ーここがふさふさー
ー毛並みは艶があって気持ちいいー
あいつのカルテが脳裏を駆け巡って離れない。
もうオレは決めた。
こいつはオレが飼う。飼い殺してやる。
いい声で泣くし、美味ぇしな。
交わる分にも問題ない。
だが、一つ腑に落ちない事が一つ。
あいつがいつも抱き絞めていたカルテ。
オレの情報のみを挟んだあのカルテ。
ー No.WT-2b437 CODENAME ”ソル” ー
オレの番号と、コードネーム。
その隣に書かれた小さな幼い文字。
ー好きー
赤で書かれた、たった二文字。
それだけが理解できなかった。
オレを……
極悪非道の残虐狼であるオレに好意を寄せているなどと
それだけが理解できなかった。
あの時は問いたださなかったが
その思いは確かなものだろう。
行動や面影で分かる。
あれほど、どう残虐に喰い殺そうか思案していたと言うのに
生きたまま胃袋に収めてしまった挙げ句
飼うなどと……
「寂しいから……か、ハッ」
オレは鼻を鳴らした。
自分の心理を他人に知られるとはな……
お前には完敗だ。 砂羽 白怜。
「オレの愛情表現は鬼畜だからな。最後まで付き合えよ?」
腰を降ろし、膨らんだ腹に甘く牙を立てる。
小さな涙を零して。
ー了ー
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