…ザッ…ザッ…
…この足音は僕の足音ではない、何者かが、居る。
そして、この足音は《僕に向かって近づいてきている》のだ。
慌てて周囲を見回すが、姿は見えなかった。
まだ、かなり遠くに居るのかもしれない。
だが、山の上から聞こえているのは分かった。
麓を見据え、山を一気に下り始める。
ザザザッ!!
坂で勢いが付き、周囲の木々が流れ、風を切り裂く。
もちろん、これはかなり危険だ、一度転んだら命の保証は出来ない。
木々の隙間を縫い、ひたすらに下り続ける、それでも、麓はぼやけている。
下っているような感覚もしなかった。
ザザザザッ!!
柔らかい疾走感。
そんな言葉が良く似合う。
僕はどれだけ走り続けただろう、無意識に、ブレーキをかけて、僕は止まる。
…ザッ…ザッ…
まだ聞こえる!!
音はさっきよりも近づいている、あれだけ走ったのに、なぜ…!?
僕は振り向く、音は聞こえるが、やっぱり姿は確認出来ない。
…ザッ…ザッ…
明らかに近づいてきている、僕はまた、下へと走り出した…
…ドサッ…
走り出した僕に、突如何かがぶつかった。
白い壁のような何か。
身体が弾かれて、地面に倒される。
『…何でこんな所に迷い込むんだろうねぇ?』
《それ》は呆れたように言った、僕は慌てて起き上がり、姿を見る。
『…まあいいよ、来ちゃったものは仕方ないさ…』
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