・・・。もういいですよ。」
「随分と潔いガキだな。お前はそれでいいのかい?」
「だけど、そんな事をしたら・・・鬼道さんに何を思われるか分かりませんよ」
「ッ!!!」
それは嫌にクルスの心に刺さった。
人間を・・・・しかも、彼の教え子を殺したら・・・・あの人は何を思うだろうか・・・
だがクルスにはもう、そんな事は関係なかった。
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