ザアァァァァ…!!
雨はどんどん強くなる、俺はそれに突き動かされるようにしてひたすら歩く。
しばらく進んだだろうか、遠くに何かが見えてきた。
『…あれは…洞窟!!』
無意識に足取りは軽くなり、洞窟内へと駆け込む。
雨をしのげる場所を探していたら、目的地にたどり着いたとは、やっぱり今日は運が良い。
いや、もちろん目的地かどうかは確証は無い。
ただ、何となくそう思っただけである。
俺はびしょびしょになった服を脱ぎ捨てると、背中のリュックに入れてある予備の服…これも少し湿っているが…
予備の服を着て、洞窟内を探索する準備を整えた。
意気揚々と洞窟の奥へと歩いていく俺。
だが、その時、洞窟の外から覗いていた赤色の光には…残念ながら気がつかなかった…
…ザッ…ザッ…
静かな洞窟に響く足音は壁や天井に反射しまくってここまで五月蝿い音になる。
俺は無意識に忍び足になり、なるべく音を立てないようにしていた。
それにしてもこの洞窟は広い…今更気がついた事だが、今歩いている所でも横幅は30m、高さは20m近くあった。
もう雨の音も聞こえない、聞こえるのは俺の足音ぐらいだろうか。
それは俺の心を急激に締め付け、深い孤独感に包まれてしまう。
『…ん…?』
突然広間に出た、ただでさえ広いのに、さらに広くなって余計に孤独感は増すばかり。
…正直来なければ良かったとすら思っている。
広間の奥に何かが見えた。
洞窟内の僅かな光がそれに反射して紫色に輝く。
『…魔水晶…』
近寄ってみると、それは余りにも巨大な魔水晶だった。
高さ30mと言えば分かりやすいか、そんな結晶が地面から大量に生えている。
下を見ると、小さめな結晶も大量にあった。
『…これぐらいなら…なんとか持ち帰れるか…』
俺は30cmぐらいの魔水晶をつかみ、丁寧にナイフを使い、抜き取ってみる。
それは俺の腕に抱えられ、鈍い輝きを放った。
『…これを売れば…一億…いや…もっと行くかもしれない…』
目の前に広がる大金、豊かな未来がそこに見えていた。
《…満足したか?》
『誰だ!!?』
突然背後から静寂を切り裂いて聞こえた声は、俺の心臓を跳ね上がらせる。
慌てて振り向く、そして…絶望した。
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