ギャリーはパレットの失った七つの絵の具玉をかき集めていた。
毒ガスの中に死に物狂いに取りに行ったり、サーカス野郎に怒られたり。
薔薇を活けると元気になる不思議な水の入った花瓶を使うため問題はないが、命懸けなものは実に多い。
さらには変な気持ち悪い人形も追いかけてくるし。
アタシは『大人』だから展示物達がわざと苦しい目にあわせているのかもしれない。
・・・イヴがこんな目に合わない事を祈るわ。
しかし一番のイヴへの不安は先程本棚にあったゲルテナの本の『M』のページ・・・。
『アレ』は衝撃的過ぎた。
どこか怪しいとは思っていたけれど、やっぱり・・・。
アタシはイヴとメアリーに不安を抱きながら、残り二つの絵の具玉を探していた。
すると、鍵の掛かっていた部屋の扉の隣に、またあの気持ち悪い人形がいた。
青黒い肌、裂けた口を縫い止めるような閉じたツギハギの口、赤と黒の目、白の瞳、ぼさぼさの汚らしい長い髪の毛。
まさに気持ち悪いという言葉が似合う人形。
「なによ・・・またあんた?」
よく見ると人形の腹が膨れていた。
まさかとは思うが・・・。
「気持ち悪いけど・・・やるしかないわね」
ギャリーは震えた手で恐る恐る人形の腹を裂いた。
綿が少しぶちまけ、ビクッと肩を揺らしたが、腹の奥には赤の絵の具玉があった。
「あった!!」
赤の絵の具玉はギャリーの手に触れるとパレットの部屋に消えて戻っていった。
と、そのとき、腹を裂かれた人形がケケケッと笑う。
「っ!?」
びくついたギャリーは素早く後ずさりするが、人形はそんなギャリーを無視して部屋の鍵を開け、入って行った。
扉は、開け放してある。
「・・・嫌な予感しかしないけど、入るしかないわね・・・」
きっとこの部屋に最後の絵の具玉が残っている。
後、一つなのだ。
絵の具玉を集めてなにが起こるかは分からないが、集めなくてはいけないと思っていた。
知らずのうちにイヴのことを助けているのかもしれなかったから。
ギャリーは開け放された扉を少し開け、静かに入っていった。
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