竜の体内は真っ暗で、熱気でむんむんしている。
鼻が曲がりそうな獣臭さ。それに混じって、かすかに酸の匂いがする。
重い竜の鼓動。切れ切れに聞こえる嗚咽。
不意に、甲高い悲鳴が暗闇に響く。
身の毛もよだつような悲鳴で、それと一緒に粘膜をかきまわす激しい水音がする。
悲鳴は二度、三度と繰り返された。が、それも急にふっつりと途絶え、何かに口をふさがれたような、くぐもったうめき声にとってかわられた。
そしてその後は、竜の鼓動と、肉壁がこすれる粘ついた音、ごく小さな喘ぎが聞こえるだけだった。
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