「あっ……ちょ……止めて……」
「クク……お別れだな?」
パリン、と空しくボールが割られた。
クッパの体が煌めき『最後の切り札』を身に纏う。
ピカチュウは瞬いた。次の瞬間。
クッパは光に包まれ、無数の稲光と共に転身する。
「ゴガァァァァッ!」
いつも以上に邪気を纏い、さらに巨躯を手にした
『ギガクッパ』が産声を上げた。
凄まじい咆哮にピカチュウは意識を失いかけた。
しかし、これまで九死に一生の窮地をくぐり抜けた本能が
気絶を堪えてしまった。
ズシン、ズシン、と地面を、空間を脈動させ
ギガクッパがはピカチュウとの距離を確実に詰める。
しかし、ピカチュウはダメージとあまりの威圧感に縛られていた。
「そんなに恐ろしいか?」
弛緩したピカチュウの細首を摘まみ上げ、舐めるように見据える。
その闘気の失せた小さな瞳に一筋の涙がこぼれ落ちた。
「フン……」
「がぁ……」
地面に叩き付け、動きを封じる。
準備は整った。
両腕を上に投げ出し、重心を前にかける。
ピカチュウに残虐な笑みを見せつけて。
「!? あぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヘビープレス。
そのまま巨躯かつ超重量でピカチュウを押し潰しにかかる。
骨の砕けるなんとも鈍い、
ギガクッパ自身に取っては心地よい音を零しながら何かが悲痛の咆哮を上げた。
「ぁぁっぁっぁぁぁぁぁあぁぁ!」
それはピカチュウの断末魔に近かった。
ギガクッパの巨躯に押し潰され、くぐもった悲鳴が谺する。
「おっと、死んではつまらんぞ?」
ゆっくりと、それこそ亀がそうするように体を起こす。
含み笑いを零し、ピカチュウを見下す。
ピクピク、と小さく痙攣し、浅い呼吸を続けていた。
生きている事を確認できると
ギガクッパはさらに残虐な笑みを浮かべた。
荒々しく掴み上げ、目前に迫る。
掴まれ、全身が痛むのか小さく呻いている。
「お、そうだ」
その言葉がピカチュウにはやけに重く感じられた。
例えるならば、嵐の前の静けさ のような感じだった。
「お前を喰らってやろうか」
ピカチュウが悲鳴をあげるよりも、
拒否を伝えるよりも、速く。
目前にギガクッパの口内が展開されていた。
血のこびりついた無数の鋭牙は唾液でねっとりと糸を引き、
粘液に包まれた舌は忙しそうに蠢いている。
「やっ……」
血生臭い吐息を吹きかけられ、ピカチュウが苦しそうに喘いだ。
最早、瀕死で抵抗一つすら出来ない状態だ。
喰われればひとたまりも無い。
「存分に可愛がってやろうじゃないか」
唾液の飛沫が無数に宙に飛び散った。
バクリ……
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