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血塗られた記憶【下】

「……はい、どうぞ。コユキちゃん。おかわりは何杯でも自由だからね?」
「ありがとうございます。恐縮ですわ」
 三杯目となるココアを手渡すベロベルト。沈痛な面持ちで受け取ったキュウコンは、一口だけ啜ってソーサーの上にカップを置く。
「……父の話をする前に、まずは私たちについて知っておいてもらいたいことがあります。いきなり質問で申し訳ないのですが……二年前まで私たちは雪山で群れを作って生活していました。何匹くらいの群れだったと思います?」
「オイラは群れを作らないからよく分からないけど……ボスがいて、偉いさんがいて、その下に庶民がいるんでしょ? 数十匹は下らないんじゃないの?」
 三杯目の紅茶をカップに注ぎながら答えるベロベルト。軽く目を閉じた彼女は何度も小さく首を縦に振る。
「とても良い間違いをしてくれました。正解は数匹、多くても十匹程度なんです」
「えっ……冗談でしょ? なんでそんなに少ないのさ?」
 危うくケトルを落としかけた彼は大きく身を乗り出す。
「ボスも、偉いさんも、庶民もいないからです。レナードさんもそうですが……狐である私たちには誰かに服従するという概念がありません。ですから、主従関係に基づく大きな群れは作りようがないんです」
 なんとなく分かる話だった。腕組みをした彼は唸り声を上げる。
「うーん……なるほど。そういえば前にレナードさんが話していたなぁ。大勢で集まってワイワイ盛り上がるのは嫌いだって。本当に気心の知れた友達と数匹だけで集まって、静かにお酒を飲むのが何より楽しいってね。こういうのも関係あるのかな?」
 真っ白いキュウコンは小さく頷く。
「あると思いますよ。かく言う私も大勢で集まるのは苦手です。お互いの顔が見えない規模の集まりになるとソワソワして落ち着きませんわ。これも狐の性なのでしょうね」
 カップを持ち上げた彼女はココアを口に含む。
「……そうそう。あと、主従関係といえば、隊長のウインディの命令に忠実に従うガーディのお巡りさんの姿を見た時は、相当なカルチャーショックでしたわ。誰かに命令なんてしようものならケンカになるだけでしたからね」
「あぁ、それも分かる気がするなぁ。自由奔放に生きているもん、レナードさん……。束縛されたり命令されたりするのは大嫌いだろうね。そっかぁ、コユキちゃんたちも一緒かぁ……」
 頭の後ろで手を組んだ彼は洞窟の天井に目を泳がせる。
「とすると……小さな群れが何個も乱立していたワケだ? ははっ、怖い状況だね、こりゃ。しょっちゅう縄張り争いとか起こっていたんじゃないの?」
 大正解だった。彼女は大きく首を縦に振る。
「おっしゃるとおりです。それぞれの群れが好き勝手に縄張りを設定するものですから、小競り合いが絶えませんでした。他の群れのキュウコンと鉢合わせることも茶飯事でしたわ。幸い、周りの群れは温和な個体ばかりでしたので、一度もトラブルには発展しませんでしたが……悪意ある個体に目を付けられたら最後ですからね。他所の群れに出くわしたら、眉に唾を塗りたくって全速力で逃げ帰れと、耳にタコができるほど言い聞かされたものです」
 彼女は両前足を目の上に押し当てる。
「最後って……いったい何をされちゃうの?」
 ベロリ、ベロリと長い舌で目の上を舐めながら尋ねるベロベルト。床から一枚の枯れ葉を拾い上げた彼女は、それをちょこんと額の上に乗っけてみせる。
「化かされて操り人形にされてしまいますわ。レナードさんに未来の出来事を見通す能力が備わっているように、私たちには目を合わせた相手の心を支配する能力が備わっているんで
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