「出会って早々で悪いが……道を開けてもらおう。彼女に用があるのでね」
顎を上げて、見下した目をベロベルトに向けるリーダー格のキュウコン。その要求に従った結果は火を見るよりも明らかだった。ベロベルトは両手を広げて立ちはだかる。
「ダメ! どうせ殺すんでしょ!? 彼女から話は全て聞かせてもらったよ! 君たちみたいな輩に命を狙われていることも含めてね!」
顔を見合わせる三匹。リーダー格の一匹はチッと舌打ちする。
「貴様には関係ない話だ。我々の紛争に干渉しないでいただきたい!」
全身の毛を逆立てた彼は歯を剥き出しにする。
「もう一度だけ言う。今度は警告だ。……道を開けろ。さもなくば力ずくで通させてもらう!」
威嚇されるも右耳から左耳だった。親指の爪で下まぶたを引っ張った彼は、思いっきり舌を出してみせる。
「ベー、だ! ……やなこったパンナコッタ! そんなに通して欲しけりゃオイラを倒して行きなよ! もっとも、行き着く先はオイラの胃袋だろうけどね!」
お腹をモミモミと揉みながら挑発するベロベルト。不気味な笑みを顔いっぱいに湛えたリーダー格のキュウコンは、右前に立っていた一匹に目配せする。
「愚か者め! 我々に歯向かったことを後悔させてくれるわ! ……同志ソルビン! やれ!」
「へへっ、任せとけ! ……おい、テメェ! こっちを見ろ!」
テメェ呼ばわりされる筋合いはないんですけど! 彼はムッとしながらも言われたとおりにしてしまう。
「……って、いけない! しまった!」
「ギャハハッ! 掛かったな、アホが! これでテメェも俺様の操り人形だぁ!」
私たちには目を合わせた相手の心を支配する能力が備わっているんです――。
そこで彼女の言葉を思い出すも手遅れだった。あまりの脇の甘さに爆笑を禁じ得ないキュウコンたち。ベロベルトの目の前で青い瞳が怪しい輝きを放ち始める。
勝利を確信する三匹。だが――間もなくして彼らの喜びは不安に変わる。
「おい、ソルビン! いつまで掛かっている!? さっさと仕留めろ!」
「どっ、どういうことだ……!? 何度やっても見えない壁に阻まれる……!? これは一体……!?」
隣の一匹に急かされるも、その声は届いていないようだった。寒くないにもかかわらず、身震いしながら一歩ずつ後ずさりしていくキュウコン。やがて技を出す気力を完全に使い果たしてしまった彼は――ショックのあまりヘタヘタと座り込んでしまうのだった。
「えっ? もっ、もしかして……これで終わり? ちっとも操られている感じがしないんだけど?」
拍子抜けにも程があった。両手両足とベロをブラブラと揺らした彼の頭に無数の疑問符が浮かぶ。疑問符が電球に変わったのは――自身の顔に塗りたくられた粘液の存在を思い出した次の瞬間だった。
「あっ、分かったぞ! 眉唾だ!」
ベロリ、ベロリと左右の目の上を舐めるベロベルト。三匹はギョッとした顔を向ける。
「いやぁ、彼女だけど悪戯好きな子でねぇ! 別れ際にチュウする振りをしてオイラの顔を舐め回して帰って行ったんだ! まさか本当に効果があるなんて! 驚きだよ!」
「そっ、そういうことか……! あのメスガキがぁ……! 余計な真似しやがって……!」
ソルビンと呼ばれた一匹は怒りに表情を歪ませる。
ありゃ? これって……もしかしてチャンス!? そう思い、ベロを伸ばす時のポーズを急いで取り始める彼だったが、三匹も考えは同じだったらしい。リーダー格の一匹が声を張り上げる。
「次善の策で行くぞ! 距離を取れ!」
「あっ、ちょっ待っ……! くそぉ! もう少し
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