クラッズは、かばうように立つバハムーンの後ろですすり泣いていた。
(どうしてこんなことになっちゃったの?)
別に特別悪いことなんかしていない。
ただいつものように図書室の掲示板を見て、受けられそうなクエストを受け、解決しようとした。
先生の言いつけも守ったし、決して無理もしなかった。第一、クエスト自体そんなに難しくないって先生も言っていたのに。
それなのに、今目の前で大切な仲間の一人が、竜のおもちゃにされてる。食べられそうになっている。
――誰か一人を儂に差し出せ。そうすれば道案内をしてやる。断れば皆喰ってやる。
クラッズはしゃくりあげ、こみあげてくる涙を手で拭った。
いくら道に迷っていたとはいえ、竜にかなわないことがわかりきっていたとはいえ、脅しに屈したことを心底後悔していた。
だが、今更悔やんだところで、もうどうしようもない。
すでにドワーフはズボンも靴も脱ぎ、下着一枚で立っている。
その姿を竜は本当に楽しそうに見下ろしていた。
吐き気がする光景だった。
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