「この一瞬で終わりだぁ! 死ねぇぇぇぇぇい!」
強靭な後ろ足で地面を蹴って突進するオーダイル。まるで瞬間移動のようだった。あっという間にベロベルトの目と鼻の先に迫った彼は、丸太のような右腕を振り上げ――
「ラァッ!」
巨大な拳をベロベルトの脳天めがけて勢いよく振り下ろす。
「くぅっ……!」
なんとか身をひねってギリギリのところでかわすも、その一撃で終わる訳がなかった。続けざまに右の後ろ足で踏み切って前宙を決めたオーダイルは――
「アクアテール!」
一回転すると同時に太い尻尾で薙ぎ払ってくる。
「……それっ!」
くるんっ!
もう左右にも後ろにも逃げ場はないと悟り、一か八か前転で回避を試みたベロベルトだったが、その選択は吉と出た。上手い具合にオーダイルの股の間をくぐり抜けた彼は、思いがけず相手の背後を取ることに成功する。
「ちょこまか逃げ回りやがって! ぶっ殺してやる!」
反撃のチャンスだった。すぐさま立ち上がって口を半開きにするベロベルト。相手が振り向いて突撃してきた瞬間、彼は冷静に狙いを定め、
「させるもんか! ベロォォォォォン!」
進化して更に長くなった舌を素早く伸ばし――
ベチャッ! ……ネバァァァァァァッ!
オーダイルの顔を力いっぱい舐め上げる。
「ぐぁっ!?」
目潰しを食らう形になり、両手で顔を覆って膝をつくオーダイル。この隙を逃す手はなかった。巻き取った舌を口の中に仕舞ったベロベルトは、乾坤一擲の大勝負に打って出る。
「今だっ! まるくなる!」
丸々と太ったエーフィとブラッキーを大便にすることで得た養分がギッシリと詰まった胴体に、五体と尻尾を引っ込めて完全な球体となった彼は、
「からの、ころがる!」
砂の地面の上を転がり始め、一気に加速していく。
「……ちぃっ! 気色の悪い真似しやがって! バラバラにしてやらぁ!」
顔中に塗りたくられた臭いベトベトを拭い去って視界を取り戻す頃には、そう簡単に追い付けない場所まで逃走を許してしまっていた。立ち上がって大顎を開くオーダイル。彼の喉奥から青白い光が放たれ始める。
狙うは砂煙を巻き上げながら湖畔を転がる桃色の大玉だった。接近戦を諦めた彼は、口から撃ち出す高圧水流でベロベルトを仕留める作戦に出る。
「……来た! くそぉ、どうか当たらないで!」
祈るしかなかった。狙いを定められないよう蛇行運転を開始するベロベルト。身を隠せそうな岩を運よく近くに見つけ、その裏側に回り込んだ次の瞬間――
「くたばりやがれ!」
ズガァァァァァァン!
オーダイルの口から発射された超高圧のジェット水流が直撃し、岩は跡形もなく爆発四散する。
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
あと一瞬でも遅ければ自分が粉砕されていたに違いなかった。彼は恐怖のあまり絶叫する。
「ちっ、手前の岩に当たったか! だが……次は外さねぇ!」
すかさず次の一撃を繰り出しにかかるオーダイル。危機的な状況に変わりはなかったが、
「よし、今ので分かったぞ……!」
ベロベルトは一つの希望を見出していた。相手の攻撃の隙に気付いたのである。
それは発射の直前にオーダイルの喉奥から閃光が放たれること。その瞬間に急旋回すれば、
ヒュッ! ……バシャァァァァァン!
「ぐぅっ……!」
決して回避は不可能ではなかった。爆発で巻き上げられた砂と大量の水飛沫を浴びるも被害は軽微。グッと堪えた彼は速度を落とすことなく転がり続ける。
「でも、このままじゃジリ貧だ……!」
しかし、その速度が思うように出なかった。砂浜のため地面に力が吸収されてしま
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