口腔に収められた月華が恐怖に塗り染められ、
抵抗の術を失っていた。
なすがままにガレイドの手中に堕ちていく。
「あっ……んぶぅ……」
舐め転がされる度に唾液が跳ね、絡められていく。
ぐちゃぐちゃ、と生暖かい唾液に漬けられてしまう。
「どうだ? 気持ちいいか?」
冗談じゃない
生暖かく、嫌らしく纏わりつく粘液は心地悪さしかなく。
それに対して、粘液を塗り付けてくる白の舌は
予想に反して柔らかく、心地よくもあった。
しかし、一刻も早くこの口腔から脱出しようとしていた。
このままでは喰われ、この狼の糧となってしまうことは明確だ。
「んん……美味い」
ガレイドは月華を舐めるのを止め、体に舌を巻き付け
やんわりと絞め上げる。
絞め上げると言っても大蛇のような程度ではない。
人間が心地よいと感じられる程である。
唾液は生暖かいが、口腔自体はほんのりと暖かく、
それこそ日光浴中と言っても過言ではなかった。
恐怖も本能も次第に快楽に綻びかけていた。
「はぁ……っん……」
勤務疲れもあり、月華は遂にガレイドに体を預けてしまう。
抵抗が無くなりやや重くなった獲物にガレイドは自然に笑みを零してしまう。
「呑んでしまおうか?」
「……うん」
心地よく、甘い悪魔の囁きに月華は頷いてしまった。
歓喜や快楽をより多く感じていたいと言うのは人間の性。
死≠ニいう恐怖はすでに快楽に書き換えられ
その快楽をより感じたい欲望に掴まれ
月華は後悔なく頷いていた。
舌の拘束が解かれ、頭を舌先に預け俯せの形で舌に寝かされ、
口腔内に傾斜が付く。
ガレイドが天を仰ぎ、月華を呑み込もうとする。
唾液を芯まで塗り込まれた月華の体に摩擦など存在せず
遠慮無しに体は喉に向かって滑り落ちていく。
数秒もかからず、足が一段と柔軟な喉肉に捕まった。
そして、ずるっと体も喉に呑み込まれてしまう。
「頂きます」
喉の奥に月華を滑りこませ……
……ごくん。
そのまま呑み込んでしまう。
月華は喉の膨らみと化し、喉を下る。
ただ、普通の生物と違い体の内側が半透明。
さらにこの鏡世は一面が鏡。
丸呑みにされた月華自身も鏡を通じて
その生々しい様を目にする事が出来た。
透明な粘液と共に月華は狭い肉道を嚥下されていた。
ずぶずぶと喉肉に埋もれながら、胃袋へと送られていく。
「うぅ……食べられてる……」
鏡に映るガレイドと月華。
今や、捕食者と獲物の立場。
この状況から脱出する術はない。
それこそガレイドの気が変わりでもしない限りは。
ずぶぶっ……どちゃっ……
食道を完全に下りきり、遂に肉の牢獄ー
胃袋へと落ち込む。
「ふふ……言わなくとも分かると思うが、そこは胃袋だ」
大きく膨らんだ腹部を見据え、滑稽そうな笑みを零し
軽い口調でそう零した。
月華からみれば、薄い膜で覆われた空間に収められたような状態に映った。
快楽で幾分か誤摩化された恐怖が再度芽生え、抵抗の意を示した。
どんな生物も他者の胃袋まで収められてしまっては流石に
恐怖を隠しきれはしないもの。
ぐにぐにと胃壁を変形させる程に抵抗を示した。
しかし、ガレイドは……
「ふふ、実に心地よいな」
その抵抗が心地よいようで、表情を綻ばせ腹部を擦っていた。
「そろそろ、溶かしてしまおうか」
と、胃袋が胃液を分泌し始めた。
白みがかかった高粘性の粘液が胃袋に満たされていく。
ガレイドの言葉……
それが胃液だと月華はすぐに悟った。
「嫌ぁぁぁっ!」
月華が今日一番の悲鳴と抵抗を見せた。
しかし、足先が胃液に触れた瞬間に声も、抵抗も一瞬で無駄に終わった。
「っ!
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