「う、うわあああああああああ!!マルムが食われちまった!!や、やだあ!」
残りはいじめっ子は、マルムが呑み込まれたのを見て、恐怖をはき散れんばかりに大きくし、そして情けなく逃げていく。
「んー、逃がさないよ〜♪」
ゴーストの腕が伸び、彼らの帰路を遮る。
もうひとつの腕はぼくを縛っていたひもを切った。
手首をさすりながら立ちあがる。
「ひいっ!!」
「悪い子はお仕置きだからね♪」
さっきよりも比べ物にならないほどの大口をあける。
そして、いじめっ子達に向かっていく。
・・・・・・なんだよ。
ぼくのことをいじめてきた奴らじゃないか。
食われちゃえば、いじめなんか無い平和な生活ができるじゃないか。
いなくなるんだ。
にっくき奴らが。
・・・でも、なんでだろう・・・。
なんでぼくは・・・・・・。
泣いているんだろう・・・・・・。
ぼくは無我夢中でゴーストに突っ込んだ。
ゴーストは驚いたような顔をしてひるむ。
「っ・・・!?」
「フォ、フォティス・・・お前・・・・・・」
いじめっ子達も驚く。
そりゃそうさ、ぼくだって驚いてるんだから。
「逃げて!!」
ぼくは、必死に呼びかけた。
こんなに声が出たのは初めてかもしれない。
いじめっ子達はこくりと頷くと、丘の闇へ消えた。
そして、ゴーストが僕の目の前に振り返った。
怒ってるのかわからない。
感情が読み取れない。
ぼくは小刻みに震えながらも、ゴーストから目をそむけはしなかった。
「・・・・・・どうしていじめっ子を助けたのかな?」
ゴーストは無表情なまま首をかしげる。
「ぼくは・・・・・・たとえいじめっ子でも、知ってる人がいなくなるなんていやだった・・・・・・本当は、友達に、なりたかった・・・・」
ゴーストは黙った。
もしかしたら食べられちゃうかもしれない。
でも、ぼくの言うことに偽りはない。
「・・・・・・何を言ってるんだ!」
ゴーストはぼくの肩に手をポンと置く。
「え・・・?」
「実を言うと、私はそれに気づいてほしかったのだ!君は勇気を持っていなかった。だからいじめられていたのだろう?しかし君は今ここで勇気を見せた!きっと彼らとも仲良くなれる!」
ゴーストはにこりと笑った。
でも僕の眉間のしわは直らなかった。
「マルムはどうなるの?」
「大丈夫。君に免じて、助けるから♪彼を助けるかい?」
いったん伏せ、しばらく考える。
そして顔をあげた。
「マルムを、助けて!」
「了解♪」
あたりは光に包まれる。
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