彼女の体を優しく舐め上げる。
僕の体は外見は機械だけど、内蔵組織はほとんど同じ生き物と同じだ。
僕は彼女を喰らう。
「柔らかい・・・」
彼女の少し冷えた体を味わっていく。
でも心から伝わる温もりは変わらず、僕を癒してくれる。
「美味しいヨ、ティアル」
彼女の血液を優しく舐め上げる。
彼女の痛みを啜るように祈りながら、すがりながら。
「んっ・・・」
彼女がくすぐったそうにするのが可愛らしかった。
そしてゆっくりと彼女を頭からくわえ込む。
彼女を傷つけぬように、ゆっくりと呑み込んでいく。
傷口をきにして舐めながら。
「怖くなイ?」
口内に収まっている彼女に向けて声を響かせる。
「全然・・・安心する」
僕はよかった、というと彼女の体を喉奥に送り込み、彼女の全てを口内に収めた。
そして、足先まで優しく呑み込んだ。
喉肉を彼女が通る感覚。
戦時の時は何も感じなかったのに、心地よくて。
「気持ちい・・・」
ティアルは狭い喉肉を通り、呼吸が困難でも、それ以上に幸せだった。
彼の中にいることが。
そして無事、胃にたどり着く。
蠢く肉が彼女を優しく包み込む。
「ありがとう・・・テルド。貴方と過ごせて、本当によかっ・・・た・・・・・・・」
僕は彼女の消え入りそうな最期の声をしっかりと噛み締めて、泣きに泣いた。
「僕も・・・・だよ・・・・ティアル・・・・うっうウ・・・・」
嗚咽混じりになりながら、もう動かない彼女の体を取り込んだ。
雨は僕を冷たく濡らしながら、去っていった。
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