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ヘビとの節分。

節分。2月4日。
豆まきと恵方巻きを食べる、縁起を担ぐ伝統行事がある日。
俺と同居人の蛇人……マジマジと見ると、蛇の顔とヒトの上半身の骨格、下半身はその名の通り大蛇と同じ長さと太さを誇る。具体的に言えば、体長は6mくらいだと彼から聞いた。体重はかなりあるらしいが、その数値は多分俺の何十倍もあると思う。
俺はどこにでもいるような、細身の人間だ。身長は170ちょい、体重は59と60を行ったり来たりするような、もやしと呼ばれるタイプと言えば想像に易いだろう。
「恵方巻きが夕飯って……。」
そんな巨大な同居人にジト目で見られるが、俺が実家で生活してた頃は恵方巻きに味噌汁が節分の食卓に並んでいたので、それを踏襲したまでだ。非難されるとしたら、量が少ないことか?
「まあまあ、これでも高いんだからしょうがないだろ。あと、食ってる最中は喋っちゃダメだからな。」
温かいほうじ茶と、醤油を注いだ小皿を用意しつつ、俺は恵方巻きのパックを開ける。海鮮メインの恵方巻きではあるが、太くて大きい。丸かぶり寿司とはよく言ったものだと感心しつつ、恵方を向いて口に含む。
噛み切れない海鮮類に苦戦しつつ、一度口を離してお茶を含むと ほっこりとした温かみが口の中に残った米粒を流していく。ああ、幸せだなあと思いつつ、またかぶりつこうとした瞬間だった。
「じゃあ、いただきまーす。」
同居人の声がしたと思ったら、視界が一瞬ピンク色に染まった。その直後、身体が宙に浮く感覚がして、俺が恵方巻きのように丸かぶりされていると気づくのに数秒を要した。
「ちょっ、おまっ、ぐ……ぇっ」
驚きを隠せず足をばたつかせて抵抗するも、同居人は何も言わずに何度も顎を開閉し、俺を味わうように噛み締められる。牙が身体に食い込み、思わず変な声が出てしまったが彼はそれを笑うことなく、黙って味わっているようだ。
「このっ、俺は食い物じゃないんだか……らッ!」
手を同居人の大口へと自ら入れて、力を入れて上顎を押し上げようとする。少し開きそうな兆しを見せたが、それは予想を反して突然大きく開いた。
「おわああああぁぁぁッ!」
力を入れていた反動が思いっきり来て、そのまま口外へと自ら飛び出す。ゴロゴロと転がって、唾液にまみれた身体が窓にぶつかり止まった後、同居人が鎌首をもたげて此方を睨む視線と俺が見上げる視線が合った。……その目は、確実に捕食者の目をしている。
「あ、え、ちょっと……がっ、げ、 ぐぁッ……」
起き上がろうとした俺の身体を引き寄せ、とぐろの中に閉じ込め、即座に締め上げてくる。苦しい、熱い。漏れる声が彼の嗜虐心を煽るのか、口角が少し上がったように見えたが、それも少しの間だけ。その後、とある映画の一シーンのように口を大きく開いて俺に見せつけてきた。
「あ……ぁ……」
ピンク色の食道が奥まで見える。唾液が垂れてきて、俺の顔に掛かる。まともな思考はできないが、意識のあるまま丸呑みにされるという結末は確実に予想できた。その結末は直ぐに現実となり、無情にも俺は頭から一呑みにされていく。
「ぅ  ぎぃ……」
抵抗する体力は殆ど奪われ、食道の筋肉が俺を奥へ奥へと運んでいく。ピンク色が段々と暗い色に変わっていき、唾液に塗れた服が重く、身体に張り付く。
「や、だぁ…… だし てぇ、」
嫌だと思ってはいる。が、その中でこの状況を享受している自分が時折声を上げ、苦しいながらも眠気に襲われているような、意識が遠くへ引っ張られるような感覚。
びく、びくと身体が痙攣しているのがわかる。体液が身体にまとわりつき、俺を胃へと送り込む蠕動が少しずつくす
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