「……あっ、帰ってきたわ! ベロニカも一緒よ!」
「あぁ、よかった! 無事でなによりです! 戻りが遅いので心配しましたよ!」
森の一画に設けられた野営地で二匹の到着を待っていたのは、お腹をぷっくりと膨らませたジャローダと、長く尖った耳に後頭部から生える四つの房、目の周りを覆うマスクのような黒い模様、左右の手の甲と胸に一本ずつ付いたトゲ状の爪が特徴的な、二本足で立って歩く犬のポケモン――ルカリオだった。二匹の前に立った森の主のベロベルトは高々と手を上げる。
「ただいま! ……ははっ、心配性だなぁ、ブルース君は! ちょっと予定の時間をオーバーしただけじゃないか!」
苦笑いしながら頭の後ろに手をやる森の主のベロベルト。その隣に並んだベロニカも同様の表情で頷いてみせる。
そう、ブルース。このルカリオこそ、ちょうど一年前に彼が窮地から救い出したリオルが警官として立派に成長を遂げた姿だった。
「それはそうと、どうでした!? ご馳走にはありつけましたか!?」
興奮気味に尋ねたルカリオは二匹の顔を交互に見る。
「もちろん! オイラとベロニカとで一匹ずつ胃袋に収めさせてもらったよ! 新鮮なお肉をありがとう! ごちそうさまでした!」
舌なめずりをして満足の意を表明する二匹。ルカリオは高々と両手を上げる。
「やった! 苦労して追跡した甲斐がありました! それに、とんでもない! お礼を言わなければならないのは僕の方ですよ!」
そこで言葉を切った彼は直立不動の姿勢になる。
「……改めまして、僕とコユキを助けてくださりありがとうございました! 心よりお礼申し上げます! このご恩は一生忘れません!」
ビシッと敬礼するルカリオ。同じポーズをした森の主のベロベルトは大笑いする。
「あははっ、恥ずかしくなっちゃうからやめてよ! ウンチしていただけじゃないか! でも……どういたしまして! ブルース君の気持ち、しっかり受け取ったよ!」
森の主のベロベルトは、たっぷりと脂肪が詰まった巨大な腹をポンポンと叩いてみせるのだった。
「ところで……ブルース君。こいつらって何者なの? 詳しい話も聞かずに食べちゃったけど? よかったら教えてくれない?」
「あっ、それ私も知りたいわ!」
「分かりました、お教えしましょう」
まだ生きているらしい。ジャローダの目の前にしゃがみ込んだルカリオは、モゾモゾと蠢き続ける彼女の腹の膨らみに手を当てる。
「……こいつらは賞金稼ぎ。言うなれば、お尋ね者を専門に狩って生計を立てているハンターです。僕たちとも協力関係にありましてね。彼らの支援なしに討伐できなかった賞金首の数は計り知れません」
彼女はヒューと口笛を吹く。
「あら、中々のナイスガイじゃないの! 惚れちゃいそう! ……で? 裏の顔は?」
耳元で囁くジャローダ。ルカリオの顔に影が差す。
「……殺し屋。お金のためなら命を命とも思わない冷血漢どもでした。こんな奴らと組んでいたと思うと……ゾッとしますよ」
硬い表情で背筋を震わせるルカリオ。彼女は心の底からの溜め息を吐き出す。
「はぁぁ……! 凶悪犯に始まり、違法伐採者だの工作員だの、挙句の果てに殺し屋だの……! どうしてこうも私たちの森を訪れてくるのはロクデナシばかりなのかしら!? もう嫌になっちゃう!」
それには歴とした理由があった。首を左右に振ったルカリオの口の端に苦々しい笑みが浮かぶ。
「逆ですよ。あなた方の生活環境が壊されないよう、街の住民が森に立ち入ることは特別な場合を除いて禁じられているのです。つまり、森の中をうろつき回っている奴
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