灰の大地。紅の森。赤の空。
噴煙が巻き上がり。
爆音が響き。
赤に汚れた大地を人々が駆け、刺し。
タンクが火を吹き、大地を引っペがえす。
その大地を一歩一歩と踏みしめ進んでいくのはたった一体の兵だった。
彼らは格好の鼠と言わんばかりに、火を吹き、彼に襲い掛かる。
しかしその業火は一線の熱光線に弾かれてしまう。
彼は傷ひとつついていない。
蒼に光る鎧は火に照らされ美しく輝く。
彼らは怯むことなく出鱈目な攻撃を彼にぶつけていく。
空から無数のミサイルを落とし、マシンガン、バズーカ。
滅茶苦茶に掻き混ざる爆音が彼の半径500mの大地を根刮ぎ取る。
炎と黒煙が巻き上がり、彼の姿は見えない。
彼らはさすがにやったと、歓喜に声を上げていた。
しかしたった一人のなんの地位もない一般兵は彼を見つめていた。
奴はまだ生きている―――。
突如、燃え盛る炎が切り裂かれる。
ゴゴウと音を響かせ、歓喜を遮った。
彼らは恐る恐る彼を見つめた。
ランプのように赤く光る眼光が、黒煙に揺れていた。
彼らは身震いした。
あれは―――。
思考が途切れる。
彼の振りかざした右腕が熱光線を発し、我が隊に着弾した。
舞い上がるそれは生気を感じることなく崩れ落ちる。
血が、肉が飛び散り、その隊の二分の一が吹っ飛んでいた。
彼は鎧が打ち合うような音を鳴らしながら我々に近づいていく。
彼の姿が露にされていく。
4mはあろうの巨体。
縦に楕円の形をした頭。
蒼いボディ。
右腕の熱光線発泡弾が変形し、盾に獣のツメをつけたようなフォルムに変わる。
左腕には腕の位置に幾多の生あるものを切り裂いてきた刃が取り付けられている。
彼の目にあたるランプはひたすら赤く輝き、カメラの拡大するような音がウインウインと響く。
口と思われる位置にはシャッターが付いているが、開くことがあるのだろうか。
そしてそのおぞましい姿に似合わぬ、天使の羽根に似た頭の飾り。
いや、堕天使か。
彼は目の前に迫っていた。
無機質にウインウインと音を立て、認識する。
彼が我々の隊だったら―――。
そしてその眼光が光り輝いた。
「ミッション、カンリョウ」
無線もなく、彼は誰かに呟いた。
彼の名は『TKG-16』。
殺すためだけに作られた、最強最悪の兵器。
しかし彼の人生はこの終戦を機に一変していく。
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