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ヤクソク

僕が気づいた頃には、朝になっていた。
目を覚ましたのは朝露が葉っぱを滑り、僕にあたったから。
僕はまだ少し痛む体をさすりながらゆっくりと体を伸ばした。
いつの間にか姿が戻っているけど、どうでもいい。
しばらく休むことにした。
・・・寂しい。
ぽっかりと心に穴があいたようで。
僕は愛しい人の名前を呟いた。
「ティアル・・・」
と、その時だった。
目の前に気配を感じた。
風がざわめき、小鳥が騒ぎ。
一瞬警戒したが、僕はそれをみた瞬間にぶわっとこみ上げてくるものを感じた。
「ティアル!!」
森の真ん中に立つ女性が僕に微笑んでいる。
「テルド♪」
間違いなく彼女だ、でもなんで?
僕は彼女に抱きつこうと走り出した。
「だああっだめ!来ちゃだめえ!」
「え」
彼女の警告はすでに遅く、僕は彼女をすり抜け、地面を引きずるように倒れ込んだ。
「ナ、なんデ・・・」
「あらら、大丈夫?だって私幽霊だもの♪」
「え?」
彼は恐る恐る彼女に触れようとするが、やはりすり抜けてしまう。
そうか、やっぱり死んでしまったのか。
「でも、まだ私は貴方と一緒にいたいし、貴方も私が必要でしょ?」
「う、うン」
でも死んでしまっては食事も・・・。
いや、僕の幸せは彼女と一緒にいることだけだ。
「貴方が生まれてきて本当に嬉しかった♪ジニス博士に会いたいくらいね♪」
「・・・会ってみル?」
「え?」
彼女と行ってみたいと思った。
恩師に、僕の大切な人を会わせてあげたい。
「今どこにいるかはわからないけド、僕と一緒に旅をしようヨ!きっと楽しくなると思ウ!」
「テルド・・・!でも私のことは見えるかしら?」
「僕に見えて博士に見えないのかな」
「貴方と博士の目は違います〜w」
からかいあって、二人揃って笑い始めた。
きっとこれは奇跡だ。
抱くことはできないけれど、僕たちはつながっている。
神様っていうのが本当にいるんだなって思った。
ありがとう。



こうして僕らは、旅に出た。
僕の大切な人は幽霊だけれど、大切な人だ。
僕の人生を変えてくれた人。
ずっと一緒だ。
ずっと―――幸せに―――。


<END>


12/08/23 17:22更新 / ねじゅみ
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