再び消化が始まってから数時間過ぎた。
森の湿った夜気の中、床についていた竜は、ふと自分の腹、ちょうど胃のあたりに耳をあてた。
眼を閉じると、伸縮する胃壁と粘液がからむ音や、自分の鼓動が聞こえる。
さらに耳を澄ますと、それよりもずっと小さな、自分のものではない鼓動。
また、竜の鋭敏な感覚は、胃袋に押しつぶされた獲物の小さな抵抗、
胃から腸に流れ込む、かつてドワーフの身体の一部だったものまで感じ取ることができた。
竜は満足し、首を戻した。ドワーフはまだ生きている。
楽しめるのはあと数時間くらいだろうか。子供の割にはよくもった方だった。
(これだからやめられん)
自分の体内で獲物が生きながら溶かされ、吸収されていくこの感覚が、竜は好きだった。
抵抗できない弱者が無理やり取り込まれ、肉のひとかけらも余さず自分の血肉と同化されていく。
うろこの一枚一枚、血の一滴一滴へと変わっていく。
これであの小僧は完全に俺のものになる。そう思い、生き物の命を丸ごと支配できた充実感に、竜は笑みを浮かべる。
御馳走様。
ドワーフが与えてくれた栄養と快感への礼をこめて、竜は小さくつぶやいた。
そして腹の中に感じる小さな鼓動が、目覚めたあとも続いていることを願いながら、目をつむった。
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