「はあ・・・はあ・・・」
「よし、今日はここまでだ」
ふわっとした藍紫色のショートヘアを持った少年、影山輝は特別レッスンを受け、それを終えていた。
まだサッカー部に入ったばかりで、体力が衰えているため、部活後はスタミナ作りのメニューをやっているのだ。
輝は手で汗を拭いでいると、鬼道監督が白いタオルを差し出す。
「これで拭くんだ」
「ありがとうございます・・・」
白いタオルはやわらかで、顔を埋めたいぐらいの心地だった。
顔を全体的に拭くと、鬼道が口を開く。
「やればやるほど基礎体力が伸びている・・・さすがだな」
「そ、そんなことないですよ・・・///」
半透明の緑の色を透かして見える真紅の瞳はなにもかも見通せそうだった。
輝の顔に熱がこもる。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「いっいえ!なんでもっないですっ!」
慌てて顔をタオルで照れ隠しをする。
なんでこんなにかっこいいんだろうこの人は・・・。
「今日はもう遅い。気をつけて帰るんだぞ」
「は、はい。今日もありがとうございました!鬼道監督!」
「ああ、気をつけて帰るんだぞ」
鬼道は優しく微笑むと、ぎこちない背中を最後まで見守った。
現在の時刻は七時。
月が闇の世界を照らし、街灯がアスファルトの道をぼんやりと照らす。
最近は肌寒く、マフラーにコートを着込んでいる。
しかし、寒い時期の面白い事は、白い息。
輝は中学一年生のためか、白い息を出すのに面白がる年頃だ。
そんな自分に恥ずかしくもなる年頃でもあるだろう。
と、その時、気配を感じる。
周りをよく見る性格の輝にとってはとても不快になるものになっていた。
キョロキョロと周りを見渡すが、誰もいない。
べっとりとした気配は輝に粘りつくようにとれない。
そして違和感をかんじる。
体が重い。眠気が来る。
目がかすむ。世界が揺れる。
「う・・・・・・」
輝の意思は徐々に薄れていった―――。
「眠ったか?」
「眠っている。睡眠ガスはちゃんと効いたようだ」
「よし、つれていくぞ。雷門サッカー部は確実に潰さねばならん」
彼の歩いた跡は、空しく残っていなかった。
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