クラッズたちが見ている前で、竜の口が閉じられる。
竜はもぐもぐと口を動かし、その間小さなくぐもった悲鳴が、断続的に漏れ聞こえた。
が、それもほんのしばらくの間だった。竜が喉を動かすと、悲鳴もやんだ。
代わりに竜の首が少しふくらんだが、そのふくらみも首を下り、やがて腹へと消えた。
ドワーフはそれっきりだった。
「形見だ。」
そう言って竜がぺっと何かを吐き出す。
よだれまみれのゴーグルと下着が、残りの衣服の上に落ちた。
残された3人は、黙然とドワーフの遺品を見つめている。
その持ち主はもうこの地上にはいない。毛一本残さず、竜の腹の中に納まっている。
まるで白昼夢を見ているような気がした。
「約束だ、案内してやる。……ついてこい」
そう言い捨て、竜は背をむけダンジョンの奥へと歩き出した。
3人はあわててドワーフの遺品をかき集めると、竜を追いかけ、ダンジョンを進んでいった。
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