「ふぅぅ、やっと一息つけたぜぇ……」
それから五分後。少し離れた場所に生えていた大木の根元で花を摘み終えてスッキリした顔の獣が約一匹。ルガルガンだった。
まだまだ出発までには時間があった。ついでに小用も済ませるべく膀胱に力を入れた瞬間――
ベチャッ!
ネバネバした生温かい液体が脳天に落ちてくる。
「……んっ? なんだ?」
反射的に樹上を見た彼の視界に入ってきたのは――顔めがけて一直線に飛びかかってくるピンク色の大蛇だった。あまりの出来事に彼はポカンと口を開けてしまう。
それが旺盛な食欲で何でも食べてしまうベロベルトの舌であること、さっき頭に降りかかってきたのがベロベルトの唾液であること。これら二つを同時に理解して顔を青ざめさせた直後――
ジュブブブブッ!
開いたままだった口の中にベロがねじ込まれる。
「ごがっ……!」
排便中を狙われては手も足も出なかった。喉の奥深くまで挿入された拍子に転倒してしまうルガルガン。そこをすかさずベロで絡め取られ、グルグル巻きのミイラにされてしまった彼の股間から、限界を超えた恐怖が黄金色の奔流となってほとばしる。
小便を漏らし終わるなり引っ張り上げられた先で待ち構えていたのは――ベロの持ち主の大きな蝦蟇口。その中に引きずり込み、
バクンッ!
勢いよく口を閉じたベロベルトは、一本も歯のない顎でクチャクチャと咀嚼することにより、獲物を麻痺性の唾液に塗れさせていく。
汗臭く獣臭い口の中で飴玉のようにしゃぶり回され、瞬く間に意識を舐め溶かされてしまうルガルガン。やがてピクリとも獲物が動かなくなったのを感じ取ったベロベルトは顔を上向け、そして――
ゴックンチョ!
喉を鳴らして腹に収めてしまうのだった。舌なめずりして小さくゲップを漏らした彼は幸福感に満たされる。
硬い岩の体も彼の胃袋の前ではフライパンの上に落とされたバターと同じ。そこで跡形もなくトロトロに溶かされたルガルガンは、一滴残らず腹の底へと流し込まれていったのだった。
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