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ウンのツキ【下】【大】

 ブオォォォォッッ!
「んんっ、くっさ……!」
 安らかな寝顔を覗かせていた洞窟の主の目を覚まさせたもの――それは大きな屁の音と臭いだった。親指の爪を鼻の穴に突っ込んだベロリンガの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
「ふぁーぁ、よく寝た……。もう昼過ぎだろうなぁ……って、おっ……?」
 伸びをして大あくびをするベロリンガ。そこで何かに気付いた彼は、すっかり大便になったカップルの二匹が詰まった下腹部に手を当てる。
「ウンチしたくなってきたかも……!」
 お通じが来たのだった。パチリと目を開けた彼は期待に胸を膨らませる。
「こうしちゃいられない! お花を摘みに行くなら今のうちだ! えーっと、紙、紙。お尻を拭く紙を用意しないと。この中に何かないかなぁ……?」
 体を起こし、昨夜に食べたブラッキーが背負っていたナップサックを漁り始めるベロリンガ。中に両手を突っ込んで探すこと数十秒後、
「……おっ! あった、あった! ツイてるぞ!」
 布製の小袋の中に、十枚近い長方形の紙切れが無数の丸い金属片と一緒に入っているのを見つけ出す。全て引っ張り出して右手で握り締め、床に左手をついて立ち上がるベロリンガ。それが街で流通する最高額の紙幣であることなど、彼は知る由もなかった。
 ズシッ!
「……うぉっ!? 危ない!」
 両足で床を踏みしめた途端に抱いたのは、お腹の底に響くような重量感だった。危うくバランスを崩しそうになるベロリンガ。歪に膨らんだ下腹部に視線を落とした彼は苦笑する。
「ははっ、二匹分だけに凄い量だ! ……この中には済ませない方が良さそうだね。絶対に溢れちゃうだろうから。いつもの場所でスッキリとウンチしたい気分だから、今日は使わないけど!」
 明け方に小便に立ったついでに中身をコンポストに放り込んでおいたのだった。昨夜に食べたブラッキーにトイレとして使わせたバケツを元の場所に仕舞ったベロリンガは、洞窟の出口に向かって歩き始める。
「さぁて、いっぱい食べて蓄えたことだし、ウンチした後は一日のんびり過ごすぞぉ!」
 鼻歌交じりに通路を進んでいくベロリンガ。しかし、洞窟の外に足を踏み出した次の瞬間――
「うっ……!」
 猛烈な立ちくらみのような感覚に襲われる。灼熱の夏の日差しを浴びたからだった。むせ返るような熱気に包まれた彼の体中の汗腺という汗腺からドッと汗が噴き出す。
「ふぅ、今日も最高に暑いねぇ……。こうやって立ち止まっていても暑いだけだから、早く行って涼むとするかぁ!」
 自分の体に鞭打って歩き出すベロリンガ。目指すは裏山の頂上に広がる果樹園の中に拵えたばかりのトイレ、もとい肥溜め。最後に用を足したところで満杯になったので、新しい穴を掘っておいたのだった。
 伸び放題になった雑草を大きな足で踏み潰しながら進んでいくと、やがて彼の目の前に登山道の入口の目印である大きな岩が現れる。その脇を通り過ぎ、彼自身が往来を繰り返すことで自然にできた山道に足を踏み入れるベロリンガ。しばらく斜面を歩いてみて思い知らされるのは――
「ひぃっ、ふぅっ……! 予想はできていたけど……とんでもなく体が重い……!」
 自分がデブの中のデブになっているということだった。みるみるうちに息が上がっていき、全身から滝のように脂汗が流れ出す。
「はぁっ……! あと、改めて思うことだけど……」
 彼は下腹部の膨らみを両手で抱える。
「こっ、この二匹もメチャクチャ重い……! ウンチになってもボリュームたっぷりだね、君たち……!」
 増えに増えた脂肪、そして溜まりに溜まった大便の重さは相当なものだった。暑さと
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